ばあやの のんび~り日記  

還暦をむかえてからパソコンの勉強を始めて
傘寿も越えてしまいました。
いつまでパソコンできるやら・・・

和菓子 「ういろう」に寄せて

2024年05月13日 | ばあやの本棚

 「今から名古屋方面への仕事で出張、車で行くから一緒に行こうか」
一度出かけた夫が引き返してきて、妻のS子に声をかけた。

「え? 」 何事かと思いながらも、せかせる夫に促されて
急いでエプロンをはずし、 幼い4人の子どもを実母に頼み、
S子は夫について車に乗った。


 S子は、成人式を迎えるとすぐに結婚。プロポーズの言葉に
「私は、お味噌汁と卵焼きしかつくれません・・・」
「それでもいいよ」といわれて、6歳年上のK義と結婚。

家族の心配をよそに新生活にはいり、
3男、1女の子供にめぐまれて、忙しい毎日を送っていた。

子育てで多忙な毎日。
夫の名古屋への急な仕事を兼ねての、夫婦2人だけの長距離ドライブ旅行は、新婚旅行以来初めての旅といっていいかも知れなかった。

預けてきた子供たちが気がかりながらも
ほんの数時間の、二人きりの楽しい旅であっただろう。

名古屋からのお土産には、 
名古屋の和菓子で知られている「ういろう」を買いもとめた


 それから数年後、4人の子供たちは無事に成長して、
次男、3男の結婚式を終えた。
孫2人に目をほそめ、3人目の孫の誕生予定日を1週間後に控えて

いた。

 「もう、私には時間がないのよ・・・」

S子は、あと1週間でむかえるはずの自分の誕生日も、3人目の孫の誕生も待たずに、壮絶なガン闘病の果てに
さみしく一人旅立っていった。 


享年56才で・・・

   
 これは私の2番目の妹、早世したS子を思い出しながら、
ういろうにまつわる話をまとめてみたものです。

 偶然にもこの数日前に、お抹茶があったので作ってみようと思い立ちました。
出来上がったういろうは、軽く冷やした後にいただきました。
もちもちして、甘さ控えめでとても美味しいものでありました。

ういろうを作ろうと思い立ったのは、
命日が近い亡き妹が引き合わせたのかもしれません。

死んだ子の年を数えるとか、妹が亡くなってから早や20年・・・

妹より9才も年上の私は、この夏が来れば85才に。
亡き妹の分まで、これからきっと長生きしていくのでしょう。

 

コメント (6)
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