照る日曇る日第1775回
ゲイジュツはなんでもそうだが、詩で食べていくのは難しい。もちろん本屋さんもそう。ところがナナロク社の社長は知恵者で、谷川俊太郎の詩が、半年間封書で届くという商売を考案したそうだ。
短歌の方では枡野浩一という歌人が、発注者の名前を詠み込んだ短歌をメールで納品するという「名前短歌」という新商売を発明して儲けた?らしい。
んで、その2つを受けて2017年に木下選手が開発した「依頼者からのメールに人生相談さながらに答えるようにして返信する「あなたのための短歌1首」」からセレクトしたのが本書で、本当は契約も勘定も終わっていた私短歌が彼の印税放棄とかいろんな経緯で公刊されたんである。
まあメデタシ、メデタシ。
なんたって木下選手はテダレであるから私短歌といえどもその作品の切れ味は鋭く、例えば、「18歳から72年間詩を書き続けて90歳になった人間を面白がらせる短歌を読みたい」という谷川選手に対して、「言葉ってくすぐったいね靴下を脱いで芝生を歩くみたいに」とおめず臆せず返歌してのけるのだから、立派なものである。
それにしても、ナナロク社の村井光男選手は、もしかすると幻冬舎やら新書館やらブロンズ新社の社長より切れ者かもしれないな。
この国の1465万2612人目のコロナ感染者となりし我 蝶人