眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

セルフ・キャッチ

2021-02-19 04:22:00 | ナノノベル
「犯人の特徴は?」
「容疑者では?」
 女は冷静な口調で言った。

「男の特徴は?」
「おじさんです」
 少し待っても続く言葉はない。
「他は?」
「他?」
 そんなに難しいことだろうか。
「体型とか髪型とか何か……」
「おじさんですね」
 なんて薄っぺらい情報なのだ。おじさんがどれほどの数いると思っているのか。そもそもどこからどこまでがおじさんだというのか。

「私くらいの?」
「そうだ。あなたでした!」
「えーっ、私?」
 女の記憶は確かによみがえったらしい。

「犯人は私だ! 観念しろ!」
 私は私にお縄をちょうだいした。

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みえすぎる糸 

2021-02-19 03:09:00 | 【創作note】
 ずっと気になる糸があった。数週間前にそれに気がついた。誰も気づかないのだろうか。気づいてはいるが、気にとめるほどでもないと思っているのか。それとも、気にはなっても取る手段がないのか。(あれほど高いところだから)

 気になる糸が、垂れながら微かに揺れている。
 取れないのではなく積極的に取らないでいるということはないだろうか。(あれは著名な蜘蛛が残したありがたい糸である)
 あるいは、蜘蛛の糸などではない。(だとしたら何?)
 あるいは、そんな糸は存在していない。(幻を見ている)

 考えすぎだ。
 みんな同じように気にしている。けれども、どうしていいかわからないのだ。

 僕はいまフードコートの最後列にかけて天井を仰いでいる。
 ポメラとの対話に平行してずっと糸にとらわれているのだ。
 次の瞬間、颯爽と現れた勇者がそこに飛び上がるかもしれない。

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