今宵の煎茶の稽古の題材は「猿」だった。
猿は秋の季語ではないが、漢詩や俳句で晩秋を表現する動物としてよく登場する。
その昔、中国の有名な詩人の李白、杜甫、杜牧などの長江の三狭の下りで詠まれた詩の中に「猿」がよく登場する。
そのほとんどは悲哀のストーリーに使われている。
芭蕉が詠んだ句にも「初しぐれ猿も小蓑をほしげ也」というのがある。
芭蕉が46歳のときに、奥の細道の旅を終えて帰郷の折、
伊賀越えの山中で初時雨にあって詠まれたものとされている。芭蕉最高傑作の一つとして有名である。
この句にも「猿」が登場している。ただの風景描写ではない。
芭蕉も、そのときの情感を「猿」に例えたのだろう、と想像を巡らしてみた。
では、なぜ? 猿が悲哀のストーリーによく登場するのか、というと。
それは、猿の「鳴き声」にあるようだ。鳴き声が、中国の詩人たちの悲哀の感情をさそい、
聴覚的な特色つまり「かん高く鋭い声」がそれに結びついた、といわれている。
そんなことを思いながら飲む玉露の味と、お茶の花と実の香りがなんともいえない秋の深さを感じさせてくれた。
記事は、2013年11月にブログに掲載されたねものをリメイクし転載
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