ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

加納 秀人 @愛知県小牧市・The SCRATCH

2023年07月24日 | ライヴ(日本公演)

加納 秀人 (7月23日・愛知県小牧市・The SCRATCH)

外道の加納秀人がソロ・ライヴを演ると知ったのはライヴ直前のこと。この地方で近い所では今池と小牧市。最近ライヴ盤を買ってずっと聴いていたので、是非生でレジェンドを観てみたいと駆けつけることに。日程が日曜だった小牧へ行くことにしたのだが、今まで小牧にライヴ・ハウスがあるなんて知らなかった。場所は倉庫が建ち並ぶ場所にある「The SCRATCH(スクラッチ)」(写真下左)。調べてもあまりインフォが無かったので車で行くことに。

 

倉庫を改造したと思しき会場の2階へ。大手プレイガイドでの発売なしとあってか客入りはちょっと心配になるぐらい少ない。キャパは椅子で40人くらいだろうか。結局自分を入れて10人強という寂しさ。日本のロック史に名を残すレジェンドなのに…。車なので酒も呑めず、バーカウンターでノンアルを貰い喉の渇きを癒やす。前座は「BLAKK」というブルーズ・バンド。

そしてあの加納秀人があっさりと登場。今回のライヴは「外道50周年&加納秀人音楽活動55周年記念」と銘打ってのライヴ・ツアー。テンガロン・ハットでラフな出で立ちの加納は70を超えているとは思えない若さ。バンドは連れてきていないのでベース、ドラムス、サイド・ギターの音はオケだが、加納のギターから発せられる音色の色気と迫力たるや。うへぇ、カッコイイ…。MCを挟み、ヴォーカル曲、スライド演奏も交えて演奏されていく楽曲は、ハードロック、ロックンロール、ブルーズ、フュージョン、ポップスと多彩。本人も「ジャンルなんて無いんだよね。」と仰っていたが、タイプの違う曲であってもそこに加納のギターが乗るとちゃんとその色に染まるのはさすが。上手くは説明できないが説得力が違う。1人でもここまで凄いとは。

またほのぼのとしたMCが面白い。遠藤賢司、アントニオ猪木、ミッキー・カーチス、内田裕也、ハワイでのライヴ、史上初の寺でのライヴなど、生き字引の最古参ロッカーならではの面白い話がポンポンと出てくる。

ソロ・ライヴ終了後は前座のメンバーや飛び入りを含むジャム・セッション。いや、これ客席より演奏者の方が多いから(苦笑)。腕に覚えのある参加者に余裕綽々でハイ、どうぞとソロを譲る加納だが、さすがに差が歴然なのはご愛敬。思い切って駆けつけたが、こんなレジェンドをこんな近くで、こんな値段で、(こんな人数で)観られて申し訳ないくらい。これ絶対ペイ出来てないだろうが、自分としては丸儲けな気分。

 

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ボブ・ディラン @名古屋・愛知県芸術劇場・大ホール

2023年04月21日 | ライヴ(日本公演)

ボブ・ディラン (4月18日 名古屋・愛知県芸術劇場・大ホール)

栄にある愛知県芸術劇場で行われたボブ・ディラン(Bob Dylan)の来日公演、名古屋初日へ。実は日本最終公演もチケットを買っていたが、都合により行けなくなり人にあげてしまったので、残念ながら観られるのはこの公演のみ。彼ほどの大物アーティストにあって来日公演は最近だけでも2014年2016年とかなりの頻度(フェス除く)。失礼ながら毎度「これで最後だろう」と思いつつチケットを買っている。にしても凄過ぎないか? もうすぐ82歳だぞ。富も名声も十二分に得ながらこの活動意欲。80年代の終わりから通称「Never Ending Tour」と呼ばれるくらい間断なくツアーに明け暮れるボブ。彼を衝き動かしているのはどういう”欲”なんだろうか。

会場入りしてビックリ。スマホを開封不可の特殊な袋に入れさせられ、双眼鏡の類もNG。アーティスト側の意向だそう。徹底したい気持ちは分かるが、自分は夜でも仕事の電話が入るし、妻からの緊急連絡がある可能性もあるので、会場入りしてしまうと確認出来ず、ヒヤヒヤしてしまった。席は14列目なので見やすいが、この日は3、4階席には客を入れていなかった模様。ま、名古屋で3日間だもの、そんなに入らないわな。客層はもちろん中高年の年齢層が占めている。

定刻を少し過ぎてクラシックが鳴り響き、ボブとメンバーがステージへ。相変わらず素っ気ないセットで、真ん中のピアノにボブが座り、メンバーは彼を囲むように位置を取って演奏中もずっとボブの方を向いて凝視している。これでも東京と比べて暗めだそうだが客席側にライトが当たっているし、ボブへのスポットライトも無いので暗くて表情が全然分からない。いつも使う単眼鏡くらい許してほしかったな。曲は相変わらずボブの崩したアレンジなので、有名曲でも歌い始めて歌詞を聴いて初めて「あぁ、あの曲か」と分かるのはこれまでのツアーと同じ。

