映画「沈黙の艦隊」を観た。
正直に言って、あまり面白くなかった。登場人物の誰にも感情移入できなかったところが一番の原因だと思う。主役の海江田艦長は鉄面皮で何を考えてるのか、よくわからない。そういう人物描写がしたかったのは分かる。しかし8年間の連載マンガでは読者がついてきても、短時間の映画では主役の人間的な魅力が伝わらないと、ドキドキもハラハラもワクワクもせず、ダレてくる。それでは他の登場人物が魅力的かというと、総理大臣は保身第一で影の大物にヘコヘコするだけだし、その影のフィクサーは思想が単純で子供みたいなことしか言わない。影のフィクサーなら、もっと複雑な人物像でないと、人間的な凄みが感じられない。その他の政治家は責任感も悲壮感も気迫もなく、逼迫した状況が伝わってこなかった。
世界観も割と単純で、核兵器によるパワーバランスの危うさのみに焦点を当てているだけだ。その世界観では、今般のウクライナ戦争やイスラエルハマス戦争の複雑さを説明できない気がする。自爆テロさえ辞さない精神性に対して、核兵器のブラフが通用するかどうかは疑わしいのだ。
続編ありきで製作したのが分かる終わり方だが、登場人物が魅力に乏しい分、続編に対する期待も乏しい。