日本国民は衆愚であることを拒否した。安保法制関連法案が国会を通った後の読売新聞の世論調査でも、支持が40パーセントを超えていたからである。デモ隊が連日のようにテレビで紹介されれば、それに影響されるのが普通である。しかし、日本国民は、若干のためらいはあったとしても、体を張ってまで阻止しようとしたのは、ほんの一握りであった。一昨日あたり国会前に集まったのは100人しかいなかった。今さら集団的自衛権でもないのに、あえて真実を伝えないマスコミが混乱を引き起こしたのである。日本が安保条約を締結した時点で、日本はアメリカとの同盟を選択しており、集団的自衛権の行使を事実上容認したのである。それに反対するのであれば、安保条約にも反対しなくてはならないはずだ。急に持ちあがったきた問題ではないのだ。さらに、国会での多数決を認めずに、デモ隊の力で阻止しようとしたのは、まさしく議会制民主主義の挑戦であった。田中美知太郎は「民主主義の多数決原理というのは、全くたわいもないことのように思われるけれども、その前提となる思想は、どうもそれほど簡単ではないようである。それは人間知識の有限性という事実に立ち、あまやり多い人間にとって、できるだけ危険の少ないやり方として工夫されたものと言うことができるであろう」(『直言、そして考察』)と書いている。しかも、日本の民主主義は間接民主主義である。共産主義国家が口にする人民民主主義とはわけが違う。人間は一時的な感情に押し流れやすい面があり、それがもっとも賢明な政治システムなのである。
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