映画「金の国 水の国」を観た。
ほのぼのとしたアニメ作品かと思いきや、なんと戦争か平和かという究極のテーマの物語が展開されていて、驚いてしまった。日本を含めた世界がきな臭くなっているこの時期に、本作品が公開されたことには、映画人の危機感が現われていると思う。
日本のマスコミが岸田政権の軍拡を既定路線としてしまったために、論点が増税の是非にずらされ、肝心の軍拡の是非の議論が置いてきぼりにされている。このままだとタモリがいみじくも言ったように「新しい戦前」が始まってしまうのではないか、いや、すでに始まっているのではないか、そういう危機感だ。
役者兼左大臣の若い男が「民のくらしに力を注ぐべきときに兵力増強とは、戦争でも始めるつもりですか?」という意味の質問を右大臣に投げかける。これはすべてのマスコミが岸田文雄に問いかけなければならない質問と同じである。ちゃんとした答えを得るまで、何度も何度も質問しなければならない筈だが、マスコミは増税の質問しかしない。
本作品は、大本営発表と化したマスコミに代わって、現政権に対して「戦争するつもりか?」と質問を投げかけているのだ。軍拡は即ち、戦争をするつもりがあるということだ。戦争をするつもりがなければ軍拡の必要はない。国民のくらしに力を注ぐのが第一である。国民から預かった大事な税金を、勝手に兵器の購入に使うのは言語道断の話だが、軍拡が戦争に直結することを理解していない国民があまりにも多い。
金の国に水が不足しているのは、ある意味で象徴的である。日本は食料自給率が極めて低い。食料の輸入ができなくなったら、戦争どころではない。軍事の安全保障よりも、食料の安全保障のほうがよほど急がれる懸案だ。岸田政権は明らかに何も理解していない。
純情な恋物語と国家間のいがみ合いを一緒に描くのは、映画では割とありがちではあるが、全体とディテールが同時に表現できるから、有効な手法だ。本作品も成功している。それぞれの国の為政者の人となりまで、多少好意的すぎるところはあるが、ちゃんと描かれている。よくできた作品だと思う。