時間のしずく time drops 

たいせつなもの。すきなこと。

乱歩に墜ちる夜

2024-07-24 | 本 のこと

古本市でなんとなく買ってしまっていた「江戸川乱歩傑作選」をふと読み始めたら…。

これが止まらない。
オモシロイ。

江戸川乱歩の物語は明智小五郎で有名だし、テレビドラマやなんやかんやで知ってはいたけれど、きちんと江戸川乱歩自身の文章で読むのは人生初のこと。

(読んでみたいと思ったから手に取ったのだろうけれど自分。買ったことを忘れていた〜笑)

十代の頃、海外ミステリにどっぷりハマったせいかどうも日本の古典的な推理小説には食指が動かないまま大人になってしまった。
特に江戸川乱歩には何となくジメジメと気味悪いイメージを持っていたせいで、ずっと遠巻きにしてきた。

初期の作品を集めた9編の短編からなるこの傑作選、乱歩初心者にはぴったり丁度いい塩梅でありました。

「二銭銅貨」「心理試験」が特に面白かったかな。
「人間椅子」はただの異常者の物語かと思い込んでいたら…どんでん返しに驚かされたり。

夏の夜にうってつけな本でありました。

いやはや〜
本も食わず嫌いはもったいないということですね。
「江戸川乱歩傑作選」江戸川乱歩著
昭和35年新潮社発行
(平成21年94刷)



本の中には。。

2024-07-12 | 本 のこと
本は時に
普段ぼんやりと想っていたことを唐突に文字化してくれる。

「妄想は想像であり、想像は創造に転じる」

電車の中で読んでいた物語のなかの一文が
ずっと昔からの宿題の答えみたいにピカリと光る。
きっとこういう時、脳のシナプスはあっちとこっちを繋いでビビビと電気を発生させていることだろう。

そうそう、そうなんだよ。
だから妄想はたいせつなんだ。夢想も空想もね。
と、ココロの中で大きくうなづいてから
物語へと戻るのであった。

わたしの半分は妄想夢想空想でできている、と自覚している。
残りの半分で現実を生きているようなもの。
ま、そういうふうにできているのだから仕方がない。

ちなみにこの物語は
吉田篤弘著
「つむじ風食堂の夜」

このほど、吉田篤弘氏の物語に続けて潜っている。

今のわたしにはとても居心地の良い場所なのである。


さくらと「人間の建設」小林秀雄 岡潔著

2024-04-05 | 本 のこと

先日、公共施設から車椅子をお借りして義母を近所のお寺までさんぽに連れて行った。
ここの枝垂れ桜はとてもきれい。

「さくら見に行こう!」と着替えをさせて準備していると
「もう咲いてるの〜!」「わぁ〜ありがたいねぇ」と喜ぶ。
桜を見上げて
にこにこ嬉しそう。

でも、家に帰りお茶を一服する頃には
桜を見たことはすっかり忘れている。
それでも、桜の下にいたその瞬間は確かにあった時間。
記憶にあろうとなかろうとね。ふしぎなものだ。
あったけどないジカン。

認知症の義母を看ていると
時間が連続して流れていないことがよくわかる。
彼女の時間は今の一瞬だけ。
有無を言わせぬ完璧なマインドフルネス!素晴らしい!
時間という観念がない世界に生きている。
それは赤ん坊に時間の観念がないことと同様だ。
それはとても平和な世界。
いやなことも憂うこともない。
一瞬あってもそれは次の瞬間には蒸発している。
なんてのどか。。。

以前読んだ「人間の建設」小林秀雄 岡潔 著の中で
岡潔氏が語っていたことを思い出して本を開く。

「…赤ん坊にはまだ時間というものはない。だからそうして抱かれている有り様は自他の別がなく、時間というものがないから、これが本当ののどかというものだ。これを仏教でいうと涅槃というものになる…」

赤ん坊ではなくとも、様々なことを忘れて時間の観念のない義母の世界は正にのどかそのものだ。

ヒトは年を取ると赤ん坊に戻っていくというのは本当なんだな。(認知症の場合はね)

いつか行く道。。。

義母に三十年後のジブンを重ねてみる。
(そもそも生きているのか?)

