本当のインテリというのは、坑道に入るときに、籠に入れて一緒に連れて行くカナリアではないか。カナリアは有毒ガスが発生すればいち早く反応するからだ。今からもう何年前になるだろう。野坂昭如が喜多方市で講演したおりに、自分をカナリアに譬えていた。有毒ガスを吸ったカナリアは真っ先に死んでしまうから、それを見て人々は逃げ出すのである。昭和39年3月の東京大学の卒業式で、大河内一男総長は「太った豚よりも痩せたソクラテスになれ」と訓示した。しかし、それはかけ声倒れに終わったようだ。今の日本のインテリには、痩せるほどのデリカシーがないからだ。福島第一原発の事故でも、国民がパニックになるからというので、「大丈夫」を連発したのは、電力会社に連なるインテリたちであった。その世界では多数派である。これに対して、有毒ガスが発生したと騒いだのは、インテリのなかのほんの一握りであった。私たちはどちらを信用したらよいのだろう。日本の法律では、1時間あたり0・6マイクロシーベルト以上は放射線管理区域で、本来ならば、人が住むべき場所ではない。そこから物を持ち出すことも禁止されている。国や多数派のインテリは、突発的な事態だからというのを理由にして、福島県東部の人々を現在も放置している。一年以上そうした状態が続いているのに、本当に「大丈夫」なのだろうか。カナリアになるべきインテリの体たらくは、あまりにも目に余る。どこを見渡しても、太った豚ばかりではないか。
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