あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

野坂昭如著「火垂るの墓」を読んだり、日向寺太郎監督の「火垂るの墓」をみたり

2018-05-17 13:12:57 | Weblog


照る日曇る日 第1066回&闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.1342



野坂の原作は、句点を省略して読点を多用した新発明の文体が、煩わしくて今なお読みづらい。

著者の告白によれば、(義理の)妹を手厚く介護しないままで死なせてすまった供養が、本書の執筆の動機だというから、ある種の照れが、いわば副産物としてのこういう西鶴もどきの奇妙な文体をうみだしたのだろう。

原作では、いきなり主人公の死が読者に伝えられるが、さすがに映画では時系列から追う形になる。蛍が印象的だが、原作では「平家蛍」と書いてあるから、いくらなんでもあんなに巨大な光芒を放つはずがないが、次々に作られていく蛍の墓の隣の妹の土饅頭が悲しい。

映画では、悪役を演じる松坂慶子が好演。こういうおばさんは、今度の戦争でも仰山登場するに違いないが、その戦争を防止するための手立てとしては、この種の悲劇映画はもう無効になってきている。

なお単行本「火垂るの墓」には、表題作のほかに「アメリカひじき」「焼土層」「死児を育てる」「ラ・クンパルシータ」「プアボーイ」が収められているが、後の作品ほど出来栄えは優れている。

    死病とてライフル銃で心臓を2度撃ち貫きて死せる人あり 蝶人
コメント
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