あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

荒川洋治詩集「北山一八間戸」を読んで

2020-06-17 13:08:51 | Weblog
照る日曇る日第1413回


本書の「赤江川原」の冒頭は、

 川原からは髪は見えない。

ではじまり、一行あけて

 京都の北、船岡山では為義の
 七歳・天王殿
 九歳・鶴若殿
 一一歳・亀若殿
 一三歳・乙若殿
 の四人の子どもが
 切られようとしていたし、

と続く。保元の乱で崇徳上皇について敗北した源為家の4名の男児の、波多野次郎による斬首の場面だが、その続きを読まずに我慢できる人は少ないだろう。

このように詩人は、古今東西南北に跨って広く題材を捜索し、それらをあんまり深くは掘らないけれど、読者の耳目を上手に引きつけながら、おのが専売特許の磁場へと巧みに誘導する。げに端倪すべき老獪の技である。

何事がおわしますかは知らねども、事物の核はなけれど詩心の核は、ありそでウッフン、なさそでウフン、ほらほら黄色いサクランボ

とでも、歌いながら評すべきか。


  78で32番をひいておるポリーニはんのベートーヴェンはええなあ 蝶人

コメント
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