あまでうす日記

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四方田犬彦・斉藤綾子編著「映画女優 若尾文子」を読んで

2020-07-25 13:23:57 | Weblog


照る日曇る日第1433回


偉大なる俳優、若尾文子に関する2本の論文に、全フィルモグラフィー、そして興味深いインタビューのおまけまでついた初の本格的研究書なり。

「はしがき」で四方田選手がいみじくも指摘しているように、「若尾文子は日本映画がもっとも頂点に達したとき、そのまさに頂点に位置していた女優である。」
原節子でもなく、田中絹代でもなく、高峰秀子、京マチ子、山本富士子、八千草薫、乙羽信子、岡田茉莉子、岸恵子、久我美子でもなく、若尾文子なのである!

またその頂点を形成するに至った最大の功労者が、彼女と絶妙のコンビを組んで「卍」「清作の妻」「赤い天使」などの傑作をうんだ、監督増村保造の力量にあることにも異論はない。

その若尾文子が1987年の「竹取物語」、2005年の「春の雪」のチョイ役をのぞいてスクリーンから遠ざかって芝居やテレビドラマに活動の舞台を移してしまったことは、残念無念と言うほかはない。

さいわい彼女はまだ生きている。1933年生まれでげんざい86歳の彼女のスクリーンへの復帰がせつに望まれる。


黒澤の『七人の侍』みておれば宮口精二になりて薙ぎ倒す我  蝶人
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