にしてもボブのヴォーカルが凄い。本当に80を超えているとは思えない張りがあって圧倒される。素晴らしい歌声! 前回の来日は7年も前だが、その時よりもいいかも。恐るべし。一昨年発売されたアルバム「Rough And Rowdy Ways」が中心なので、さすがにそこに収録された曲は現在進行形のボブによく合っていて、古い曲ももその雰囲気にアレンジされている。というか今のボブが歌いたいように歌うとこうなるという感じ。ボブはピアノを弾きながら、概ね立ち上がって歌うのだが、立ってピアノ弾きつつ歌うってやりづらくないのかな。ピアノに隠れてしまって弾いている手元は全く見えないのだが、かなり強いタッチで鍵盤を叩いていて、荒っぽいし時々外すこともあるが、これがカッコイイ。この日のセットリストには曲順以外概ね他の公演と変わらないが、ツアーを通じて入れているデッド(Grateful Dead)のこの日のカヴァーは「Brokedown Palace」だった(15日は「Not Fade Away」を演ったとか!)。

※この公演の翌日19日にも演ったそうです…(涙)

かつての名曲2曲ではハーモニカも披露。かっこいいからもっと吹いて欲しかったナ。最後のメンバー紹介の他は、3、4回「Thank You!」と言ったくらいで特にMCは無し。アンコールも無しだったが、2時間近く強く歌い上げたボブに感動した。最終公演も行きたかった…。このツアーには珍しくツアータイトルに”World Wide Tour 2021-2024”と終了年の記載がある。これってもしかして…。

 

<Setlist>

Watching the River Flow
Most Likely You Go Your Way and I'll Go Mine
I Contain Multitudes
False Prophet
When I Paint My Masterpiece
Black Rider
My Own Version of You
I'll Be Your Baby Tonight
Crossing the Rubicon
To Be Alone With You
Key West (Philosopher Pirate)
Gotta Serve Somebody
I've Made Up My Mind to Give Myself to You
That Old Black Magic (Johnny Mercer cover)
Mother of Muses
Brokedown Palace (Grateful Dead cover)
Goodbye Jimmy Reed
Every Grain of Sand

 

 

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スティング @名古屋・日本ガイシホール

2023年03月15日 | ライヴ(日本公演)

スティング (3月14日 名古屋・日本ガイシホール)

日本ガイシホールでのスティング(Sting)の来日公演最終日に急遽参戦。実は来日することは事前に全然知らなくて、コロナ第8波も下火になったことだし、アーティストの来日スケジュールは増えてくるのかなとチェックしていて初めて知った次第。自分は2008年のポリス(The Police)の東京ドームでの再結成コンサートは逃しているので、是非ともと遅ればせながらチケットを入手した。

長兄が持っていたポリスのファーストとセカンド・アルバムを聴いてからだから、もう40年以上もスティングのヴォーカルを聴いていることになる。それ以降のアルバムは自分で買った。とはいってもポリス以後はファースト・ソロ・アルバムとライヴ盤、コンピ盤を買ったぐらいで熱心なファンとは言えないけれど。一時ちょっとお洒落になり過ぎた感もあったけれど、そのハスキーで特徴的なヴォーカルはやはり唯一無二。最近はシャギー(Shaggy)とコラボしたりもして創作意欲は衰えていないようだ。

時間に余裕があったので近くで一杯やってから会場入り。会場内はスタンド席の一番上の方こそ空席が目立つが、アリーナやスタンド下部まではおおむね満席。自分の席はたった2週間前に慌てて入手した割には、ほぼ横から観る形にはなるもののステージは近くて見やすいし、満足。まずは息子のジョー・サムナー(Joe Sumner)が前座で登場してギター1本で歌を聴かせる。ガタイはデカいがさすが親父そっくりで血の濃さが伺える。声もよく似ているのはあの特徴的な顎の形を引き継いでいるからだろう。信じられないが、自分の隣の席の客なんてこれがスティング本人と疑わず、連れと「さすが、かっこいいねー。」なんて言ってはしゃいでいる(←いやスクリーンもあるんだからさすがにすぐ分かるだろ・苦笑)。にしてもこのジョー、バンドが無いからかあまりにもストレートで普通の曲(失礼)ばかりで驚いた。異母妹はちょっと尖っているのにね。声域も広く、歌唱自体はひょっとしてスティングより旨いかもしれないが、ちょっと”真っ当”過ぎるかも…。

ジョーがたっぷり30分ステージをこなした後に御大登場。歳はとったが(71歳)スリムで腹も出ていないしかっこいい。ポリス時代の名曲からステージが始まるが、もともとハスキーな声だしキーを落としても最初はちょっと声がきつそう。それでもステージが進むにつれてどんどん良くなるのはさすが。バンドの面々は皆スティングにとっては孫世代になるのかな。全員若いが実力は折り紙付き。特にハーモニカ・プレイヤーの演奏は印象に残った。にしてもバンドはキーボードとコーラスを除けば実質3ピースで、ポリス時代を踏襲しているのが興味深い。スティングはもちろんベースも演奏しているが、そういう趣向なのかベースの音の解像度が低く、歪んで演奏が聴き取り辛いのは何なんだろう(席の位置の関係かも)。

中盤はソロ作品が並ぶ。当たり前だがやはりソロ期の曲の方が今の喉にはしっくりくるようでパフォーマンスも素晴らしかった。レゲエ、ジャズ、スパニッシュ・ギター、アラビックなど色々な音楽性の曲とスティングの声の相性も相変わらずいい。手拍子を誘う場面が多いのはまるで昔の外タレのコンサートを見るようだ(昔はみんなずっと手拍子していて鬱陶しかった)。後半はポリス時代の曲を若干アレンジとキーを変えて披露。ガキの頃から聴き続けた曲をとうとう本人の歌唱で聴けて感慨無量。特にリアル・タイムで自分でアルバムを買った「Synchronicity」期の曲は生で聴けて嬉しいナ。最後は静かな「Fragile」。演奏前にスティングが「最後はクワイエットな曲で…。」と言ったら客席から「Next To You!!」(←ポリス初期のパンキッシュな曲)と声がかかってスティングが大受けしていたのが面白かった。

