古希もとうりすぎ、そろそろ身の回りのことも考えておかなければと、この頃しきりに思うようになってきた。
いま特に、心配をすることはなにもないのだが、ただ、なんとななく「年だなぁ~」と
思うことが多くなってきたようで・・・
ブログをはじめてやがて5年目をむかえようとしている。
エッセー原稿もだいぶんあつまったので
「自分史」 3集目を作成してみようと、いま構想を練っているところだ。
そこで今日は
第2集( H・14ごろ )の、自分史から一つを選んでアップしてみました。
ひまつぶしに読んでいただければ幸いです。
「草 枕」をたずねて ( H・14・2 )
「おい」と 声をかけたが返事がない・・・・
有名な、夏目漱石の
「草 枕」の一節である。
今年の元旦はそのゆかりの宿、玉名天水町の小天温泉「那古井館」で。
先に知人から進められ、ぜひ一度と思っていたが幸いに宿が取れて、
新年をむかえることになった。
清められた石畳を踏み、左に曲がると「那古井館」の玄関に立つ。
敷居をまたぐと上がり口に「◎●様、椿の間」と墨書きの名札が添えてあり、
宿主の気配りが伺える。
天井は低いが磨き抜かれた古い柱が太く目を引いた。
明治三十年、大晦日・・・
夏目漱石が、正月を静かに過ごそうと同僚二人で、小天温泉を訪れた。
この小旅行を素材にして書いたのが名作「草 枕」であると聞いた。
部屋に入ると、やはり天井も低いが、畳の部屋は妙に落ち着く。
床の間にいけた松竹梅に添えた、水仙の花。香りがすがすがしい。
「お湯は三十八度。浴用加熱のアルカリ温泉でございます。どうぞごゆっくり」
と女将の挨拶でむかえられた。
今日は、三十人程度の宿泊客と聞くが静かである。
二階から見下ろす広い庭は手入れがゆきとどいて、みどりが濃く清々しい。
古い歴史ある宿の風情が、ひときわ感じられる。
明治の文豪、漱石を偲びながら歳を越す・・・
カニの懐石料理が宿の自慢ときいた。