オーストラリアのSF映画である。邦題の「インベイド」は原題の「Occupation: Rainfall」のOccupationを侵略と翻訳して、侵略するという動詞のinvadeを当てはめたのだと思う。既に2018年に「Occupation」という原題で製作されていて日本でも「オキュペーション 侵略」という邦題で公開されているから、紛らわしさを少しでもやわらげようとしたのかもしれない。しかし監督もキャストも設定も同じだから続編扱いでよかったのではないか。当方なら「オキュペーションⅡ レインフォール」というタイトルにする。多分そのほうがわかりやすいと思う。
チクシュルーブは6600万年ほど前、つまり白亜紀に地球に衝突した直径10キロほどの天体のことで、地球に大惨事を巻き起こして恐竜を始めとする生物の大半を死滅させた。衝突した場所はメキシコあたりとされていて、オーストラリアとはかなり離れている。もしかするとチクシュルーブはもうひとつあったのか。
太陽が天の川銀河の中心を一周する期間は2億年である。天の川銀河の大きさは厚さ3万光年で直径10万光年の円盤状とされている。異星人がどんなに長生きでも、コールドスリープを使っても、天の川銀河の外から来た可能性はとても低いというか、地球に来れる可能性はほぼゼロである。それでも来たとすれば、その技術力は人類には考えも及ばないほど高度なものである。
映画は戦闘シーンが中心だが、その多くが映像が暗すぎる上に、大勢が入り乱れるから何が何だか分からないまま終わる。この点が最も不満だ。
オーストラリアの田舎に突如として大型の宇宙船が出現して住民を皆殺しにして、近くにいた軍隊の一部が反撃を始めたらしいのだが、なんとそれから2年が経過したのが本作品だ。軍隊の責任者の階級は中佐である。中佐が指揮するのは大隊クラスだから、兵員の数は500人程度と思われる。どうにもショボい。
諸外国が何の反応もしないはずがないのだが、多分世界中に同じような反重力で浮いている宇宙船が出現して攻撃を始めたので他国に構っている余裕がなかったのか。初動攻撃で何十億人も死んだという情報を得て以降は通信が絶たれたのかもしれない。しかしそれにしては戦闘機のパイロットとは通信ができる。
本作品では侵略に反対して地球人の側に回った異星人がいる設定だが、故郷の星を失って地球に侵略に来た仲間は一蓮托生の運命のはずで、造反者が出る可能性は極端に低い。むしろナショナリズムの高揚の中で、宇宙を旅してきた高度な技術力であっという間に人類を制圧するはずだ。
戦力が圧倒的に不利な状況で新型の生物兵器が生産されれば、その使用を躊躇う軍人はいない。敵を殲滅するのであれば早く使わないと損だ。戦闘が続いている状況では、早ければ早いほど味方の被害が防げる。戦争に人道主義はそぐわない。
不明な点が満載すぎる上に、登場人物にこれといった魅力のある人物がおらず、何の感情移入もないまま、茫然と映像を観ていたというのが正直なところだ。はっきり言って、どうでもいい作品である。 エンドロールにRAINFALL CHAPTER1と出て腰を抜かしそうになった。CHAPTER2を観たい人は極端に少ないと思う。