 

<Setlist>

Message in a Bottle
Englishman in New York
Every Little Thing She Does Is Magic
If It's Love
Loving You
Rushing Water
If I Ever Lose My Faith in You
Fields of Gold
Brand New Day
Shape of My Heart
Heavy Cloud No Rain
Seven Days
Mad About You
What Could Have Been
Wrapped Around Your Finger
Walking on the Moon
So Lonely
Desert Rose
King of Pain
Every Breath You Take

(Encore)

Roxanne
Fragile

 

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プライマル・スクリーム @名古屋・ダイアモンド・ホール

2022年08月21日 | ライヴ(日本公演)

プライマル・スクリーム (8月18日 名古屋・ダイアモンド・ホール)

サマー・ソニック 2022で来日するプライマル・スクリーム(Primal Scream)がフェス出演前に名古屋と大阪で単独公演をすることになった。もうフェスで1日過ごすパワーは無いし、好きでもないバンドを見続けるほどヒマじゃない。単独公演に願ったり叶ったりで参戦。にしても、もうプライマル・スクリームでもヘッドライナーじゃないんだな…。会場は新栄のダイヤモンド・ホール。スタンディングだがオッサンなので前には行かず、1段上がった最前列を確保。コロナ対策(意味ないと思うけれど)で1人立つ分のスペースはフロアーに四角くバミってあり整然と並ぶようになっている。これがなかなか快適。これのおかげか阿保みたいに暴れまくる奴は居ないし、隣の肩が触れあうこともない。これずっと採用してくれないかな。今回の公演は「Screamadelica Live」と銘打ってある。もちろん1991年のあの名盤「Screamadelica」の全曲再現演奏。もう30年も前のアルバムなので客層もやや高く、腹の出た人も目立つ(笑)。20周年の時に大々的に同趣向のライヴが行われたが、日本では演ったんだっけか(調べても来日履歴が出てこないが、前回の来日は6年前だそう)。

アルバム・ジャケットをデザインしたド派手なスーツに、相変わらず仏頂面のボビー(Bobby Gillespie)のアカペラからライヴがスタート。昔からヘナヘナで線が細いヴォーカルだが、こうして彼が40年近くのキャリアを積むとは当時正直思えなかった。様々な音楽スタイルに臆せず変化し続けたから生き残れたんだろう。音域によってはつらそうだが、それを黒人女性バックアップ・ヴォーカルがサポート…あれ? 姿が無いゾ。うーん録音か…。このアルバムを再現するのには絶対コーラスが必要だが、さすがにステージに姿が無いヴォーカルが流れるのは違和感がある。今では機材の発達で再現出来てしまうのだろうが、ステージに揃っている面子なりの演奏でもいいのになァ。ベースを担当する紅一点、シモーヌ・バトラー(Simone Butler)は初めて観た。堅実な演奏で目立った動きや特徴あるプレイがある訳ではないが華があっていい。ハウス、レイヴ真っ盛りスタイルのダンサブルなドラムスに、アンドリュー・イネス(Andrew Innes)のワウワウ・ギターが”ワカチコワカチコ”と加わると、意識は一気にあの時代へ飛んで行く。

セット・リストでは、大好きなアルバム未収録の「Screamadelica」も演ってくれた。これがライヴで聴けるとは。満員の観客は要請でみなマスクこそしているがしっかりと盛り上がっている。「3密」ってなんでしたっけ?(笑)。曲順こそアルバムとは違うが、一度ステージから捌けた後の「Loaded」でアルバム・パートは終わり、ここからは代表曲の4連発。自分の脳内ヒットチャート上位の「Swastika Eyes」と「Country Girl」がライヴで聴けたのは嬉しかった。

<Setlist>

Movin' On Up
Slip Inside This House
Don't Fight It, Feel It
Come Together
Inner Flight
Screamadelica
Damaged
I'm Comin' Down
Higher Than the Sun
Shine Like Stars

encore

Loaded
Swastika Eyes
Jailbird
Country Girl
Rocks

 

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スティック・メン @大阪・ビルボードライブ大阪

2022年07月18日 | ライヴ(日本公演)

スティック・メン (7月14日・大阪・ビルボードライブ大阪)

今頃になってハマったキング・クリムゾン(King Crimson)。実はオリジナル・アルバム全部はもちろん、ライヴ盤、編集盤、そしてオフィシャル・コレクターズ盤の多くはもう既にコレクト済み。初めて体験した昨年の来日公演も大満足だったが、とうとうスピン・オフともいえるプロジェクト、スティック・メン(Stick Men)の来日公演の為に大阪まで足を運ぶことに。ライヴで大阪まで行くのは2008年のザ・フー(The Who)以来だから14年ぶりになる。予約を手配したのはコロナ禍の第6波が終息しつつあった頃。それがどうだ、ライヴが近づくにつれ感染者の数は飛躍的に増大し、とうとう第7波真っ只中。でも、もうつきあっていくしかない。どのみち1人行脚なので、予約した近鉄の特急列車「ひのとり」のプレミアム車両のラグジュアリーなシートに包まれつつ、大阪難波入り。公演は2回。セカンド・セットを予約したので開演は21時と遅い。梅田へ移動し「Billboard Live Osaka」へ。もうそれまでにしこたま酒が入ったが(笑)、ちょうど覚めていく頃合いに商業施設の中にある小さなハコのテーブル席に着いた。ドリンクもフードもパスして開演を待つ。

