照る日曇る日第1770回
およそ1世紀前の実在の外交官を主人公に、彼の波乱に満ちた数奇な生涯を描く、超超大河小説ずら。アイルランド生まれのロジャー・ケイスメントは英国を代表する領事としてアフリカのコンゴ、ついでブラジルに渡り、西欧資本主義国家がいかに残酷非人道的に植民地に生きる原住民たちを搾取し、生殺与奪の暴力を駆使しているかを世界に暴きだして、一躍英雄となる。
しかしその非人間的な支配・被支配の搾取構造は、彼が禄をはむ英国と、彼の母国愛蘭にも相通じていることを知り、我らがヒーローは欲も得も投げ捨て、敵国ドイツからの軍事支援を企図して乾坤一擲のギャンブルに打って出るのだが、大小説のラストにふさわしい死刑台へとおもむろに足を運ぶのであったあ。
男色を記した有名な「ブラックダイアリー」を含め、汗牛充棟の資料を鮮やかに駆使し、膨大なエネルギーと時間をおしみなく投入して紡がれた500頁を越える老ノーベル賞作家の大著であるが、今時なんでまたこのような大きな物語を綴りたくなったのか、おらっちにはいまいちよく分からない文芸大作ではあったあ。
あるものがこわれてしまうとまた別のものが次々こわれていくような 蝶人