いやはや…今のうちにいろんなことをキチンとしておかねば…という気持ちになる。

いつか来たみち
いつか行くみち
そして現在。

それにしても
本って読んだ時にわからなくても、あとからそういうことか…と腑に落ちるってことが時々ある。

実体験ってつくづく大切なんだなぁ。いくつになってもね。





p.s.ひとりごと

ところでこの数日ブログの訪問者数がとんでもない数字になっていてびっくり。
スタッフが選んだ記事としてトップページに載せていただいていたみたい。
ブログ続けて十数年以上になるけどこんなコト初めて〜!
数年前に始まったリアクションボタンも性に合わず参加していないのですが、懲りずに訪れてくださる読者の方々には本当に感謝しております。
なんの為にもならない雑記ではございますが、今後とも気の向くままに綴ってまいります所以、読んでいただけたらとても嬉しく思います!
最後までお読みくださりありがとうございます。




「未明の砦」太田愛著

2024-02-13 | 本 のこと

「未明の砦」太田愛著
2023年 角川書店発行

夜な夜な読み進め、やっと読み終えた。
この一冊で日本の労働問題についてすこぶる知識を得た気持ち。

読みながら「小説」だということを何度も忘れてしまいそうになる。
まるで経済学書か労働問題の学術書を読んでるんだっけ?と錯覚が起きる。

腐敗した日本政治の現状。
怒りを知らない従順な民、ニホンジン。。。

『日本には民主主義は根づかなかった』
『この国の民主主義が国民の手で勝ち取られたものではなかったから』
何度もハッとさせられガツンとやられてしまう。。。

確かにそう。
ニホンジンは気がついたら生温い生活の中に身を置きこういうもんだと思い込んで暮している。
だから権利を主張する貪欲さがないのか…。

『政治家という名の利権分配屋は何をしても処罰されることなく、もはや法治国家でさえなくなりつつある』

いやはや
全くもっておっしゃる通り。。。

普段漠然と感じていたことをこの本が気持ちの良いほどスパスパと言語化してくれている。

長編な上に登場人物が多く複雑な小説ではあるけれど、さすが太田愛氏。
やっぱりラストは清々しい。

いろいろとものを考えさせられる一冊。


太田愛氏の最初の3作の小説に出てくる愛すべき御三方の再登場を心待ちにしているんだけどなぁ〜
次作はぜひ彼らの活躍がみたいものだな〜!





世界でいちばん透きとおった物語

2024-01-13 | 本 のこと
「世界でいちばん透きとおった物語」杉井光著

こんな物語、というかこういう仕掛けのある本がかつてあったであろうか!?

本好きIさんから勧められて購入。
年末、読み始めたら先が気になってイッキ読み。

こんなに一言も内容が言えない本って今までなかったのでは?

本好きさんにお勧めです!
口コミなどなど前情報なしで読んでください。

北国の読書ともだちIさんのお陰で、近年わたしの読書の幅がぐ〜んと拡がりました!
いろんな良き本を教えてくださりIさんに感謝です!






「道をたずねる」平岡陽明

2023-11-12 | 本 のこと

「道をたずねる」平岡陽明著

最近は、ひょんなことでココロに飛び込んでくる本をあえて読むようにしている。

この本は、たまたまよその人のSNSで見掛けて気になって本屋さんに買いに行ったもの。

地図会社の調査員の人生。
地道な作業。。
正に地道に
道なき道をゆく。。。

「人はみな、自分の道をゆく英雄である。」

わたしは強度の方向音痴。地図にはあまり縁が無い。

この本は実在の地図会社が元になっているので
英雄談的に纏まっているのかと思いきや…
これはこれは。

長い人生の悲喜こもごもと、青春、老い、友情と人情、時にハードボイルドな逸話が縦横編み込まれた(帯びにある通り)胸熱なストーリーでありました。

どんな業界でも先駆者というものは並々ならぬ努力をして道を拓いていったのだなぁ…。
現在わたしたちが皆、便利に使っている様々なツールに改めて想いを馳せ感謝する良いきっかけとなる物語でありました。

地図がすきな方もそうでない方もどうぞ。




レモンマルメロナシブドウ

2023-10-16 | 本 のこと
原田マハ氏の
「リボルバー」を読んで以来史実に基づくフィクションの面白さにハマってしまった。

「楽園のキャンバス」では、時間の流れを逆走してハラハラしつつ、先が知りたいような読み終えたくないようなフシギな感覚を与えてもらい、「たゆたえども沈まず」では、自分がテオになってしまったかのように感じさせられ、兄フィンセントに対しての愛情と歯痒さに翻弄させられてしまった。