ステージまで約6mという至近距離。しばらくしてメンバーが観客席の間からのんびりと登場。配置に着いて演奏が始まる。音のキレが素晴らしい。トニー・レヴィン(Tony Levin)はチャップマン・スティック、マーカス・ロイター(Markus Reuter)もU8 と呼ばれる8弦のタッチ・ギター、そしてドラムスのパット・マステロット(Pat Mastelotto)という特殊なトリオ布陣。どちらのギターもピックを全く使わないタッピングのみという珍しいカタチ。まぁ、こいつらが凄い凄い。3人ともバカテクだとは知っていたが、中でも初めて観たマーカスは一番若いが飄々としていて、無表情のままタッチ・ギターのフレットを両手10指が自由自在に動き回る。演奏中もフレットに全然目をやらず、目を瞑ってでも出来ると言わんばかりに指を動かしたまま会場を見渡し、ギター・パート、ベース・パートがトニーと目まぐるしく入れ替わる難易度の高い複雑な展開の曲をまるでサイボーグのようにこなしている。どうなってるんだコイツは? 彼の演奏を観ていると、感情を露わにしてしてジャララーンとギターをかき鳴らすキース・リチャーズ(Keith Richards)らを我々が崇めて呼称する”ギター・ヒーロー”とは何かを考えさせられてしまう…。ドラムスのパットはバンマス的な役割も。もちろん彼のドラムスは変拍子も自由自在で、どうやったらこの複雑な曲のリズムをキープして、さらに展開させていくのか理解不能。演奏途中で破綻とかしないのかな。ハードなスネアのヒットで音圧も強い。あのトニーが一番地味に見えてしまうが、もちろん彼のスティックはそもそも神業。クリムゾンのライヴでは両脚をバッと広げて演奏する姿がかっこよかったが、今回もラフな格好ではあったが、超絶演奏と対極にあるような人の好さがにじみ出ていて素敵だった。MCでパットが言っていたように、彼らはいわゆる”ロック”とは全然違う方法論によって成り立っているようだが、ちゃんと古いタイプのカタルシスも内包しているので自分のような”ロック脳”でも十分に楽しめる。

演奏はキング・クリムゾンの代表曲「Red」「The Sheltering Sky」「Level Five」「Larks' Tongues In Aspic Part Two」や、ロバート・フリップ(Robert Fripp)のソロ曲「Breathless」を交えながら、彼らの最新のEP「Tentacles」(公式なネット・ダウンロードで入手済・ジャケ写真下1枚目)からの曲も演奏された。4月だったかのカナダ公演と大差ないセット・リストだったので自分は予習もばっちりで、最初から最後まで物凄い音圧と演奏の妙技に聞き惚れた。これを一晩で2セット演るとは恐るべし…。わざわざ大阪まで行って良かったァ。

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キング・クリムゾン @名古屋市公会堂・大ホール

2021年12月02日 | ライヴ(日本公演)

キング・クリムゾン (11月30日 名古屋・名古屋市公会堂・大ホール)

自分はロック全般が好きだが、いわゆるプログレのバンドとの相性は良くなく、キング・クリムゾンも若い頃にかの名盤「21世紀の精神異常者」〔原邦題ママ〕をダビングしたテープを持っている程度。もちろんいくつかの曲は聴いていたが、オリジナル・アルバムを集めるほどには至らなかった。たしか2015年に来日した際の音源がネットで発表されたことがあって、それを興味本位でダウンロードし聴いてみた。あれ?、自分の中のイメージと違って結構イケる。それからベスト盤や、重要なオリジナル・アルバム(未レヴュー)やロバート・フリップ(Robert Fripp)のソロ作を何枚か購入するようになった。ただしライヴを含めると発表されている音源は膨大で、とてもついていけない。そして世界中がパンデミックになってからロバートと妻のトーヤ(Toyah)がYou Tubeで始めた「TOYAH & ROBERT'S SUNDAY LUNCH」を観てビックリ。過去のインタビューでは、堅物で、頑固で、取りつく島もない、という感じのロバート・フリップが、こんなにお茶目な爺さんになっていたとは…(しかもあのギターの名手がとんでもない音痴・笑)。

来日公演が発表された。コロナ禍(第5波)の真っ最中だった為、本当に実現するのか怪しかったが、チケットを買ってみることに。ただ高い価格設定でも席は選べず、発券する時に分かるという不親切な販売。下のランクのS席(⇔SS席)でも¥16,000だったが2階席が割り当てられたようだ。ま、いい席は自分のような”にわか”じゃなくて真のクリムゾン・ファンが座ればいい。会場は名古屋市公会堂(写真下)。闇夜に浮かび上がる昭和5年(1930)建造の登録有形文化財。キング・クリムゾンのコンサートにこんなに雰囲気が合う会場は日本でもなかなかないと思う。大規模改修されてから大ホールに入るのは初めて。昔からこの会場は音もいいし、見やすいので2階席でも全く問題ないだろう。

 

 

