作詞:谷川俊太郎
作曲:武満徹
死んだ男の残したものは
ひとりの妻とひとりの子ども
他には何も残さなかった
墓石ひとつ残さなかった
死んだ女の残したものは
しおれた花とひとりの子ども
他には何も残さなかった
着もの一枚残さなかった
死んだ子どもの残したものは
ねじれた脚と乾いた涙
他には何も残さなかった
思い出ひとつ残さなかった
死んだ兵士の残したものは
こわれた銃とゆがんだ地球
他には何も残せなかった
平和ひとつ残せなかった
死んだかれらの残したものは
生きてるわたし生きてるあなた
他には誰も残っていない
他には誰も残っていない
死んだ歴史の残したものは
輝く今日とまた来るあした
他には何も残っていない
他には何も残っていない
ベトナム戦争に対する反戦の歌だが、毎年8月6日になると必ずこの歌を思い出す。言葉遊びの洒脱な詩が多い谷川俊太郎だが、この詩は戦争と正面から向き合って書かれたように思える。武満徹のメロディは重厚で余韻が残る。それは戦争の余韻だろうか。忘れずに歌い継がれるべき歌のひとつである。