無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

「ある男」

2022-12-21 | 2022映画評


「ある男」 石川慶監督 ○ 松竹 ☆

 芥川賞作家平野啓一郎原作の小説を映画化しました。
 文房具店を営む里枝(安藤サクラ)は林業事故で亡くなった夫谷口祐一(窪田正孝)が別人だと祐一の兄から言われます。里枝はかつて世話になった弁護士城戸(妻夫木聡)に相談します。城戸は「谷口」が本当はだれだったのかを調べ始めます。その過程で「谷口」の意外な過去、そして驚愕の真実を突き止めるのでした。

 ネタバレになりますが犯罪者の家族の生きづらさ、さまざまな差別、そして名前の意味など内包した作品で苦悩する城戸を妻夫木が好演しています。負けていないのが過去を持つ「谷口」役の窪田でさまざまな表情を見せてくれます。掴みどころのない男役が窪田にしかできない、と思わせる好演です。 
 眞島秀和、小籔千豊、真木よう子、清野菜名、柄本明がそれぞれ持ち味を生かして競演しています。(☆)

 タバコは、なし。無煙です。


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「夜明けまでバス停で」

2022-12-13 | 2022映画評


「夜明けまでバス停で」 高橋伴明監督 ☓ ☆

 バス停で夜を明かしていたホームレスの女性が近所に住む男に殺害された事件から触発され事件が何故起きたのか、避けることはできなかったのか、観客に問いかける作品です。
 美知子(板谷由夏)はアクセサリーの制作を仕事にしていましたが夜は居酒屋でバイトをしています。マネージャー(三浦貴大)は嫌なやつですが、仲間とはチームワークよく働いていました。ところがコロナで緊急事態となり居酒屋は休業、と同時に解雇され寮を出されます。誰かに頼ることもできずネットカフェも休業。大きなキャリーケースを引きずりながらホームレス生活が始まります。
 一方働いているときはマネージャーの恋人としてしか見られていなかった頼りない店長の寺島(大西礼芳)は解雇されたバイトたちを心配し手を打っていたのでした。

 パワハラ、セクハラ外国人差別など嫌な奴の典型、マネージャーの三浦が大変いい演技で不愉快なやつを演じています。他にも柄本明、根岸季衣、懐かしいルビー・モレノが脇を固めています。ラストの感想を言ってしまうとネタバレになってしまいますが、高橋監督がなぜあの事件を元にして映画にしたのか納得できます。(☆)予想に反して爽快な作品でした。店長かっこいい!

 タバコは、元芸者の根岸が何回かキセルで喫煙していました。年齢的にヤバイです。監督が吸わせたのであればスモハラですね。


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「ブラックパンサー ワカンダフォーエバー」

2022-12-02 | 2022映画評


「ブラックパンサー ワカンダフォーエバー」 ライアン クーグラー監督 米 ○

 マーベル・コミックのヒーローのひとり「ブラックパンサー」を演じたチャドウィック・ボーズマンが亡くなり、ワカンダ国のチャウ王が亡くなったストーリーで基本的なキャストはそのまま続編を制作しました。
 王の死を悲しむ中間のラモンダ(アンジェラ バセット)が王座につきました。そんな折、アメリカの学生がワカンダの繁栄をもたらしているヴィブラニウムの探知機を発明したという情報が入り娘のシュリ(レティーシャ ライト)がその真実を確かめに出かけます。ある国が探知機を使ってヴィブラニウムを海の中から掘削しようとしたために怒った海の王国タロカンとの戦いが始まります。

 アフリカ系、南米系の俳優が大活躍し、白人は数人だけのそれだけでも興味深い作品です。派手な乗り物とアクションが見どころですが、結局、鉱物を制するものが世界を制している現実を揶揄していて地下資源に頼らない生活様式に変えていかなければいつまで立っても争いは終わらないのではないかと考えさせられます。
 まだまだ続くようで楽しみです。