公演の直前にコロナ変異株による入国禁止措置があったので、もう少し遅かったら公演中止になっていただろう(メンバーは来日して1週間、隔離でホテルに缶詰めにされていたようだ)。会場に入るとさすがに年齢層が高い。チケットも高いし、もう洋楽を支えているのはオッサン(自分含む)やオバサンばかりなのだ。2階席は両サイドにほとんど客が居ない。入れていないのか埋まらないのか。会場に流れる音楽はまるで環境音楽のようなメローな音楽(オリジナル曲とは知らなかったが、もちろんこれも”込み”だろう)。通常のロック・コンサートとは雰囲気が違う。ステージ前方にドラムスが3セット並ぶ特異な配置。ロバートによるちょっと間抜けなアナウンスが流れ、あっさりメンバーが登場。BGMに重なるように演奏が始まる。まずは3人のドラマーによる共演。フリーフォームなようでいてしっかりと構築されているが、プリミティヴな音色の連打。凄い演奏だ。そして満を持して「Larks' Tongues In Aspic Part I(邦題:太陽と戦慄)」(←自分は後追いなので邦題と原題が一致していない)の鋭いギターリフが。物凄い音圧。そして各パートの恐ろしい程のテクニック!みなぎる緊張感。つい、キース(Keith Richards)だったら最初の1分ででギターぶん投げるだろうナといらない想像が頭をよぎる(笑)。

コロナ禍で大声での声援が制限されている為、客席からは拍手の反応のみ。すぐに静謐に戻る為、まるでクラシックのコンサートのようだが熱量は凄い。1階席はどうだったか知らないが、曲毎にスタンディング・オベーションしたいところ。自分はロバート以外はトニー・レヴィン(Tony Levin)ぐらいしか名前を知らなかったが、各自とんでもない力量だ。メンバーにどれだけフリーフォームが許されているのか知らないが、1音でも外せない高度な演奏バトル。変拍子も多いクリムゾンの曲が完全に、そしてブーストしてステージ上で再現されていく。恐ろしいおじさん(お爺さん)達。ブルーズを起源とするようなロックとは全く違う文脈のロック。"Progressive"というのを進歩的、革新的と訳すなら、これこそがプログレッシヴなロックだ。

15分の休憩を挟んで後半も全く演奏の熱量は落ちず。どんなライヴでも2時間演奏があるとダレる所があるものだが、ディープなファンでない自分でもそういう瞬間が全く無い。ステージ上はギミックが無く、照明も最後「Starless」で赤いライト(深紅=クリムゾン)が使われた程度。そういうのを必要としないんだろう。アンコールはあの「21世紀の精神異常者」で締め。いいものを観た。公会堂の音は想像通り良かった。久しぶりだったが、やっぱりライヴの生音はいいなァ。メンバーの発言を見ていると、年齢もあってどうもこれが最後の日本公演となるようだ。もし仕事が何とかなったら大阪と残りの東京公演のどれかも行きたいがちょっと無理。オリジナル・アルバム、集めるなよ、集めるなよ…(←ダチョウ倶楽部)。

※1枚目の写真は公演終了後の写真撮影タイム時のもの

 

Set 1

Devil Dogs of Tessellation Row
Larks' Tongues in Aspic, Part One
Peace: An End
Pictures of a City
The Court of the Crimson King
Red
One More Red Nightmare
Moonchild
Tony's Cadenza
Discipline
Indiscipline

Set 2

Drumzilla
Epitaph
The ConstruKction of Light
Neurotica
Radical Action II
Level Five
Starless

Encore

21st Century Schizoid Man

 

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キッス @名古屋・ドルフィンズ・アリーナ(愛知県体育館)

2019年12月20日 | ライヴ(日本公演)

キッス (12月19日 名古屋・ドルフィンズ・アリーナ<愛知県体育館>)

キッス(Kiss)が最終ツアー「End Of The Road World Tour」を行ってライヴ活動に終止符を打つと発表されたのは随分前のこと(すぐ復活しそうな気がするが・笑)。すでにアメリカ、カナダ、ヨーロッパ各国を回って、ついに日本へ(直前のオセアニアは中止)。前回の来日公演ではいい席が取れたが、その後チケット事情は転売目的の業者を排除するために厳しくなり、オークション等では玉数が激減。チケット入手もハコの大きい東京、大阪のドーム公演は問題ないだろうが、何と言っても愛知県体育館(昭和39年・1964・建造)はハコが小さいので(※7,000人程度)出来ればそこで観たい。最近の名古屋の洋楽ライヴ事情は完全氷河期。大物は素通りし、中堅だって寄り付かないヒドイ有り様。ったくプロモーターは何をやっているのか…(改修によるホール不足もあるらしいが…)。チケットの正規取得を目指すも、あっさりと先行予約に外れ、販売当日もネットはずっとフリーズしたまま…。ログイン出来たと思ったら、あっという間に売り切れ完売になってしまった。ただ、未練がましく販売終了後もアクセスしていると、接続後のキャンセルがあるのかなぜか一瞬だけ購入画面に再進入出来そうに。めげずに続けているとポロッとA席が1つだけ購入可になったのですかさずポチッと。…めでたく滑り込みギリギリセーフ。

もうこの情報洪水の中、セットリスト情報を遮断することは無理なので、しっかりと演奏曲を把握して公演日を待つ。日本最終公演が名古屋となるが、調べてみると1977年の初来日公演でもこの愛知県体育館を利用したようだ。40年以上の月日。相変わらず物販は無視して会場入り。

久しぶりにこの会場に入るが相変わらず天井が低く、まさに体育館。この会場もそろそろ増床新築移転の話があるようだ。そんなハコで世界有数のスーパー・ロック・バンドを観ることが出来るのだから幸せだ。しっかりと確かめもせず購入した自分の席は…、ほぼ正面ではあるが、ワイヤーでステージが真っ二つに(涙)。前回とのギャップがあまりにも激しいが、ま、取れただけ良しとしよう。自分は開演前のSEが(気分が盛り上がるので)すごく好きなのだが、時代の流れか動画付きの商業宣伝がその音楽を断絶する。しかもギリギリの時間までやるのだから腹立たしい。せめて30分前からは音楽のみにして欲しいものだ。

