三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「この子は邪悪」

2022年09月02日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「この子は邪悪」を観た。
映画『この子は邪悪』公式サイト - Happinet Phantom Studios

映画『この子は邪悪』公式サイト - Happinet Phantom Studios

『この子は邪悪』 大ヒット上映中! 南沙良 / 大西流星 桜井ユキ / 渡辺さくら 桜木梨奈 稲川実代子 二ノ宮隆太郎 / 玉木宏 監督・脚本:片岡翔 配給・宣伝:ハピネッ...

映画『この子は邪悪』公式サイト - Happinet Phantom Studios

 

 玉木宏の怪演が空恐ろしい。身体はゴツいのに話し方が至極穏やかというアンバランスに、底知れぬ薄気味悪さが漂う。いま世間で騒がれている旧統一教会と、洗脳みたいな面で共通していて、教祖的な雰囲気も醸し出している。
 本作品に出てくるのは娘の花が考えた洗脳ではなく、玉木宏の演じるセラピスト窪司郎がどうやら独自に開発した魂療法?のようなものである。ホラー映画はどんな想定も可能だ。古い井戸から出てきた貞子がそのままテレビの画面から出てくるのもありで、もしかしたらこんなことが起こり得るかもと想像できるが故の恐ろしさである。

 しかし本作品の魂療法?は想像ができない。それは窪司郎が一般人のひとりとして描かれているせいだ。魂療法?の想定を可能にするためには、窪司郎は異常な人間で、悪魔か超能力者でなければならない。本作品で設定されている怪しげな会の会長なら社会的な設定はそれで十分だ。しかしそうなると家族の幸せを取り戻したいだけの単純な父親とは相容れなくなる。
 そこで会長とは別の一般人として花の父親を設定して、ただ家族を取り戻したいだけの父親が会長に魂療法?を依頼するという形なら、ホラー映画としても成立したと思う。会長は暴走して、愉快犯のように無作為に療法を施していくジョーカーのような存在になる。そして、次はあなたの番ですという展開なら、かなり怖かったと思う。
 
 さすがに玉木宏が単純な父親と悪魔会長の両方をひとりで演じるのは無理があった。類まれな演技力で強引に物語にしてしまったが、ホラー映画としての怖さの大半が損なわれている。
 精神に異常をきたした男がアパートのベランダの柵を前歯で噛んだりして、それなりの伏線は用意されているのだが、どうにも印象が薄くて、そういえばそうだったなという冷めた感想になる。うさぎ目線の長ったらしい意味不明なシーンでもあれば、心に引っかかりもしたと思う。