 タバコは、なし。無煙です。


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「土を喰らう十二ヵ月」

2022-12-01 | 2022映画評


「土を喰らう十二ヵ月」 中江裕司監督 ○ ☆☆

 水上勉のエッセイ集「土を喰う日々 わが精進料理十二ヶ月」を原案に監督自身のオリジナル作品として、白馬を舞台に実写映画化しました。
 小説家のツトム(沢田研二)は雪を被った山脈がみえる古民家に暮らし畑を耕し山菜を取り子どもの頃育った禅宗の寺で教えられたように丁寧に精進料理を作り来客に振る舞っています。亡き妻の部下で編集者の真知子(松たか子)は原稿を催促しがてら時々訪れます。近くには少し偏屈な妻の母親チエ(奈良岡朋子)が小さな小屋に一人で暮らしていました。
 平穏な日々がチエの突然の死や自身の心臓発作が続いて起きたことで揺らいでいくのでした。

 風景や食材、料理の過程、完成した料理(担当 土井善晴)など味噌や梅干しを含めすべての映像が美しい。主役の沢田がそれに負けず魅力的です。(☆)特に室内に冷蔵庫もなく、プラスティック素材のものや化学物質でできたものが一切目に入らないという生活が大変心地よいです。米びつだけちょっと違和感がありましたが。料理を盛り付ける器がそれぞれ個性的でさすが「ふくら舎協力」です。
 沢の水を贅沢に使える生活が羨ましいです。しばらくは「皮も根っこも食べるツトム君料理」が我が家で流行りそうです。
 犬が出しゃばらず、さりげない演技だったことも良かったです。
 ちなみに大豆の種まきと山鳩の関係ですが、大豆は苗にしてから植えるのが百姓の常識です。あの山鳩はよく訓練されていて可愛かったけど。
 今日一日を大切に生きよう、と思わせてくれる秀作です。(☆)

 タバコは、なし。無煙でした。

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「川っぺりムコリッタ」

2022-11-27 | 2022映画評


「川っぺりムコリッタ」 荻上直子監督 △ ☆

 監督自身の小説を実写映画化しました。
 ある過去のため孤独な青年山田(松山ケンイチ)がハイツムコリッタで暮らし始めます。塩辛工場の社長(緒形直人)から「更生できない人はいないから。まずは一日一日を過ごすんだ。」と励まされイカにまみれながら働きます。ひっそりと暮らしたい山田でしたが隣の島田(ムロツヨシ)が強引に風呂を借りに来たことから関わりが始まります。ハイツの住民は大家の南(満島ひかり)は母子家庭、お墓の営業をしている溝口(吉岡秀隆)は父子家庭、とそれぞれが日々生きることに精一杯ながらも小さな幸せもあるのでしたが・・・。

 お金がなくておにぎりも買えない山田が給料をもらって米を買い炊きたての御飯を食べる場面が秀逸です。当然のごとく隣の島田も「おかわりはしないから」と言いつつ「山ちゃんご飯炊くのうまいね。」と頬張る姿を見ていると「今夜はご飯にしよう!」と思ってしまいます。小姑的に言えばピーが鳴ってからあと10分くらい置いてしゃもじでご飯の上下をひっくりかえして再び10分置くと最高になるけど。映像はとてもおいしそうだったからまいっか。(フードスタイリスト飯島奈美)
 買い物袋からネギが飛び出しているとちゃんと味噌汁にネギが入っていてそれもざっくり切ってある感じ、細かいところがリアルでした。
 おくりびと役の柄本佑の風呂敷の包み方が美しい。「ハケンアニメ」とは全く違う役ですがこちらもぴったりでした。
 ちょっとしたところにも薬師丸ひろ子など実力派の俳優が登場しています。江口のりこも目力強い!
 タクシーは出てきましたが、やたらに車が出てこないのもミニマムライフ風でよかったです。(☆)
 なお、ムコリッタというのは仏教用語で約48分のことだそうです。転じて「ささやかな」という意味にもなるとか。

