今回紹介するのは、トロールで漁獲された中では大型の魚であるオオワニザメOdontaspis ferox (Risso)です。
トロール船では季節によっては大型のサメも網に入ります。それらはクロトガリザメやドタブカなど、所謂「メジロザメ」の仲間で、餌を追いかけて表層から海底を行き来するものです。
しかし、このオオワニザメはこれらのサメとは分類階級の「目」のレベルから異なる種で(メジロザメはメジロザメ目、本種はネズミザメ目)生態も異なります。このオオワニザメは、普通、海底に生息しているようです。
オオワニザメはオオワニザメ科に含まれています。オオワニザメ科は世界で2属4種が知られ、日本には2属2種が知られています。大きく鋭い歯がありますが、それらは細長くて若干曲がっています。これは同じ科のシロワニにも見られる形状です。
オオワニザメを含むネズミザメ目の魚には凶暴であるが希少な「ホホジロザメ」や外洋性のしなやかなハンター「アオザメ」などを含みますが、本種は深海性のサメであるため、あまり人間に出会う機会がなく、危険性は大きくないと思われています。
本種はわが国でもこれまで報告されていますが、その大きさゆえ(最大で4m以上:Fishbaseによる)標本にし難いのか、標本に基く報告は少なく、わが国における本種の正確な分布はわかっていないようです。