ストーリーは、冷戦の真っ最中である1964年、米ソ中の軍人と工作員の暗躍を描いたもので、主人公は米軍人です。各国の思惑と、国内事情、異端分子とその資金源、作戦の目的の変遷とその成就、情報操作、二重スパイの活躍など、政治ドラマに欠かせない要素はすべて揃っています。
画像の作りこみは細かく、最初にプレイしたときは森の中の様子などがあまりにもリアルに描かれすぎているので、周囲が非常に見にくく、ゲームを諦めようかと思ったくらいでした。しかしもう一度メニューを見直してみると、持っているアイテムの中に、双眼鏡や生体探知機、赤外線眼鏡、動体探知機や集音マイクなど、見えない聞こえないを補うものがたくさんあって、それらを駆使することがゲームの楽しみの一つになっていることがわかりました。それからは俄然、面白くなりました。
操作性も慣れれば快適で、登場人物のそれぞれに小ネタのような発言があり、サイドストーリーもそれなりに作りこんであります。ゲームの進行とは無関係な人形撃ちだとか、食物をすべて集めるとか、一度も見つからないとか、そういったことがクリアしたときの特典や与えられる称号に影響したりして、何通りかの遊び方があり、飽きがこないゲームになっています。何よりも、バグがないのがいいと思います。アクションゲームは他に「天誅紅」や「トゥームレイダー」をやりますが、バグがあって、よろしくありません。
特に「トゥームレイダー」は、外国産のゲームだけあって、どうも日本人の感覚にあわない部分があります。具体的に言うと、あるステージがスタートしたときにすでに主人公が坂道を滑り降りていて、降りた先がどうなっているのか確かめる間もなく、そのまま落ちて死んでしまったりします。実は坂の途中でジャンプしなければならないのですが、最初はわかりませんよね。だからセーブしたところからまたロードしなおすことになります。ゲームオーバーありきの、こういった作り方にはちょっと疑問を感じます。
しかし、以前やったことのある「トゥームレイダー2」では、ひとつのエリア内ではどこに行ってもloadingの画面になることなく、自由度が高いといいますか、わりと快適にゲームができた記憶がありました。製作者は「バイオハザード」がドアを開けるたびにロードしなおすのを非難していまして、「トゥームレイダー2」の空間移動の自由度とスムーズさを強調していましたが、その考え方はよろしいと思います。まだプレイステーション1の頃で、DVDでなくてCDの時代でしたから、たいした開発技術だなと感心しました。これが「トゥームレイダー6華麗なる逃亡者」になるとプレイステーション2のソフトでしかもDVDで、マシンスペック、ディスク容量共に飛躍的に向上しているわけですから、かなり期待して買いました。ところが、いざやってみると、たしかに画面の作りこみは丁寧になりましたが、いいところはそれだけでした。ある場面がスタートして、周囲を調べる暇もなく数秒後には転落してゲームオーバーになってしまうのは相変わらずだし、予期せぬところでロードしなおす画面になるしで、しかもロードにかなりの時間がかかるのでストレスを感じます。かといってそれを補うほど遠近感のある絵作りにもなっていませんしね。バグもかなりあります。「バイオハザード」が新作のたびに進化していったのに比べて、「トゥームレイダー」はあまり進歩していないというか、操作性や視点関係については逆に悪くなった気がします。警官と墓泥棒の違いよりもずっと差が開きました。
さて、MGS3では個人的に感心した部分がいくつかあります。
アクティブソナーは、映画「Uボート」や小説「レッドオクトーバーを追え」にも出てきましたが、おもに潜水艦が敵船の位置を確認するのに使っていました。漁船では魚群探知機として使われています。探信音と呼ばれる音を発生して(たしか「レッドオクトーバー」では「打つ」という言い方をしていました)、戻ってくる音を分析して位置を特定するものですね。それを陸上で歩兵が使うという発想が面白いし、探信音が敵に聞かれて警戒されるのも潜水艦の場合と同じで、よく調べられています。
ほかのゲームでは体力ゲージはHP(ヒットポイント)と呼ばれて、これがゼロになると相手は死ぬか無力になり、自分だとゲームオーバーになりますが、MGS3では体力ゲージと呼ばずにLIFEゲージと呼び、そのほかにスタミナゲージという考え方が導入されています。まあ、体力とスタミナはどう違うのか、という議論はさておき、スタミナキルという戦法があるのが面白い。これはおもに閃光手榴弾や麻酔弾などを使用することで相手のスタミナをゼロにすると、相手が戦闘不能になるというものです。メタルギアソリッドシリーズはなるべく敵を殺さずに目的を達するゲームで、ボス以外の敵は見つからなければ戦闘にならないし、殺すこともありません。ボス戦は必ず戦闘になるので、そこでもなお殺さずに済ませることができる方法としてスタミナキルの考え方が導入されたんですね。納得できるアイデアです。
食料庫や武器庫などがあり、食料庫を爆破しておくと敵の体力が、武器庫を爆破しておくと敵の戦闘力が、それぞれ落ちるのも面白いところです。食料庫を破壊したエリアの敵は、体当たりされただけで気絶するという弱りようで、なんとも傑作でした。隠れていると、「ひもじい・・・腹減った・・・ずいぶん食ってない」といったひとり言が聞こえます。
食料といえば、「スネークイーター」という副題の通り、ジャングルや森の中で見つけた動植物を食べてスタミナを回復します。うまかったりまずかったり、いろいろですが、ほとんどが荒唐無稽な動植物で、シベリアにニシキヘビやアナコンダがいたり、ツチノコがいたりして、小島監督らしい洒落っ気がちりばめられています。食べると電池が回復するキノコ、なんてのもあったりします。採取したときに通信すると、その動植物について詳しく説明してくれるのも、考証好きな小島さんらしいところです。
通信については、手が塞がっていなければどんな状況でも連絡ができて、ボス戦の最中に通信すると、相手の弱点やら主要な攻撃方法、有効な反撃方法などを解説してくれますし、武器を装備しているとその武器についての詳細な情報を提供してくれます。武器や兵器についてはトムクランシーの小説とMGS3のおかげでかなり詳しくなりました。
武器も現地調達ですが、ストーリーが進むとそれはもう、使いきれないほどたくさんの武器が手に入ります。それぞれの特徴を武器専門家に通信で聞いて、自分に合ったものを選べるのもいいと思います。アメリカの突撃銃とソ連製の突撃銃では、ソ連製がかなり優れているのに驚きました。ただ、連射すると反動が大きくて最後はどこを撃っているのかわからなくなります。それもおそらく実物の特徴に基づいているのだと思います。
メタルギアソリッドシリーズをやったことのない人にとってはかなり難易度の高いゲームですが、操作とアイテムの使い方に少し慣れれば、快適に進められてしかも頭を使うように出来ています。ストレス解消にもなりますし、頭の体操にもよろしい。こうなるとどうしても、小島さんの次回作を期待してしまいますね。