本はどこでもドア。
瞬時に違う場所へと連れていってもらえる。
電車内はわたしには貴重な読書タイム。
「空ばかり見ていた」吉田篤弘著
先日電車の中でこの本のなかの「海の床屋」を読んでいたら、何だかひどく郷愁に駆られて小さい頃の伯母の家を連想し、束の間子ども時代にトリップしていた。
読み終えた途端、なぜだか懐かしさに涙が溢れそうになって困った。
たとえわたしが涙をひと粒落とそうと、車内でそれぞれの画面に目を落としている乗客のうちの誰ひとり気付きはしないだろうけれど。
だいすきだった伯母の家。
少し離れた商店街にあったクリーニング店の姉弟と仲良くなって、伯母の家に泊まりに行くと度々遊んだ。
弟の方はわたしと同い年で、名はかっちゃん。
フルネームまで思い出した。
人懐こい笑顔も。
もう何十年も思い出すこともなかったのに不思議なものだ。
本の中のコトバが鍵になって、わたしの記憶の湖をかき回して懐かしい想い出を掬いだす。
吉田篤弘氏の物語は魔法をもっているようだ。
まだ読み終えていないけれど、ここで一旦おしまいにする。
この主人公ホクトさんにはずっと旅をして誰かの髪を切っていてほしいから。
また暫くしてから旅の続きに戻ろう。