あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

鈴木志郎康著「続・鈴木志郎康詩集」を読みて、歌える

2022-08-22 13:31:26 | Weblog

 

 

照る日曇る日第1772回

 

生きる意欲が、急に減退してきたとき、

詩が、まるで書けなくなってしまったとき、

おらっちが思わず手に取る1冊、

それが、この詩集だ。

 

とりあえず、パラパラと頁をめくろう。

思潮社の現代詩文庫の121号だ。

パラ パラ パラ パラ パラ パラ

すると、こんな一節にぶつかる。

 

言葉を探せ!

ムッグゥーッ 声帯から血

舌からも血

血は口腔内に氾濫する*1

 

よりによって、この<スズキ詩>が転がり出てくるとは、驚いた。

 

じつは西暦2022年7月29日、

つまり今日のお昼前のこと、

電気コードに躓いた妻が、

床に倒れて、顔を強打したんだ。

 

彼女の顔の下から、とろーり、とろーりと流れ出て、

たちまち床に小さな人造湖をつくった、真っ赤あ赤な鮮血が

あまりにも、艶っぽく、あまりにも、美しすぎて、

おらっち、正直彼女を助け起こすのも忘れて、じいーっと見入ってたのよ。

 

言葉の前に、美を探せ!

ムッグゥーッ 顔から血

とろーり、とろーりと流れ出て、床に真っ赤な人造湖

美は、リビングルームに氾濫する。

 

ここで突然、おらっち、志郎康さんの助言を思い出す。

「書けない時は、なんでもいいから、とりあえず書いてみること。」

「短くてもいいから、なにかを書くこと。」

そうなんだ、詩は、簡潔さこそが、命なのよ。

 

爆裂する路上性交!

温順おまわり、私の絶頂する身体にさわるな

これは、温順詩人の悲愴なのだ。*1

 

そうなんだ。

悲愴でも、思想でも、歯槽でも、

まずは最初の言葉を探すことだ。

なんでもいいから、ひとつ言葉を、書いてみよ。

 

「萬犬、虚に吠ゆ」

 

そうそう、いいぞ、ワンワン、なかなかいいぞ。

 

そして、次へ行く。

何がなんでも、次へ行くんだ。

 

おや、傍から誰かが、おらっちにアドバイスしてくれているようだ。

おらっちの好きな詩人、ブコウスキー選手みたいだ。

 

 次の1行は常に待ち受けていて、

その1行こそ遂に何かを見つけだし、

遂に言いたいことを言っている1行となるかもしれないのだ。*2

 

その通りだ。

アイドルを探せ!

次の1行を探せ!

 

おらっちの、次の1行。

おらっちの、次の1歩。

おらっちの、真っ白白な未来。

 

*1 鈴木志郎康「爆裂するタイガー処女キイ子ちゃん」より

*2 チャールズ・ブコウスキー著・中川五郎訳「死をポケットに入れて」より

 

「コロナだね」と医者に言われし私は5億8541万6617人目の感染者 蝶人

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