原作では起き上がる部分が省略されていましたが、
今回はそこを埋めるところから始まっている。
原作の流れは追いつつも絵で見せる内容は原作のコマにあまり依存していないので、愛を中心に原作にどんどん足していくことで描かれる臨場感とギャグのギャップが強調されている感じはするかなと。
この愛が起き上がるところも普通のアニメだったらこうしないと感じたので、
その雰囲気に飲まれた視聴だったな。
遠近感の作る空気というか。
覗き見る相手の主観で描きつつも、
前景を置くことで覗き見に対しても距離感を作っていて、
覗き見相手を肯定するものではないという感じが、
スッキリした画面に怪しさが感じられたなと。
割と不思議な感覚だったかな。
パンフォーカスで全景を見せてるのが凄くクリアに見えるので、
後景をボカしたりする処理がちょこちょこある作品の中で、
こういうのをやると画面がやや異質に見えるのかな。
最初は握手をしたであろうファンの姿しか見えないけど、
カメラが寄っていくことで手前の仕切りから愛の姿が垣間見れるという、
主観の変化をbookなどを駆使して表現してるのが良かったですね。
ここでは奥はぼかされていて、
徐々に見えてくる愛はしっかりとその輪郭を覗かせる。
オタクの主観から愛へと迫る臨場感、緊張感があるのが良い。
引き出しを開けて転がるスプレー缶の処理や夕景、
平面的な画面がそれまでとはまた違った空気感で愛の心情に迫る。
上目遣いをしたさらさに対し、
回想の中の愛が横目を使うのは偶然なのかもしれないけど、
目の芝居というのを紐付けてる感じで惹きつけられる。
それが愛とさらさの違いを強調されているようで。
ここのさらさの横顔がまた非常にインパクトのある絵でグッときますよね。
さらさの中の愛の姿とは、
さらさにこのような表情をさせるほどに鮮烈だった、
というのが愛に対する思いを形作るようで。
そしてそれがさらさの魅力になっている。
さらさの魅力を愛が引き出しているという絵にグッとくるというか。
愛の主観。
先程のオタク君の主観とちょっと対のようなイメージなのかな。
徐々に見えてくるさらさの姿は心配とは程遠い。
そしてさらさの主観で見る愛は天地逆転。
この一連、さらさがポーズ決めるところとか原作と全く違う構図なんですが、
オタク君の主観でさらさを見るとこうなるという画面なんですよねたぶん。
さらさオタク愛の3人の主観が入り混じってるのが引っかかる点かなと。
この一連、カーテンを閉める、という動作で、
カーテンを押さえているというのを描いてるのが目を引きます。
カーテンを閉めるのに体を伸ばすとか乙女の豪快な部分を描きつつ、
カーテンを押さえた絵をさらさ側に残しているというの、
なかなか見ることのできない芝居でちょっとした凄みを感じたな。
愛の中のこうしたいが乖離していってるのを、
こういう部分で描かれていくのが新鮮で良いなというのと、
キャラクターの繊細さとは繊細な絵ではなく、
こうした芝居で表現できるというのをやられている気がして、
そういう意味でも目を引いたかな。
割と上で触れた美しいさらさとの対比できるポイントなのかもしれない。
部屋の中の愛から始まったので、
こういったカーテン越しや覗き見というのが今回のテーマだったのかな。
髪増量中のさらさもかわいい。
遠く見るような表情から海を眺める姿へ。
開かれた場というのが、
手狭な部屋の中やオタク君たちと話した道を思い出すと、
開放感もあり非常に新鮮に映りますね。
表情に落ちる影、揺れる髪。
ここは繊細な絵と言えるのかもしれない。
ただ逃避として海を眺める姿が傷つきながらもきれいに見えますね。
悪意は色んな方向から。
愛が座っているだけの姿を様々な角度で描かれますが、
それぞれの持つ空気感が違うのもまた引っかかる。
遠目でややぼやける愛の姿がスマホのカメラで写せばはっきりと見える。
そしてそこには表情に影を落とす愛の繊細さは映らない。
スマホのカメラの特性と見た目と、アニメ的な繊細さの違い、
そういう色んなものを見せるところが面白いポイントかもしれません。
輪郭線に反射する光が印象的ですね。
夕方になるまでいるのに影の落とし方が変わらない。
夕方になった分、愛の心情に沿うリアルな絵へと移り変わった気さえする。
時間の経過がアニメ的に強調した愛の絵をリアルへと呼び込んだ感じがして、
そういうアイディアが気になるかなと。
悪意は色んな方向から。
最初見ていた場所の反対側、愛の後ろから登場する男たち。
わざわざ移動して声をかけてくるところに、
有名人を見つけたという突発的な高揚感ではなく、
明確な悪意があることを示唆されている気がする。
俯瞰で見せるスカートの広がり方のやぼったい感じとか、
泣き顔の繊細さに惹かれるかな。
オタクアタックは過剰に。
背景がそれまでリアルよりだったので、
流背とか使うと一気にアニメっぽさが強調されるますね。
というかこのオタクが一番アニメっぽい。
今どきここまでわかりやすい記号でまとめたオタクが出るのも珍しい。
それだけはっきりとオタクとして描かないと、
オタクの苦しみが描けないのはちょっとつらい部分かもしれない。
さらさがニートとかキモオタとかナチュラルに言うのに爆笑していて言うのも何ですが。
原作の小さな1コマがここまでインパクトのある1カットへ。
原作だと小ネタ程度の絵がアニメだとやっぱインパクト大ですね。
というかかなり盛られてる感。
これもまた臨場感のある感じがするかな。
それぞれが違う場所に立つ人たちだという絵が、
本来の立ち位置を描かれているようでやや残酷かもしれない。
ただ人間、相手との距離とはこういうものかなという感はあったかな。
そういうバラバラな立ち位置だったキャラがこうして集まる。
愛の差し伸べた手のインパクト、
その重さがポップに描かれているようでもありますが、
その意味合いは大きい感。
愛の涙も、恐怖に歪んだ表情とは違い、
思うような行動が取れない自分にただ戸惑う、
心情とは別に体が反応してしまうことに悲しむ、
そういう乙女の綺麗な心を予感させる見せ方で、
愛の綺麗な部分を覗かせてくれるのがグッときます。
オタクを見送る愛。
表情に影は落ちてはいないけれども、
相手への感謝をうまく伝えられないその表情は曇ったまま。
愛が今後どういう表情を見せてくれるのか楽しみです。
見ていて良い回だったなぁと割と高揚感の高い話数でしたが、
いったいどなたの仕事なのかなかなか見えてこずちょっと悶々としてしまったな。
今作見ていて、自分は宝塚とか演劇をもっと見たい人間だということに気づいたので、
舞台を見に行きたいけどなかなか難易度が高いこともあって、
また色んな意味で悩ましい。