デフレ下での消費税増税は日本の経済は悪くする。景気をよくするのが前提なのである。役人の言いなりになって、消費税増税に命をかける、とか言うのは、橋本龍太郎内閣のときの過ちを繰り返すだけだ。まずは財政出動をして公共投資を行い、景気を刺激するのが先である。日本人はここ10年間で、新自由主義の小さな政府の実験場となってしまった。その結果、地域のコミュニティは破壊され、格差社会が広がった。しかし、その反省もなく、今なお小さな政府を主張する学者が多いのが現状である。さらに、それに対抗する学者たちも、新しい産業の創出とかのお題目に終始している。30年前や40年前に建設した橋やトンネルがもう限界にきているのに、机上の空論ばかり述べているのだ。神野直彦・井手英策編の『希望の構想』などはその典型だ。神野は「序章」において「来るべき知識社会の社会的インフラストラクチュアは、これまでの工業社会の社会的インフラストラクチュアとは相違する」と大見得を切るとともに、「自然に働きかける主体である人間そのものが生産を規定する知識社会」なるものを構想し、「知識資本をサポートする公共サービスが社会的インフラストラクチュアとなる」のだそうだ。意味不明な文章ではないか。目の前に老朽化した橋やトンネルがあるというのに、どうしてそのことに言及しないのだろう。さらに、人文科学的な知識があれば、ミッシェル・フーコーあたりが述べているように、主体としての人間など存在しないはずではないか。それよりは、足元を見つめ直すのが先だろう。リベラルにこだわると、かえって新自由主義に足をすくわれるのである。
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