照る日曇る日第1771回
表題作がヒットして次々に短編を手掛けるようになったのんだくれ詩人の作品集なり。
冒頭作では人の世の儚さをニルアドミラリに切って捨てていい味を出していたのに、「犬の糞を除いたら私の糞がいちばん臭い」なぞというクサイ箴言を載せている「10回の射精」あたりからヨレヨレになってくる。
「あるアンダーグラウンド新聞の誕生と死」、「慈善病院での生き死に」を経て「白いあごひげ」とか「レイモン・ヴァスケス殺し」なんかになると、余りにも話柄(だけ。文章は素晴らしい!)がおぞましいので、登場人物と一緒に、トイレでゲエゲエ吐いてしまいたくもなる。
さりながら、アンドレ・ブルトンと思しき有名仏蘭西詩人の別荘で、主人公をブルトンと勘違いした男女を相手に、もんの凄えファックシーンを繰り広げる「ジェームズ・サーバーについて話した日」は、この作家にしかモノせない痛快作だろう。
訳者の青野聡は本書の「あとがき」で、「じゃあな、チャールズ、とうぶんあんたの顔をみたくないよ」と漏らしているが、ったく同感である。
両の目の目尻の奥のその奥に固まりありて嗅げば臭し 蝶人