蝶人物見遊山記第283回&鎌倉ちょっと不思議な物語第401回
高橋源一郎選手の協力による本展は、彼の「日本文学盛衰史」に拠りつつ、北村透谷、国木田独歩、石川啄木、二葉亭四迷、樋口一葉、夏目漱石、森鴎外、田山花袋、島崎藤村などの明治時代の作家の業績をたどり、彼らの作品を紹介している。
花袋が「蒲団」のモデルにした女弟子に宛てた謝罪の手紙は面白かったが、一葉の毛筆で書かれた原稿や、啄木最晩年の丁寧にデザインされた手作りの詩集原稿をはじめて目の当たりにして、うたた感慨に堪えなかった。
しかし明治という新時代の文芸を主導した文学者たちの生涯の、なんという短さよ!
鴎外60歳、藤村71歳などはまあ仕方がないとして、一葉24歳、透谷25歳、啄木26歳と死んだ天才の年を数えてくると、子規34歳、独歩36歳、亭四迷45歳、漱石49歳という、今なら夭折とも称すべき没年が、かなり長い生涯であったような錯覚さえ覚えてくる。
私(たち)の馬齢はさておいて、一葉、啄木など、あと数年の余命ありせばと非情な天を恨みたくもなるのである。
毎度お馴染みの「鎌倉文学散歩」は、本覚寺→妙本寺→八雲神社→元八幡→海岸橋までを午前中に歩き、有島武郎、国木田独歩、森鴎外、芥川龍之介、押川春浪などの事跡を偲んだ。
鎌倉は(も)、猛烈な勢いで、明治大正昭和の名建築、有名でなくとも由緒のある、それこそ「鎌倉らしい風情のある」庭付きの邸宅がどんどん消滅し、新しい、なんの変哲もない、周辺との調和を無視したのっぺらぼうの新建材の塊に取って変わられつつある。
鎌倉の光触寺橋より見下ろせば腹を見せつつ舞い踊るハヤ 蝶人