照る日曇る日 第1065回
老いてなお矍鑠、ついこないだまで藤沢で絵筆をとっておられた加古里子さんの代表作のひとつです。
だるまちゃんを題材にする絵本作者は多いけれど、なんというてもこれが元祖でしょう。
のみならず本作では、てんぐちゃんの持ち物のあれやこれや、すなわち、、を「ほしいよう、ほしいよう」とおおきなだるまどんにおねだりするという図式が、ものの見事に物語を前へ前へと推し進めることに成功しています。
だるまちゃんの要望にこたえて、だるまどんが取り揃えてあげる、うちわ、ぼうし、はきもの、はなのバリエーションはじつに見事で、懇切丁寧に描きあげられたこれらの品々には作者の幅広い民俗的な知見と、この本を手にとる幼い読者への愛情が見て取れるのです。
けっしてだるまどんの親切を無にするわけではないのですが、だるまちゃんは常にこれらの品々ではなく、自分自身であっと驚くような個性的なうちわ、ぼうし、はきものを発見します。
ここには作者によるある種の教育的配慮が働いているかも知れませんが、それが微塵も押しつけがましくないのが素晴らしいですね。
大勢のファンに惜しまれつつ今月の8日に92歳で亡くなった加古里子さん。マレーシアの首相に返り咲いたマハティールさんもおないどしですから、もう少しぐあんばってほしかったと惜しまれてなりません。
なんとなく我らも勇気づけられる92歳で首相になったマハティールさん 蝶人