蝶人物見遊山記第381回
「二人の先達―夏目漱石、菅虎雄」という副題が付けられているが、これは本来は神奈川近代文学館か、現在工事で休館中の鎌倉文学館でやるべき展覧会であろう。
メインは芥川で、かれが短い生涯に見聞きした美術作品を石井柏亭、藤島武二、梅原龍三郎、坂本繁次郎、岸田劉生、安井曾太郎、浅井忠、村山槐多、関根正三からビアズリー、ブレイク、レンブラント、ゴヤ、カンディンスキ、ロダン、ルドンに至るまで細大漏らさず取り上げ、見物の眼に晒しているが、この点はカナキンらしさを存分に発揮していると評価できよう。
今回私が一番驚いたのは、芥川龍之介の著作の小穴隆一の装丁の素晴らしさ。わけても、2人のうちのどちらが書いたのか知らないが、1923年に春陽堂から出版された「春服」の単純素朴で大胆不敵な題字は、隆一宛の長い遺書共々感動的だった。
おもむろに遠藤次郎氏の霊が乗り移る遠藤次郎氏の帽子を被れば 蝶人