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アニメ雑記2021/2/18 を語る

2021-02-18 19:15:30 | ■アニメレビューとか
●サクラ大戦TV
dアニメストアで視聴。
元々サクラ大戦シリーズは好きで他のアニメ作品もよく見るんですが、
TVシリーズは原作のアニメ化で、
本編の幕間を見せていたOVAや劇場版とは違った趣がありました。


原作通りではなく、オリジナル展開のアニメ化ということで、
毛色が違うのが合わなくて毎回なかなか視聴しては挫折してを繰り返し、
ようやく最後まで見ることができました。

今作はゲームとの相違点が数多く、
一体何に注目したら良いかわかりませんでしたが、
一番の違和感は敵が強すぎる、そして花組が弱すぎる点でした。
ゲームはアニメ仕立てで全13話あるんですが、
序盤に倒す敵幹部が凄く強く、雑魚ですら1体倒すのに精一杯、
敵も原作とは違いデザイン的には近いのにどこか強そうに見える。
これはなぜなんだろうと。

今回最終回まで見て何となくそれがわかったような気がします。
アニメ版は「プレイヤーの不在」を強く意識していること、
そして「エヴァの呪縛」に縛られたアニメであったということなのかなと。

ここで言う「エヴァの呪縛」とは「なぜ私達は戦うのか」という、
戦いに関することに触れたラストだと感じたからです。
また本編でも意図して繰り返し問われる部分でもある。
何のために戦うのか?
それを掘り下げたのがこのTVシリーズであると。

「エヴァの呪縛」となぞらえたのはもう1つ理由があって、
それは原作ゲーム『サクラ大戦2』の中で、
綾波系キャラのレニ・ミルヒシュトラーセが主人公に問いかけるのが、
「なぜ戦うのか」という疑問であるからです。
この問も間違いなく「エヴァの呪縛」から生じた問いで、
その返答は『サクラ大戦』という作品の個性が出たものでしたが、
引っかかるのはその場面でかかる曲です。
そしてそれがTVシリーズ最終話で流れる曲でもあります。

ゲームで流れるBGM名「決戦・帝国華撃団」。
主題歌である「檄!帝国華撃団」をもじったタイトルで、
内容もより決戦の場面を意識したシリアスで激しい曲調になっています。
なぜこれが問題かと言うと、
この曲は『サクラ大戦』という物語の核となる曲だからです。
そしてこの曲が始めて流れるのが、
上記にある戦う理由への返答の際に流れる曲だからです。

「決戦・帝国華撃団」は『サクラ大戦2』で始めて流れる曲ですが、
使用される多くの場面は、主人公である大神を肯定する場面が多く、
シリーズを通じて大神が絶対のヒーローであることを確立するのに、
よりそれを強調するBGMだからです。
他にも「檄!帝国華撃団」を下地にした曲は自体が好転した時などに使われますが、
それとは別に特別なときにしか流れないのがこの曲の持つ特殊さです。
絶対正義帝国華撃団!
それが「決戦・帝国華撃団」のテーマだと思っています。

それに近似した曲がTVシリーズの最終話で流れます。
最初で最後です。
「檄!帝国華撃団」を下地にした曲も実はそれまで一切流れません。
熱血ロボットアニメ的な主題歌を流せば盛り上がる、
に近似したシーンは最終話のみということです。
ゲーム中ではバンバン流れる近似曲が、TVシリーズでは最終話のみ。
疑問に思わない方が無理です。
そしてそれが特別なときにしか流れない曲なら、なおさらです。

その疑問を原点に考えると、
原作ゲームで「決戦・帝国華撃団」が流れた場面と類似させているのではないか、と推測することができます。
この場合、「決戦・帝国華撃団」は主人公である大神のためでなく、
花組隊員を肯定するために流れていると思われます。
その意味合いは正に「戦う意味」を得たからです。
決定的な窮地の中で立ち上がる理由ができた。
それが大きな力へと、我々がよく知るゲーム中の彼女たちと繋がった、と。

ちなみにTVシリーズのサントラに収録されているタイトルは
「檄!帝国華撃団インスト 」となっていますが、
曲調は完全に「決戦」よりです。
このタイトルの付け方はちょっと気になりますね。

TVシリーズは「エヴァの呪縛」から「戦う意味」を見出す作品になりましたが、
そこになぜ「プレイヤー」の不在が関係するかと言うと、要は
『ゲームはプレイヤーがいるから最初からこちらも強く、敵は弱い』
と考えると全ての辻褄が合うと感じたからです。
そしてTVシリーズはゲームとは違い「プレイヤー」が存在しないからこそ、
彼女たちが「戦う意味」を見出す物語になり得たということです。

ゲームでは各隊員との信頼度、恋愛がステータスに大きく関係します。
しかし、今回は主人公で大神との恋愛要素は皆無。
それは大神にプレイヤーという魂が内包されていないから、という発想です。
一種のメタフィクションですね。

このメタ的なところも実に「エヴァの呪縛」っぽいですがとりあえず置いておいて、
彼女たちが弱々しいのは私達プレイヤーがいないためで、
そして彼女たち自身がプレイヤーの力を借りずに立ち上がる話、
という位置づけの話だと感じました。

あとTVシリーズの逆を行ったのが劇場版という感じがします。
あちらは大神不在で大ピンチに陥りますが、
大神の登場で全てが好転しだします。
実は「決戦・帝国華撃団」という曲は『サクラ大戦2』内で2曲あり、
最初の曲がTVシリーズへ、
2つ目の曲が劇場版のイメージに繋がっているように思います。
2つ目の「決戦」はゲーム内のアニメーションパートで流れるので、
ゲーム色の強い劇場版ではそちらかなという感はあるかな、と。
ちなみに劇場版の曲名は「反撃、そして・・・」になります。
ゲキテイのイントロから長くシーン用の曲調が続いて、
唐突に(というとおかしいけど)「決戦」に近いアレンジが流れるので、
唐突感が2曲目の「決戦」ぽいかなと。



憶測に憶測を重ねて書いていますが、
要はそれだけゲームを深く理解していないとこの発想は出てこないだろう、
ということが言いたかった。
恋愛対象としての大神の不在がどういったものをもたらすか、
という思考実験的なところもポイントですかね。
まあアイリスなんかは素の性格から変わってる感じもするし、
一部の敵キャラは全然デザインも違うけどっていう話でもありますが、
世界を歪めるだけの力がプレイヤーにはあるということで。

原作通りが持て囃される昨今ですが、
原作への理解の深さは何も原作通りだけにあるものではない、
ということを今回の視聴では感じられたのがグッときたという感じです。

『エヴァの呪縛』に縛られた90年代後半から00年代前半ですが、
作品一つ一つがエヴァの何に影響を受けたのかをしっかり検証するのも、
これからの楽しみのひとつなのかなと思わされるところでもありました。
あとBGMも十分作品の世界観を作ってるのに寄与しているのだから、
その重大性をもっと語るべき。
あの曲かっこいいとかでいいと思うんですよね。
かっこいい曲をもっとかっこいい!と素直に言いたいですね。


追記。
プレイヤーを意識してるっていうのはOPからしてそうでしたね。