名鉄常滑線の大江駅近くの麺処「一八」。創業して73年というから昭和25年(1950)だろうか。名古屋を中心とした伝統ある系譜「一八会(一八のれん会)」と関係しているかは不明。店の裏にある駐車場に車を停めて裏口から店内へ。開店してすぐの時間だったがすでに何組も客が居て、後からも絶え間なく客が入ってくる盛況ぶり。給仕の女性に小上がり席を案内され腰を下ろした。卓には組み込みの鋳物コンロがある。こちら表の看板にあるように「釜揚げきしめん」が名物。ふと顔を上げた壁には古い看板が掛かっており(写真下)、年季が入って読み辛くなっているが、墨の筆文字で曰く、
「奥三河ノ峰々ニ
雨ガ降ル
三河安城平野ニ
実ルムギ
△△良イ所ダケ
刈リ取リ
名古屋二持ッテ来テ
コネテ見ルト
腰ノ強イきしめんト成リ
オカゲデタノシイ
名物ガ出来マシタ
一八」
(△は読み取り出来ず)
とあった。もちろん注文は名物の「釜揚げきしめん」。すぐに給仕女性が仕度をしてくれる。用意されたのは大きな特製の二重釜と、真ん中に穴の開いた木蓋。湯が沸いたら生麺が投入され、硬さを訊いてくれる。”普通”でお願いした。途中穴から茹で湯が沸き上がってくると給仕女性が穴に氷水を差し、またしばし茹でが続く。目の前で調理されているっていうのが楽しい。碗に入った熱いつゆ、生卵、薬味(刻みネギ、おろし、擦り生姜)も用意された。都合3回差し水をして出来上がり。
早速箸で釜の中の麺を手繰り、しっかりつゆに浸し啜る。あぁ、旨い。しっかりとした張りのあるきしめんはちょうどいい硬さに茹だっている。つゆは少し甘さを感じる懐かしい風味。きしめんのつゆといえばやっぱりこの甘さが必要だ。釜揚げのつゆは薄くなりがちだが、濃さも麺を食べ切るのにちょうどいい塩梅。薬味を足したり、溶いた卵にくぐらせたりして楽しんだ。もう少し食べたいぐらいの麺量もちょうどいい。用意されていた木製の大きな匙で茹で湯を少しつゆに足して飲んで、了。まだ後客が入ってくるので席を譲る。
勘定してもらうと調理場の女将が「ありがとうございました!9月末で店を閉めますので。」と声をかけて下さった。ご主人が病気になり閉めることにしたのだとか。2階で暮らすのが難しいそうなので店舗を住居スペースにするのかな。去年から双子の姉妹が跡を継いでいると聞いていたんだけれど、完全に止めちゃうのかな。もう一度来られるかどうか分からないが、旨い名物きしめんを食べることが出来て良かった。(勘定は¥1,300)
愛知県名古屋市南区加福本通3-47
※令和5年9月30日を以って閉店されました
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