(写真:エルサレム、神殿の丘のモスク)
2007年の最後にあたり、何か気の利いたメッセージを贈れれば最高だったでしょうが、心あわただしく、思うに任せませんでした。
そこで、月並みですが、今年最後に観た映画の感想でお茶を濁すことにします。
〔映画〕 暗殺 ・ リトビネンコ事件 (ケース)
この事件についての一連の小さな新聞記事、気にはなっていましたが、インターネットで積極的に情報を集めて、確かな自分の心象を形成するための努力を怠っていました。この映画は、そんな眠たげな私の目をパッチリ開けさせるのに十分でした。
元FSB(ロシア連邦保安局=旧KGB)中佐のアレクサンドル・リトビネンコ氏がロンドンで死亡。体内から、放射性物質ポロニウム210が検出されました。ポロニウム210を人工的に作るには、原子力施設など大掛かりな設備が必要になります。権力の中枢に近い勢力でなければ、製造・使用は極めて難しいはずです。
リトビネンコ氏が集中治療室で死亡した二日後の2006年11月25日イギリスの「タイムズ」紙は「動機、手段、機会の全てがFSBの関与を物語っている」と、指摘しています。
米ABCテレビは2007年1月27日、イギリス当局が、国家による暗殺との結論に達した、と報道しました。
殺された直接の契機と思われるのは、プーチン政権に向けてリトビネンコ氏が放った3本の矢であると言われます。
その第一は、第二次チェチェン戦争のきっかけの一つとなった、1999年のモスクワなどで起きた一連のアパート連続爆破事件に関して。爆弾がアパートに仕掛けられ、合計で約300人もの住民が犠牲になったテロ事件です。
ロシア当局は、チェチェン独立派の犯行と断定して、軍事侵攻を開始しました。ところがリトビネンコ氏は、「テロはロシア政府の自作自演」と証言し、チェチェン侵攻の「大義」そのものが、でっち上げだと断定していたのです。
アメリカに喩えるなら、約3000人の市民の犠牲を出してアフガニスタン、イラクへの侵攻のきっかけとなったいわゆる「9.11同時多発テロ」が、アメリカ政府の自作自演だと公の場で証言しているに等しいのです。
「民主国家」アメリカの情報公開のおかげで、我々はベトナム戦争の北爆開始のきっかけとなったトンキン湾事件が、アメリカ政府の自作自演であったことを、証拠をもって知っています。中国で張作霖を爆死させた盧溝橋事件が関東軍の自作自演であったことを知って、昭和天皇は激怒した、とかしないとか。真珠湾だって、アメリカが先に公海上で日本の潜航艇を沈めたのが発端と言えば発端だが、沈んだ潜航艇が400メートルの海底で見つかった今でも、最初の一発は奇襲をかけた日本軍からだったということになっています。米国民の愛国心を刺激して戦争に突入するために、知りながら、待ち受けて日本にやらせたと言う見方は、不思議なことに未だに市民権を得ていないように見受けられます。
年末に締めくくりとしていい映画にめぐり合った気がします。
防衛庁の事務次官の問題。蜥蜴の尻尾切りに終わらせず、政界・財界の汚い膿を出せるかどうか。年金問題に代表される、長期政権の末期的麻痺症状。ワーキングプアーとして注目され始めた、人の尊厳を破壊する格差問題。消費税引き上げをちらつかせる前に、何故高額所得者への累進課税の強化や法人税の引き上げなどの声が国民からも野党からも上がらないのか、不思議でなりません。
それは、宗教家、カトリックの神父が物言う分野ではないだろうと、どこかからお叱りが飛んできそうですが、私はそうは思いません。
こんな時代だからこそ、宗教団体は力を結集して社会の変革に立ち上がれ、と檄を飛ばすためではありません。それこそ、宗教が直面する、悪魔からの巧妙な誘惑に他ならならないでしょう。
そうではなくて、上記のような不正や社会悪の実態から目をそむけず、むしろそれを正しく見据え、地に足をつけたところから出発して、その犠牲になって底辺にうごめく貧しい人たち、虐げられている人たちに、救いのない、出口の見えない状態の中でもがいている人々に、偽りの解決や慰めに走ることなく、「貧しい人は幸い」「義のために迫害される人は幸い」「汝の敵を愛しなさい」「悪に逆らってはいけない」と教えるナザレのイエスの福音こそが、復活の生命に届く「唯一の、真実の救いと希望だ」というメッセージを、力強く宣べ伝える2008年でありたい、という決意を表明するためにこそ、この一文を書きました。
★ ★ ★ ★ どうか、良いお年を! ★ ★ ★ ★
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