映画「大名倒産」を観た。
前田哲監督の映画を観るのは「ロスト・ケア」「水は海に向かって流れる」に続いて、今年3本目だ。その前が2021年の「そして、バトンは渡された」だから、去年と今年で3本の映画を撮影したのだろう。今年になって集中的に編集作業をしたという訳だ。作業興奮で熱に浮かされていたような状態だったのではないか。間違いなく幸せな時間だったに違いない。
原作は「壬生義士伝」「鉄道員(ぽっぽや)」の浅田次郎で、時代は幕末。新しい時代が来ようとしているのに十年一日で変わらない幕府と、新しい藩主を対比させることで生じるアンバランス。それがバランスを保とうとするところに物語が生まれる。原作に力があるから、俳優陣の演技と演出に間違いがなければ、おのずから傑作ができる。
本作品はコメディだから、監督の演出にも俳優の演技にも余裕が感じられる。だから安心して観ていられる。心置きなく笑える。俳優陣も楽しんでいたと思う。エンドクレジットはとても楽しい。このところ観た映画の中で一番のエンドロールだった。最後の最後まで楽しませてくれる優れたエンタテインメントだ。