 タバコは、とんでもない存在の人がタバコをもっていて残念でした。だから早く死んじゃったのかな。
 

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「すずめの戸締まり」

2022-11-26 | 2022映画評


「すずめの戸締まり」 新海誠監督 ✗✗

 人気アニメ映画監督の新作です。
 九州に住む鈴芽(声 原菜乃華)は扉を探しているという草太(松村北斗)と出会い廃墟にある扉を開けてネコ型の石を持ち上げるとそこからは奇妙なネコと「みみず」と呼ばれる災のもとがふきだします。「扉を閉めないと大変なことが起きる」ので二人合わせて閉めるのですが、次々と「みみず」が現れてしまいます。ネコの呪いで椅子に変えられた草太と鈴芽は扉を閉める旅に出るのでした。

 映像は美しく、物語の登場人物たちもいい人ばかりですが、悪役は「災害」です。ただ、因果が納得できないので単なるファンタジー映画になってしまいました。地震を起こすのは「なまず」だし要石は、通常は「亀」が多いのではないでしょうか。前作では結構民俗学的な面白さもあり期待しましたがちょっとがっかりでした。
 「ルージュの伝言」はもう飽きました。

 タバコは、草太の友人が喫煙者で何回か喫煙しました。教師になるという青年ですが、今(スマホの型から現在と思われる)教育学部で喫煙できる大学があるのでしょうか?あまり聞きませんね。自分の車なら同乗者がいても喫煙するという態度も現代的ではないですね。


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「ザ・メニュー」

2022-11-25 | 2022映画評


「ザ・メニュー」 R15+ マーク マイロッド監督 米 ✗

 孤島にある予約が取れない人気レストランで起きるサスペンスです。
 カリスマシェフのスローヴィック(レイク ファインズ)に招待されボートに乗って孤島に着いたセレブや料理評論家、元有名俳優などの中にひとり代役で参加したマーゴ(アニヤ ティラー=ジョイ)の存在は迎えに出たスタッフを戸惑わせます。それでもコースメニューが始まりますがシェフが「庶民の食べ物であったパンは皆様にはふさわしくないのでパンを出さない。」など言葉や態度が奇妙です。招かれざる客マーゴは「食事が楽しくないのは変!」とスローヴィックに抗議しますが、対応は変わらず、まるで軍隊のようにスタッフに指示を出す姿に招待客は少しずつ不安になっていきます。そしてあろうことか死者まで出てパニックとなるのでした。

 スローヴィックが徐々に招待客の過去を暴き出し恐怖に陥れる姿やスタッフを自在に繰ることに観客も気持ちがザワザワします。またサスペンス映画の金字塔「サイコ」を彷彿とさせる、しゃべらずただ酒を飲んでいるだけの年老いた母親の存在も「なにか良くないことが起こりそう・・・。」と不安になります。
 ただ、スローヴィックの行動の目的が不明で単なる異常者になってしまいました。イメージとして伊坂幸太郎の小説に登場する自殺屋の「鯨」に似ています。料理をテーマにするなら食物と環境を問いかけるとかフードロスを戒めるとかに昇華させるなどできたのではないでしょうか。社会性がまったくない消化不良な作品になってしまいました。
 材料に梅干しが使われていたみたいで「ウメボシ」ということばが何回か登場し、梅干しも国際的になったようでびっくり。

 タバコは、冒頭でいきなりマーゴがタバコに火を付けるアップ(よくある場面です。)があり「味蕾が傷つくからタバコはやめたほうがいい。」と同伴者にとめられます。孤島に渡ってからも一度喫煙しました。ディズニー作品で喫煙シーンって珍現象です。



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「線は、僕を描く」

2022-11-23 | 2022映画評


「線は、僕を描く」 小泉徳宏監督 ✗✗

 砥上裕將(とがみひろまさ)原作の青春小説を横浜流星主演で実写映画化しました。
 大学生の霜介(そうすけ)はある水墨画を見て感動します。展示会場にいた水墨画の巨匠湖山(三浦友和)に声をかけられ水墨画を始めます。墨の濃淡と筆使いだけで微妙な線を描くことに魅せられた霜介は湖山の孫千瑛(清原果耶)と共に水墨画の世界を極めていきます。そして災害の被害を受けた家族を救えなかった過去と向き合い前に進むのでした。

 水墨画の魅力を堪能することができます。自分でも簡単に描けそうな錯覚に陥ってしまいます。この作品でも賞を取るまでそれほど苦労していないところがファンタジーになってしまいました。