定刻より少し前にお約束ツェッペリン(Led Zeppelin)の「Rock And Roll」が流れ、一気にライヴ・モードに。曲の終わりを待たず「Alright, Nagoya! You wanted the best! …」の恒例アナウンスが入り、ドッカーンッとパイロ爆発してスタート。1から10まで全部お約束通りだが、1から10まで全部楽しい。 心なしかポール(Paul Stanley)の声がガサついているようだが、ともかくポールの体調が回復し、日本公演がこうして成功に終わって良かった。

ショーマン・シップの塊、ジーン・シモンズ(Gene Simmons)のベロ出しカメラ目線がこれでもかと。バックドロップの映像があまりにも鮮明な為、ついそちらに目がいってしまう。上から見下ろしているのでステージ上部に設置してあるスクリーンが目に入らず、派手さが減衰しているのも…(これはアリーナ前方の特権だ)。こうしてみるとトミー・セイヤー(Tommy Thayer)って優秀なギタリストだなァ。やるべくことをキッチリ出来る技量(顔はジョー・ペリーがメイクしたようにしか見えないが・笑)。元々ファンとしてコピー・バンドで演奏し、ジーン及びバンドの雑用係を経てツアー・マネージャーに。そして正式にギタリストとしてメンバーになるんだから、これをアメリカン・ドリームと言わずして何と言おう。それと前回のツアーの時はどうだったか忘れてしまったが、エリック・シンガー(Eric Singer)の歌が上手いのに驚いた。中盤にはポールがクレーンを使って第2ステージへ空中移動。2階席の自分達の目の前に。あぁ、ここでも視界に入るワイヤーが恨めしい…。

そして終盤。客の年齢層は高いので、これで本当に終わりなのかという感慨というか寂しさが、自分の周囲の年配の観客に拡がっている感じがする(自分の隣の女性はどう見たって60代後半だ)。自分のような遅れてきたファンでもロックが好きである以上、若い頃からキッスは常に目にしていた。昔のメンバーの映像もヴィジョンに映るのだが、メイクをして、それこそ時代を超越した”アイコン”としての存在になっているので、あまり年をとったという感じがしない。それでもジーンがインタヴューで答えていたように、70歳を過ぎてあのへヴィーな衣装を着て2時間ショーをするのは並大抵な事ではない。自分達の終わりは自分達の手でコントロールしようとしているのはかっこいいこと。パフォーマンスは相変わらず素晴らしく、相も変わらずド派手で楽しいロックンロール・ショーなのだった。そしてオーラス、大量の紙吹雪とスモークが舞い上がり「Rock And Roll All Nite」で大団円。「End Of The Road World Tour」はまだまだ続くが、日本での公演はこれで見納め。素晴らしい2時間だった。

 

 

 

 

01. Detroit Rock City
02. Shout It Out Loud
03. Deuce
04. Say Yeah
05. I Love It Loud
06. Heaven’s on Fire
07. War Machine
08. Lick It Up
09. Calling Dr. Love
10. 100,000 Years
11. Cold Gin
12. God of Thunder
13. Psycho Circus
14. Let Me Go, Rock n Roll
15. SUKIYAKI
16. Love Gun
17. I Was Made for Lovin You
18. Do You Love Me
18. Black Diamond

<Encore>
19. Beth
20. Crazy Crazy Nights
21. Rock and Roll All Nite

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テデスキ・トラックス・バンド @名古屋・Zepp Nagoya

2019年06月14日 | ライヴ(日本公演)

テデスキ・トラックス・バンド (6月12日 名古屋・Zepp Nagoya)

相変わらず”名古屋とばし”甚だしく、観たい聴きたいアーティストにはなかなか名古屋に寄ってもらえず。今回は2014年、2016年に続いて3回目のテデスキ・トラックス・バンド(Tedeschi Trucks Band)の名古屋公演。ダイヤモンドホール、市公会堂ときて今回は笹島のZepp Nagoyaにて。笹島(ささしまライブ駅)周辺は開発著しく、中京テレビや愛知大学キャンパス、ストリングスホテルなどが出来たので”新都市”みたくなってきた。それに伴った商業施設も出来ているが平日夕方とはいえどこもちょっと寂しい客入り。もとより自分はこういう施設で飲食することはほとんど無いが、上手くやっていけるのだろうか。

 

それはさておき会場入り。年齢層が高いのはいつものこと。大きくない会場とあってほぼ満席の入り。通常はスタンディングが多い会場だが指定席なのでパイプ椅子が並べられている。適当に取った席はステージ正面で悪くない席。銭湯に入ってからさんざ歩いてきたので有難い(笑)。シンプルなステージに和やかな雰囲気でメンバーが登場するも、デレク(Derek Trucks)のギブソンSGが鳴ると、その神々しい音が響き渡り、空気が変わる。元々ハスキーなスーザン(Susan Tedeschi)のヴォーカルは伸びもあってこれまたとてもイイ。と、ここまで書いて前回来日時とほとんど同じ記述だと気付く(笑)。ニューアルバムからの演奏曲が多くないのまで同じ。今回のカヴァー曲はドミノス(Derek & The Dominos)の「Keep On Growing」、ローランド・カーク(Roland Kirk)の「Volunteered Slavery」、先頃亡くなったドクター・ジョン(Dr. John)の「I Walk On Guided Splinters」など。相変わらずカヴァーが半分を占めている。

