三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「REVOLUTION+1」

2023年01月01日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「REVOLUTION+1」を観た。
REVOLUTION+1 : 作品情報 - 映画.com

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REVOLUTION+1の作品情報。上映スケジュール、映画レビュー、予告動画。「赤軍派 PFLP 世界戦争宣言」「略称連続射殺魔」などの監督作で知られ、元日本赤軍メンバーという経...

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 いま観ておかないと一生観られないかもしれないという危機感から、隣県の未訪の映画館に行って鑑賞してきた。大晦日の午後だが、4割くらいの客入りである。ガラガラを予想していたから少し意外だった。それなりに関心を集めている作品なのだ。
 日本赤軍の元メンバーが監督だけあって、言葉に頼りがちというか、主人公山上徹也の理論武装みたいな独白が主体である。そのため、やや頭でっかちな印象の作品になってしまったことは否めない。
 しかし幼い頃から人権を蹂躙されてきた怒りが、山上の心の中で決して消えることなく燃え続けていることは伝わってきた。アベシンゾーを射殺するには十分な動機である。
 自意識が目覚めると同時に、自分の家の異常さに気がついたのだろう。家庭を崩壊させても、少しも自分を省みない狂信者の母親と、それを止められずに自殺してしまった弱い父親。身体も心も病んで自殺した兄。これで統一協会を恨まないほうがおかしいくらいだ。
 
 テロでは世界は変わらないとよく言われる。確かにアベシンゾーを殺しても何も変わらなかった。それは一人二人を殺すからかもしれない。例えば国会議員の全員を殺したらどうだろうか。永田町で段階兵器(水素爆弾など)を爆発させたらどうなるか。その場合は確実に世界は変わるだろう。しかし望んだ方向に変わるとは限らない。むしろ暴力に対してさらなる暴力で応じようとする傾向が強くなるに違いない。
 
 アベシンゾーが射殺されたあとの参院選の結果は、自民党や公明党が勝った。対抗勢力の日本共産党やれいわ新選組は票を伸ばすことができなかった。テロで世界が変わらない理由は、参院選で与党勢力が勝った理由と同じだ。つまり国民が平和や平等や自由を望んでいないのである。
 自分だけが得をする世界が続いてほしいのだ。いまは貧しい人も、みんなが金持ちになるのではなく、限られた人間だけが金持ちになって、自分がそのひとりになりたいのだ。逆に言えば、人権を蹂躙される人がたくさんいても、自分さえ人権を謳歌できればそれでいいのだ。
 自分を国に置き換えても同じである。日本だけ豊かになればいい。貧しい国は放っておいて構わない。だって、貧しい国がなければ、自分たちが豊かになったことがわからないだろう。世の中の全員がベンツに乗っていたら、ベンツを自慢できなくなるだろうと言っているのと同じだ。日本の有権者の過半数は、優しさも寛容さも人権意識も何もない。だから格差や差別を助長する自民党や公明党や維新が勝つ。
 
 テロでは世界は変わらない。しかしそれ以外の方法でも、世界は変わらない。戦争をして、痛い目に遭って、反省して、平和を願う。何十年かは平和が続くかもしれないが、戦争を忘れた世代が、またぞろ格差と差別を求めて戦争を始めるのだ。それが人類の歴史である。人類は救いようがないのだ。
 しかしせめて、自分とその周囲の人々だけには、優しさと寛容さを維持してもらいたい。人から優しくされた感謝の気持だけが、優しさを生むことができる。戦後民主主義を護ってきた日本国憲法の精神を維持するためには、結局のところ、ひとりひとりが他人に優しくするしかないのかもしれない。それは途方もなく長い道のりであり、数千年ではかなわないかもしれない。
 
 あと数分で2023年である。毎年年末に徹子の部屋のゲストになるタモリさんが、来年は新しい戦前になるだろうと予言した。その予言はおそらく実現するだろう。めげずに寛容な心を持ち続けるより他に、残された生き方はないだろう。