小泉純一郎さんが靖国神社に参拝した日、同じ自民党の加藤紘一さんの家が放火されました。この事件について、小泉さんがコメントを出したのは8月も終わりになってからで、「言論の自由を封殺するようなことは厳に慎まなければならない」と言い、それに対して小沢一郎さんは「郵政民営化に反対するのは悪いやつだ、靖国神社(参拝)で何が悪いんだという手法や考え方が、日本の社会に危険な結果をもたらす」と語りました。衆議院議長の河野洋平さんは、「政府は国内のテロにも毅然として対応してほしい」と言っています。それぞれにもっともらしい発言ですが、改めて読んでみると、どこか引っかかるものを感じます。
小泉さんの発言はとにかく遅すぎて話になりません。靖国参拝に賛成反対のいずれにもかかわらず暴力に対しては「断固として否定し、徹底的にこれを取り締まる」くらいの発言を、直ちに行なってほしかったと思います。言論の自由についての「あなたの言うことには一つも賛成できないが、あなたがそれをいう権利があることは、私は命をかけても守るつもりです」という言葉を持ち出すまでもなく、民主主義国家の首相なら、今回の放火事件を民主主義に対する挑戦だと受け止めるのが筋で、発言もそれに沿ったものにすべきではなかったでしょうか。総理大臣自らが断固とした姿勢を見せなかったら、まだまだ暴力は続きますよ。
一番驚いたのは、河野洋平さんの「国内のテロ」発言で、テロというとビンラディンとかイスラム原理主義とか、そういうイメージだったので、え、これもテロ?と、ちょっとびっくりしました。しかしよく考えれば、政治活動と暴力が結びついているわけですから、まさにテロそのものです。
小沢さんの発言は、ちょっと無理があります。たしかに小泉政治によって、もともと殺伐としていた日本がさらに殺伐としてきたのはたしかです。しかしそれを直ちにテロの原因と考えるのは論理的に無理です。むしろ小泉流に内外に敵を作って国民の目をそらせ、政権を維持していく姿勢をその後継者がとろうとしており、今後は国内の敵が作りがたいのでおもに国外に敵を想定していこうとしているところに、「危険な結果をもたらす」元凶があり、小沢さんは多分、そちらのほうを言いたかったようです。
安部さんはその発言を見る限り、強硬なタカ派です。そして愛国心を説く。ほとんど右翼と変わりません。加藤さんの放火事件の犯人も右翼で、小泉さんは聞かれるまでコメントしなかった。このあたりの姿勢がそのまま国の姿勢となってしまうと、国内のテロだけではなくて国外へ向けてのテロが実現してしまいそうです。去年の総選挙のときにすでにこのような方向性はわかっていました。にもかかわらず、小泉一派が大勝しました。それはとりもなおさず国民自身が強硬なテロ国家実現を望んだということなのでしょう。