 タバコは、湖山の弟子役の江口洋介が何回か喫煙しました。年齢的にそろそろ危ないですよ。
また、自分のタバコを学生の霜介にすすめる場面がありましたがタバコをすすめるのはアウトです。被っていいた手ぬぐいの宣伝だけで十分なのでは。タバコの宣伝はやめようよ。


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「千夜・一夜」

2022-11-12 | 2022映画評


「千夜・一夜」 久保田直監督 ✗✗

 監督が年間8万人に及ぶ失踪者について知ったことから着想を得たオリジナル作品です。
 佐渡の漁港近くに住む登美子(田中裕子)は30年前にいなくなった夫をずっと待っています。この地域では何人かが拉致された過去があり町役場の人などの手で特別失踪者としての登録などもしています。幼馴染の春男(ダンカン)はずっと登美子に気があり夫が見つかるまででいいから面倒を見させてくれと言いよっています。そんな登美子の前に2年前に夫が突然いなくなってしまった奈美(尾野真千子)が話を聞かせてほしいと訪れます。

 8万人の失踪者という数が具体的にどのような数なのか想像もできませんが「生死も不明でただ待つ」ということは疲れることだろうと想像はできます。ただ、映画にして何を訴えたかったのかよくわかりませんでした。田中裕子のラストでの体を張った海中演技もいまひとつ理解できずもったいない感じでした。ところで、田中裕子はいつも似たような役で笑顔をほとんど見せません。こちらももったいないですね。「いつか読書する日」のラストの笑顔またみたいものです。

 タバコは、登美子の海産物加工工場の同僚が休憩のたびに喫煙していてその隣に干物が並んでいて「あの干物はタバコ臭いだろうな。佐渡の干物は遠慮しよう。」と思ってしまいました。せっかく撮影に協力してくれた工場の印象が悪くなるような演出はまずいです。
 看護師の奈美が喫煙者で何回か喫煙しました。かつては喫煙率が高い職場でしたが今は喫煙する看護師なんて昭和レトロなのではないでしょうか。


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特別寄稿

2022-11-05 | 2022映画評
下記の文章は「キネマ旬報 11月下旬号」の読者の映画評に掲載されたものです。



「ブレット・トレイン」

 面白かった。心のなかでスキップをしながら映画館を出た。すでに原作は何度も読んでいる。伊坂幸太郎の殺し屋小説「マリアビートル」をブラピが主演で舞台は日本だけど英語の作品だという。再度読み返してから劇場へ。時間の都合で吹替版だったが結果としてこちらのほうがより楽しめたようだ。字幕を追いかける煩わしさがなく、画面に集中できる。アクションはめちゃくちゃだけれど流れは理解しているのでそのハチャメチャの中にすっぽり入り込んでしまい深いことは考えず楽しむことができた。
 もともと、伊坂のファンになったのが映画の「アヒルと鴨のコインロッカー」(中村義洋監督)を見て感動し原作を読んだことがきっかけだ。以来ほとんどの著作を読んでいる。その後国内で何作か彼の小説が映画化されたが、原作ファンとしてはいまひとつ盛り上がらなかった。だから今回もそれほど期待はしなかったが、頼りない殺し屋「天道虫」をあのブラピが演ずるということで彼を見ているだけでも十分もとは取れるだろうという程度でチケットを買った。
 元はとった上にかなりお釣りも来た。ブラピだけでなく、音楽も懐かしい昭和テイストで冒頭の「ステイン・アライブ」から「時には母のない子のように」「ヒーロー」など一緒に歌いながらレディバグを応援したらきっと楽しかっただろうな、と思う。
 コロナで行動を制限される日々が続き多くの人がなんらかの不満やストレス、いきどおりを感じていると思う。そんなときにはあれこれ考えず「ブレット・トレイン」に乗り込んで、降りるときには、ああ面白かった、生きていてよかった、明日も生きていこう、というパワーをもらおう。そういうときのために映画館はある。きっと。
 ところで、コロナが落ち着いたら「一緒に歌ってレディバグを応援しよう!」という応援上映を是非どこかの映画館で企画してください。楽しみにしています。


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