ソ連の崩壊を予言した小室直樹は、中共の崩壊についても論じていた。1989年に世に出た『中国共産党帝国の崩壊 呪われた五千年の末路』である▼小室は「中国共産党の階級的基盤はプロレタリアートではなく、農民にある」ことから説き起こす。社会主義を目指すものであれば、その担い手は労働者でなければならない。ロシアはヨーロッパの「最後進国」ではあったが、確実にプロレタリアートが育ちつつあった。だからこそ、レーニンやスターリンは農民から土地を取り上げて、コルホーズやソホーズにしたのだ。毛沢東の中国共産党は違っていた。地主を殺して、土地と財産を小作人に分けてやったのである▼社会主義に向かったのではなく、天が命じるままに権力を奪取したのであって、まさしく易姓革命なのである。中国共産党の階級的基盤は間違っても労働者や学生ではない。天安門事件で人民解放軍が発砲したのは、相手が農民ではなかったからだ▼小室に言わせれば、中共が深刻な事態を迎えるのは、農民が流民と化したときである。『三国志』の世界は今も変わらないのである。中共の最大の格差は「都市と農村」である。農民は土地に縛り付けられており、農奴に近いともいわれる。近年になって農村から逃げ出して流民に紛れ込む者たちが急増している。小室は「この流れは、まもなく大河となり長江となるであろう。何人も、これをせきとめることはできっこない」と書いたのだった。中共の崩壊もまた、ソ連と同じように避ける術はないのである。
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