相変わらずの大所帯(12人)だが、キーボードとフルートを担当していたコフィ(Kofi Burbridge)が2月に急逝したので、新しいメンバーゲイブ・ディクソン(Gabe Dixon)が担当。ハモンドの音に迫力があり、ヴォーカルを担当する曲もあって大活躍だった。デレクは相変わらず愛想無しの地味な態度で、ほぼ横を向いたりスーザンの後ろに隠れがちなので、世界最高峰のブルース・ギタリストの手元を見たい観客にはフラストレーションが溜まる。しかしそこはバンマス、各自のソロやバンドの進行は全て彼の合図(アイコンタクト)で行われているのだった。スーザンのギターも本当に素晴らしいのだが、いかんせん現役ナンバーワンと評される夫のプレイの後では可哀想。それでも膝上15cmのダサいワンピース(笑・失礼)の彼女からは相変わらずガッツ溢れるプレイが聴ける。世界一エレクトリック・ギターの上手い夫婦で間違いないだろうナ。バンドの特徴のひとつ、ツインドラムではプログレッシヴなプレイもある新機軸。正直3回目ともなると退屈するかなと思っていたが、高い演奏力でしっかりと楽しめた。開演前のSEでJB(James Brown)がかかっていたけれど、ラッパ隊も重要な役目を持つこのバンドがファンキーな方向に振った演奏を聴いてみたい気がする。

<Setlist>

  1.  Signs, High Times
  2.  Do I Look Worried
  3.  I'm Gonna Be There
  4.  When Will I Begin
  5.  Keep On Growing (Derek and the Dominos cover) 
  6.  All the World
  7.  Leaving Trunk (Sleepy John Estes cover) 
  8.  The Sky Is Crying (Elmore James cover) 
  9.  I Walk on Guilded Splinters (Dr. John cover) 
  10.  Let Me Get By
  11.  Show Me (Joe Tex cover) 

(Encore)

  1.  Don't Keep Me Wonderin' (The Allman Brothers Band cover) 
  2.  Made Up Mind

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ヴィンテージ・トラブル @名古屋・クラブクアトロ

2019年04月19日 | ライヴ(日本公演)

ヴィンテージ・トラブル (4月16日 名古屋・クラブクアトロ)

ヴィンテージ・トラブル(Vintage Trouble)が昨年に続いて来日。昨年は普通に”名古屋飛ばし”に遭ったので(笑)、名古屋には前回の2016年以来3年ぶり。名古屋パルコ8階のクラブクアトロへ。ここに足を踏み入れたのは何年振りだろう。こんなに小さいハコだったか。前回のダイヤモンドホールが1000人、こちらは500人のキャパシティー。まさかスケールダウンするとは思わなかったが、それでも満員には程遠い客入りだったので次も名古屋は飛ばされるだろう(笑)。しかしもうこんな所で演るスケールのバンドじゃないはずなんだけどなァ。

スカスカのフロアーでハイボールを呑みつつバンドの登場を待つ。客の年齢層はやはりちょっと高め。やっとフロアーが埋まり始めて定刻にバンドが登場。ヴォーカルのタイ(Ty Taylor)は少し痩せたかな。以前のように全員スーツでビシッとという衣装ではないが、相変わらずカッコイイ。意外にもいきなりスローな曲でのスタート。伸びのあるヴォーカルは変わらず素晴らしい。しかしすぐにヒートアップして小さいステージを縦横無人に走り回り、ステージからも飛び出て客席を駆け回り、まだ前半でこんな状態に(↓・イメージです)。

新しいEPの曲は予習してきたが、スローな曲が多く、少し新機軸もあり(故に「Chapter Ⅱ」という名前か)タイがトロンボーンを演奏する場面も。前回居たかどうか記憶にないが、キーボード奏者も加わって音に厚みがあった。結局EPからは4曲程演ったのかな。タイは相変わらず客に普通に英語で話しかけているが、最近の客は英語のヒアリング能力が上がっているのでコミュニケーションも問題なし。昔のライヴはMCになるとシーンとしてアーティストが「ダメだこりゃ」と苦笑する場面がよくあった。ま、彼の場合はそんなに難しい事を喋りはしないが、レスポンスさせたり、強引に一緒に歌わせてしまう力量というか熱量がある。バンドが結成されてからそろそろ10年近くになるはずだが、スタイルは変わらずといったところだろうか。にしても、タイが「”Bomb Shelter Sessions”持ってる人?」「”1 Hopeful Rd.”持ってる人?」ってって訊いていった時にあまり手が挙がらなかったのは…。オイ、みんなアルバムは買おうよ(苦笑)。

さて、今回のライヴも大満足だったかというと実はそうでもなくて…ラストに「Blues Hand Me Down」で締めた頃にはどうしても焼き直し感を感じたのも正直なところ。3年前のデジャヴ。前回のアルバムから早や4年。昨年今年とやっとEPは発売したものの、やはりその間ライヴ以外の露出が少なく、以前あった激しい勢いは落ち着いてしまった。もっとアルバムを出してガンガン攻めてくるかと思いきや寡作で、こちらのもっと聴きたい欲求もしぼみがち。すでにセカンドからそういう雰囲気だったけれど、どうせソウルフルな方向に舵を切るなら思い切ってホーン隊を入れるっていうのも手だと思うし(実際ライヴでのトロンボーンの音色は良かった)、ハードなギター・ロックとソウル・ミュージックの融合という初期の彼らの魅力は、もっともっと引っ張ってもよかったんじゃないか。フル・アルバムが無理でもライヴ・アルバムを発表していれば、クール・ダウンしてしまわずに済んだのだが…。