原田マハ氏の本には、瞬時に本の中の世界のその時代に読者を連れ去る魔法が隠れているような気がする。

或いはわたしの読書の癖なのか。

「たゆたえども沈まず」を読み終えた時、ゴッホの強烈な印象の一枚の絵を思い出していた。
その絵は「レモン、マルメロ、梨、葡萄」
エネルギー溢れる黄色い静物画だ。
自ら木枠で額装し、その額までもが黄色で塗りたくられている。
絵に対する情熱を自分でも止められない、とでもいうような圧倒される作品だ。
目にしてから10年以上経つ今でもあのエネルギーは忘れられない。

哀しい最後を迎えたゴッホだが、彼の中にあった確かな生きるチカラを感じることが出来る一枚だからこそ、この本を読み終えた時にわたしの脳裏に浮かび上がってきたのかもしれない。

当時六年生だった次男を連れて観に行った「ゴッホ展」でふたりして目を見張ったことをよく覚えている。
丁度その頃、小林秀雄の「ゴッホの手紙」に出逢い深く感じ入っていたから相乗効果もあったのかもしれない。

いずれにしても目で観た実物の持つチカラってスゴイ。

改めてあの名著を読み返してみようかな。
フィンセント・ファン・ゴッホ「レモン、マルメロ、梨、葡萄」
(2010年11月自分の過去記事の写真より)




「リボルバー」原田マハ著

2023-07-21 | 本 のこと


「リボルバー」原田マハ著。

本屋さんで引き寄せられて即買い。
原田マハ氏の本は初めて。

ゴッホとゴーギャンの複雑な関係。。
ゴッホの自死の謎。。

予期せぬ展開が面白く、早く先が知りたくて遅読のわたしには珍しく三夜で読み終えた。
ちなみにわたしの至福の読書時間はほとんどが眠る前のふとんの中。
(または遠出の電車内と待ち時間の長い病院の待合室)

夜な夜なわたしは眠る前に本のドアを開けて旅に出る。
今回もゴッホとゴーギャンがほんの短い期間共に暮らしたアルルの太陽を浴び
ゴッホ終焉の地オーヴェル・シェル・オワーズの麦畑で風に吹かれてきた。

本の中で語られる絵画の数々を脳裏に映し出しつつ読む。
不思議な疑似体験。

十数年前、小林秀雄の「ゴッホの手紙」(昭和27年発行)に古本市で出逢い熟読して以来、ゴッホの人柄には特別な思い入れがある。
そして小林秀雄の文章に魅せられて潜り込むこととなったのも、このゴッホとテオの書簡本「ゴッホの手紙」がきっかけだった。

モームの「月と六ペンス」を読んだことでゴーギャンはキライになってしまったのだけれど。。

この「リボルバー」のように史実に基づくフィクション、
そういうジャンルってオモシロイものなんだなぁ。

少し前に読んだビュッシの「黒い睡蓮」も、モネの暮らした村の史実に基づくミステリーだったっけ。

「ゴッホの手紙」再読しよう。

それにしても、ゴッホの「ひまわり」をじっくりとまた観たくなっちゃったなぁ。
損保ジャパン美術館にあるひまわりをまた観に行こうかな、とHPを調べたら、秋にゴッホの企画展があるみたい。(しばらく行かないうちに名前も変わった?)

それまで楽しみに待つとしよう!











「グレースの履歴」

2023-07-13 | 本 のこと
夢をみた。
スイスイと気持ちよく車を運転して旅をしていた。
もう30年もペーパードライバーなのに。

それはこの本のお陰。
「グレースの履歴」源孝志著

読んでみたいなぁと思っていたこの本。
読書友だちのIさんが贈ってくださり、読み終えたところ。
(ありがとうございます!)

久しぶりにとても読み応えのある本でありました。

ひととひと。
絡まった糸。
解されていく糸。

そして新たに紡がれる糸。

人生って
タテヨコ様々な小さな繋がりが織り重なっていつの間にか一枚の布が織り上がっていくような…。

ほつれた過去の穴や破れも
少しの勇気と、そして「時間」が繕う手助けをしてくれる。

向き合うかどうかは自分次第。

いろんなことを考えさせられつつ、わくわくする展開に惹きつけられる本でありました。

私にとって、本はドア。
開けばそこに拡がる世界。

たくさんのドアがわたしを待ってる。
次はどのドアを開けようか。



















「黒い睡蓮」ビュッシ

2023-03-24 | 本 のこと

「黒い睡蓮」ミシェル・ビュッシ
2017年 集英社文庫発行

クロード・モネが暮らし、睡蓮の絵を大量に描いた村、ジヴェルニーを舞台に繰り広げられるミステリー小説。

これは…!
久しぶりにやられた。

後半、
え?え?ちょ待って?となり、
まじかーーー。。。
となる。

これ以上は書けないのであ〜る。

この感覚、中学生の時に読んで衝撃を受けたクリスティーの「アクロイド殺し」以来かも。

ちょっと変わったモノが読みたい人にはお薦めの一冊!

