三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

頑張れ「後藤田くん」

2006年09月18日 | 政治・社会・会社

 ずいぶん前の話になりますが、女優の水野真紀さんがデビュー作の映画に出たとき、その撮影場所にいたことがあります。彼女が主演女優で、たしかそのとき19歳でした。現場にはその前に共演の山本陽一さんという若い男優さんが来ていて、まだ撮影の準備もできていないのに、軽くステップを踏むような踊りを鼻歌と共に踊っているのを見たときは、申し訳ないんですけど「コイツ、大丈夫なのかな?」と思ってしまいました。そこに水野真紀さんがふわっとした感じで現れたときは、見たこともないほどかわいい娘で、逆にますます共演の山本陽一さんが心配になりました。映画自体は多分あまりヒットしなかったと思いますが、このときの水野真紀さんには「近づきがたいオーラ」がありました。その後の水野真紀さんは無理にお嬢様キャラを作ろうとして失敗し、タレントとしてもちょっと低迷した時期がありました。それからは得意の料理を生かしてあまり無理をしない自然体のキャラクターに変えたみたいで、そうすると好感度も上がり、それなりのポジションを獲得したようでした。初代の「きれいなおねえさん」でもありましたしね。まあその頃になると、デビューの頃に感じた「近づきがたいオーラ」のようなものはなくなり、庶民レベルにまで降りてきたと言いますか、隣のお姉さんくらいに近しく感じられるようになって、それが好感度につながったんだろうなと思いました。ところがその後国会議員と結婚することになって、ああ、やっぱりお嬢さんだったのかな、と改めて見直しちゃいましたね、いい意味でも悪い意味でもありませんけどね。

 ということで、よくも悪くも注目された「後藤田くん」ですが、一週間くらい前に、金融政務官を辞任しました。例のよからぬ噂の立っている貸金業規制法(通称サラ金規制法)の改正をめぐっての話です。この法律の問題は、わりとわかりやすい構造問題でして、テレビでもっと取り上げれば世論が一定の方向に向かうんじゃないかなと思っていました。しかしまったく無視に近いくらいどこの局も取り上げないし、政務官が辞任するほどこじれているのに、辞任の話もほとんど扱われません。実はそれも含めて、構造問題なんですね。わかりやすく並べると、次のようになります。

 

出資法と利息制限法の利息の上限が異なっている。ダブルスタンダードである。

サラ金業者はこのうち利息上限の高い出資法を拠りどころとしている。

それはおかしいという議論は以前からあった。

しかしうやむやのままだった。

貸金業規制法はいわゆるヤミ金融を取り締まるために成立した。

しかしすでに支払ってしまった返済は、たとえそれが利息制限法を超えていても返済として有効、つまり返還を請求できないものとした。これは最高裁の判例に反している。

小泉政権によって格差が拡大し、サラ金の利用が増加した。

小泉政権下ではセーフティネットが外され、貧乏な人はどこまでも貧乏になった。

地方自治体の役人も腐敗していて、生活保護の申請を受け付けもしない。

その結果、サラ金ヤミ金の利用がさらに増加した。

小泉政権によって市場の自由化がはじまり、アメリカのハゲタカ資本が一部のサラ金を傘下に収めた。

テレビコマーシャル等によって簡単にサラ金に手を出す人がますます増えた。

テレビコマーシャルをやってもらっている以上、テレビはサラ金の事件をあまり報道しない。

テレビコマーシャルはサラ金を消費者金融として好印象を狙うものだった。

大体電通が作っている。しかもうまく作っている。

その結果、コマーシャルの印象に騙されて若者たちもサラ金を利用するようになった。

コマーシャルだとずいぶんやさしい企業みたいだ。

しかし実態は違法な取立てがまかり通っている。脅し暴力なんでもありである。

暴力団もオウムも軍隊も顔負けである。

給料は上がらないし、返済は大変である。

死んでお返しします、というのが現実になっている。

生命保険会社は金融業危機を迎え、なりふり構わず利益を追求した。

だからサラ金とも手を結び、借金を命で返す契約も平気で行なった。

その保険金目的のサラ金による自殺の強要なども日常的に行われている。

つまり「死んでお返し」している。

サラ金は死体の山の上に城を築いている。

違法な取立てがバレたり、サラ金事務所の爆破事件などもあって、マスコミもサラ金問題を取り上げざるを得ないこともあった。

政治家もサラ金問題を取り上げざるを得なくなった。

そこで貸金業規制法を改正することにした。

ヤミ金もサラ金もこの法律で取り締まることが可能だ。

しかし相変わらずコマーシャルを流しているのでテレビはあまり報道しない。

テレビ局はスポンサーと電通にはあまり逆らえない。

電通はサラ金の味方である。お金をくれるところなら何でもいいのである。

金融庁はダブルスタンダードをやめて利息の低いほうに一本化しようとした。

後藤田正純金融政務官も低いほうの利息に一本化して、サラ金利用者の負担を軽減しようとした。

それだと儲からなくなるので、サラ金団体は政治家に圧力をかけた。

アメリカのハゲタカ資本も儲からなくなるので政治家に圧力をかけた。

保岡興治という政治家が、例外的に高金利を残す主張をした。

アメリカのハゲタカ資本は改正阻止のためアメリカ政府に圧力をかけた。

アメリカのハゲタカ資本に圧力をかけられたアメリカ政府はやはり金融庁に圧力をかけた。

アメリカのハゲタカ資本は金融庁に直接圧力をかけた。

金融庁は腰砕けになり、9年も据え置き期間をおこうとした。

保岡興治は相変わらず高金利をそのままにしろと主張している。

後藤田正純金融政務官は、怒り心頭で辞任することにした。

相変わらずコマーシャルを流してもらっているのでテレビは報道しない。

相変わらず電通はサラ金のコマーシャルを作っている。

 と、そういうことのようです。保岡興治という政治家は今年で67歳かな、八方美人の内股膏薬の典型みたいな政治家さんで、安部晋三さんと同様に統一教会と深い縁があるそうです。要するにサラ金で借りたお金で壷を買いなさいと、多分そういう政治家だと思います。

 水野真紀さんの旦那さんがどれほどの政治家かについては、会ったことも話したことも調べたこともないのでよくわかりませんが、怒り心頭で辞任するしかなかったということは、金融庁も与謝野馨も、保岡興治や安部晋三に負けず劣らず、みんな腐っているということでしょう。
「後藤田くん」はこの問題に関しては、このまま主張を貫く努力をしてほしい。魑魅魍魎と物の怪の跋扈する永田町なんていうお化け屋敷にいれば、それはそれは怖い思いもするでしょう。いろんな圧力もかかるだろうし、脅しすかしに鞭に飴、何でもありでしょう。問題は「後藤田くん」がそういったことすべてを跳ね返して、貧しい人、弱い人のために頑張る政治家を貫けるかどうかです。もし、このままあと20年頑張ることができれば、そしていまの「後藤田くん」の主張を曲げない成果を出せれば、そのときは「後藤田総理大臣」が誕生するでしょうし、私ももしそのときまで生きていれば、それを歓迎するかもしれません。

頑張れ、「後藤田くん」。