 

コメント (3)
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森山威男 JAZZ NIGHT 2017(山下洋輔トリオ) @岐阜県可児市・可児市文化創造センター

2017年09月18日 | ライヴ(日本公演)

森山威男 JAZZ NIGHT 2017(山下洋輔トリオ)(9月16日 岐阜県可児市・可児市文化創造センター)

往年の名ジャズ・ドラマー森山威男(たけお)氏は現在岐阜県可児市に住んでいるらしい。何でも夫人の実家が可児市内なのだとか。そんな訳でここ可児市文化創造センターで定期的にライヴ活動を行ったり、名古屋芸大の客員教授をしたりしているらしいのだが、あまりこの辺りのジャズを聴いてこなかった自分は一度も観たことがなかった。田舎にあってこの会場は、館長が招聘活動に精力的なこともあり、様々なジャンルの一流アーティストが登場する面白い劇場だ。親父(80代)がいつも「森山威男、観に行く?」と訊いてくるが、いつも「うーん…」と渋っていた(親父はジャズ好きなので結構何度も行っているのかも)。ある日こちらのHPを見ていたら、そこに「あの山下洋輔トリオ、一夜だけの復活。」とあるではないか。おーっと、こうなると話は別だ。

もちろんリアルタイムではないので自分が持つ山下洋輔トリオのイメージは、むかし日本テレビ系列で土曜の夜にやっていたタモリ司会のTV番組「今夜は最高!」ぐらいだ。とうにトリオとしての活動は無かったと思うが、創始メンバーであるサックスの中村誠一を含むメンバーがしょっちゅう出演していたので「面白れえオジサン達が居るんだなァ」と子供ながらに呆れていた(当時小学生につき、記憶違いがあるかも)。それでそこで知った山下洋輔や坂田明のやる音楽を聴いたかというとそうでなく、自分は彼らの著作を読んだ方が先だったと思う(山下のエッセイや小説、坂田のミジンコのあれね)。生であの(狂った)オジサン達の音楽が聴けるチャンス到来!

案の定、親父とおふくろもチケットを買っていたらしいので台風が近づく雨の中、一緒に行くことにする。チケットは完売したようだ。客の年齢層は流石に高いが、なかなかお洒落な紳士淑女も居て盛り上がっている。親父たちはこの会場の会員なので1階席だが、自分は随分遅れて別で購入したので3階席(涙)。

まずは森山、山下の2人。意外と静かなスタートだったが、すぐに2人ともオーヴァードライヴがかかって熱くなる。森山氏がどんなドラムスタイルなのか一部の音源以外なんの予備知識も無かったが、ブラシであんなにハードにヒットするんだね。曲が終わるとハァハァ言ってらっしゃる(御年72歳で、なんと今年に入ってから入院し、最近復帰したばかりなのだとか!)。そして坂田氏登場。いきなりフリーキーな音で、これぞ山下洋輔トリオって感じ。山下氏も肘打ちや拳で応戦する。すごい熱量だ。この3人が集まると、アーティストというよりはやっぱり「ジャズマン」という独特な感じ。曲毎に森山氏がマイクを持って(ハァハァ言いながら)MCを担当するのだが、各人の面白い昔話が聞けて楽しい。会場も笑いに包まれる(大筋はこちらでも聞ける)。

いったん舞台から下がって中入り。次は恒例だというジャンケン大会。ステージ上の森山氏とジャンケンし、勝ち残ると景品がもらえる。最初はサイン入りポスターだったのだが、次はサイン入りドラムヘッド、次はサイン入り新品スネアドラム(!)、次はあの全共闘時代の早稲田大学バリケード内での演奏を記録したサイン入りの幻のレコード!(※)、と凄いお宝を大盤振る舞い。欲しかったー。しかし俺ってジャンケン弱いなァ…。ここの館長が当時早稲田の学生で、バンドに随伴してそのレコードを売っていたりしたという裏話も。やっぱりここの館長タダモノじゃないな。

※「DANCING古事記」(OS-1129L/1130L 1969 Maro Record)(写真下・当人も持っていないそうです)

次はラッパやベースを加えての演奏。もちろん山下、坂田両氏も参加。それぞれのソロを主体とした曲の後に、有名な「キアズマ」も演奏。好々爺然としているがドラムはあくまで手数多く、ハードで力強い森山、端正で知的、かつ激情を放つ山下、飄々としているが音は多弁な坂田、とそれぞれの演奏も素晴らしい。自分には知識が無いが、参加しているメンバーは全員現在の日本でトップと言って差し支えない面々らしい。その面々の顔を見ていると、この伝説の3人と同じステージに立っているのが嬉しくてしょうがないといった雰囲気が伝わってくる。自分がこんなにフリージャズの演奏を楽しめるとは思わなかった(また音源集めるの、大変だ…)。

森山威男(ds)、山下洋輔(p)、坂田明(as)

川嶋哲郎(ts)、類家心平(tp)、中路英明(tb)、高岡 大祐(tub)、水谷浩章(b)

<Setlist>

01 ミナのセカンドテーマ
02 クレイ
03 ロイハニ
04 SUNRISE
05 GRATITIUDE
06 CHIASMA

encore

07 It Don't Mean A Thing
08 ずっと

コメント (2)
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