(去年の近所の睡蓮)






絵本とゆたかな時間

2022-10-16 | 本 のこと
こどもたちによく読んであげていた絵本。

わたしの人生で一番最初にすきになった絵描きさんかも。
山脇百合子さん。(おおむらゆりこさん)
先日80歳で亡くなられた。

ぐりとぐらシリーズの動物たちもすきだけど、わたしは山脇百合子さんの描くこどもの絵がとりわけだいすきだった。
小学生の頃、山脇百合子さんの絵に紙を乗せて鉛筆で写し取り、色鉛筆で色を塗りそれをハサミで切り出して紙人形にして遊んでいたことをよく覚えている。
今にも動き出しそうな子どもたちの絵がかわいくてたまらなかったなぁ。。。

あの頃、リカちゃん遊びもすきだったけれど紙人形でもよ〜くひとりで熱心に遊んでいたなぁ。

現代なら写し絵なんてしなくてもちゃちゃっとコピーできちゃうけど。
今の子どもは紙の人形すら馴染みがないでしょうね。
昔は自由画帳とかの裏表紙は切り取れる着せ替え人形がプリントしてあったものだ。

と、書きながら暫く前に古物屋でゲットしたノートを持っていることを思い出しました〜。
ゴソゴソ…出てきました。
ショウワノート!懐かしい。


現代の子どもだってきっとこういうのがあれば遊ぶんじゃないかな。

アナログな遊びも大事だとわたしは思います〜。
山脇百合子さん、たくさんのたのしい時間をありがとうございました♪
ご冥福をお祈りいたします。









「光」に沈む闇

2022-09-01 | 本 のこと

「光」三浦しをん

時々、古本屋で本能だけで本を選ぶ。

「舟を編む」で有名だし、(でも読んでない)
三浦しをん原作の映画もいくつか観ていてすきだし
という安易な気持ちで中は全く見ずに手にとった。

しかし、これは…。
酷くきつい。

この本の発行は2013年。
読むうちに、東日本大震災のあとによくこれを書けたものだな…と苦しさを超えて不快になり、もう一度巻末をのぞいてみると単行本が刊行されたのは震災以前の2008年だった…。
それはそれで、なんとリアルな、まるで体験したかのような描写にまた驚く。

これは、津波被害に遭われた方の目に触れてはいけない本だと、個人的に思う。余計なお世話かもしれないけれど。
裏表紙にでも警告の文章を載せていただきたいくらいだ。

圧倒的な自然の暴力。人間による理不尽な暴力、そして闇。救いようのない重さ。逃れられない過去。。。

早く、なるべく早く
この闇から抜け出したくて
正に光を早く見たくて
一気に読んだ。

それでも読むことを止めようと思わせないところが、この著者の文章力の凄さなのだろう。

最後はこう終わるのか。。。
なんとも言えない読後感。
こういう時、頼りになるのは巻末の解説だ。

すがるような思いで解説のページへと進むと、なんとクラフト・エヴィング商会の吉田篤弘氏が待ち受けてくださっていた!

