映画「ロスト・フライト」を観た。
ジェラルド・バトラーは、ベテラン俳優ならではの安心感がある。クリント・イーストウッドをはじめ、ハリウッドの大物俳優には、どんな作品でもそれなりに見応えのあるものにする俳優力というか、人間力みたいなものが備わっている気がする。
本作品は設定もプロットも荒唐無稽だが、ジェラルド・バトラーの存在感と、演じたキャプテンの責任感の大きさが、物語にリアリティを与えている。大したものだ。
弱小のLCC飛行機とその本部という2拠点でストーリーが進むところは、よく考えられていると思う。戦争で言えば、前線とHQ(ヘッドクォーター=本部)であり、前線の状況によっては兵站や増員を工夫する。ポイントは通信だ。状況が分かれば対処もできる。
初対面の副操縦士、面識のあるベテランのパーサー、新人のCA、それに移送中の犯罪者という役の配置が、物語を進める上で重要になっている。そして本部にいる危機管理の専門家と、彼が契約している部隊。役者は揃った。あとは脱出あるのみだ。終盤に向けて、ワクワクする展開が待っている。
緊急事態に蛮勇を発揮した機長は、傭兵部隊からも感服したと褒められるが、本人には心残りがあったようだ。キャプテンとして、すべての乗客、乗員をひとり残らず守らなければならなかったのに、守れなかった乗客と乗員がいる。それが悔やまれてならない。ひっそりと男泣きするシーンに、思わずグッときた。いい作品だ。