たいへん頼もしい解説文に出迎えてもらえて胸を撫でおろすような気持ち。
これでやっとこの物語から抜け出ることができる。

次に読む本はリハビリ的にやわらかいものにしておくとしよう。




「草花たちの静かな誓い」宮本輝著

2022-08-24 | 本 のこと


「草花たちの静かな誓い」
宮本輝著 2016年集英社発行

久しぶりの輝さんの長編。

昔読んだ輝さんの「オレンジの壷」を彷彿とさせるような、謎を追って海を越える物語。

地に足のついた主人公がとても好感が持てるせいか、読んでいて独特な安心感があるのが不思議だ。

時に、物語の中の世界の心地良さに、読み終えたくなくなる本に出逢う。

納得のいかない部分も解せない部分もあれど、現れる登場人物たちが人情に溢れ、会ってみたいほどイイニンゲンなのだ。

現実に於いても本の中に於いても、やはり心根のきれいなニンゲンには引き寄せられるものなんだな。。。

わたしは読み終えちゃったけれど、あの本の世界の中ではきっと今もあの花々たちはうつくしく咲き誇り、夜風にそよそよとかわいらしく揺れているに違いない。







「母の手紙」岡本太郎著

2022-08-20 | 本 のこと



「母の手紙」岡本太郎著
昭和27年 宝文館発行

若き日のパリ滞在中の息子岡本太郎に宛てた母かの子の書簡本。

昭和27年の初版。中はすっかり茶色く変色した旧字体のこの本。
読んでいるうちにカバーも擦り切れてしまった。
暫く前に古本市で出逢って以来、積読本の仲間入りになっていたこの本。

自宅療養中に、本を整理していて手に取り読み始め、どっぷりのめり込んでしまった。。。
この本は、岡本太郎の人となりが浮き彫りになるような…そんな一冊。

母かの子の我が子への想いに、父一平の二人への想いに、そして太郎の父母への尊敬と慈愛に、何度も泪がこぼれてしまう。

こんなにうつくしい親子愛があるだろうか。
同じ芸術家同士、互いを敬い高め合う…。

家族というより、戦友のような…。
三人が対等に立ち、そして互いに支え合う強い三角錐のようだ。。。

特にわたしのこころに沁み入ったくだりを記しておくこととする。
わたしも忘れないように。。

太郎からの返信の中の母への一文、
「おかあさん、感情家だけではいけませんよ。生きるといふ事実の上に根を置いて、冷酷なほどに思索の歩みを進めて下さい」
この言葉に対し、
「〜この言葉はおまへ自身、頑なな現実の壁に行き当たってさまざまに苦しみ抜いた果ての経験から来る自戒の言葉ではあるまいか。とすれば、おまへの血と汗の籠もった言葉だ。言葉は普通でも内容には沸々と熱いものが沸いてゐる。戒めとして永く大事にこの言葉の意味の自戒を保ち合って行かう。〜略」


本は、ドア。
どのドアを開けるかは自分次第。

出逢えてよかった。。。




追記 奥付の価格のところ、よく見たら地方価格なんてあったんだなぁ。ふしぎだ〜。



「滅びの前のシャングリラ」凪良ゆう著

2022-07-25 | 本 のこと


「滅びの前のシャングリラ」 凪良ゆう著
2020年10月中央公論新社発行

本の帯には「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」
滅びゆく運命の中で、幸せについて問う傑作 とある。

自分では選びそうにない本を
なにかのきっかけで目にして読む。
最近、そうやってバッタリ本に出会うのも面白いなあと感じている。

男子高校生の語りに始まるこの本も、するするとたいへん読みやすく、気がつくと引き込まれてしまっていた。
しかし。。。
終末へのカウントダウンが始まっていくと…
このところのコロナ感染爆発、終わりの見えてこない戦争、WHOのサル痘への緊急事態宣言、熱波による大火災、太陽フレアの危機のニュースなどなど。。

生温い平和が過去のものとなってしまった今、この本の中の世界の終わりのニンゲンの行動の哀しさがあまりにもリアルに胸に迫ってきて、先を急いで読みながら少々酸欠気味なキモチになってしまった。
普段から小説の中に入り込み易い体質なため、救いようのないストーリーや酷いバイオレンスを含む本は近年もう読まないよう気をつけている。

この本は、根底に温かな優しいものが流れているからそういう類のストーリーではないのだが…。

わたしの近年の読書タイムはほぼ眠る前のふとんの中。
眠る前にこの本を読み終えるのはマズイ、と本能が囁くので最終章は休日の夕方にとっておいた。

果たして。。
読み終えて本を閉じているのに、終わらないこのざわざわとした気持ち。
本の中の終末の話だとわかってはいるのに、何故か何処かで本当に体験してきたことのような。。。

そのまま夕飯の仕度に取り掛かる気持ちにはまるでなれず、暑さの残る日暮れの空を眺めに散歩に出た。

まだここにある平和な夕焼け空を見上げて、やっと肺に新鮮な酸素が入ったような…
やっと現実世界に戻ってホッと安堵したのでありました。

いやはや、布団の中で読み終えなくてよかった。
きっと眠れなくなり、壮絶な夢にうなされるはめになったことであろう〜。

本能の囁きはたいせつにしよう。



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