The Complete Studio Albums 1970-1990 / ZZ Top (2013)
最近多くなったコンプリート・アルバム・セット。キャリアのあるアーティストの既発アルバムをレーベル毎に紙ジャケットで再現し、ボックスに収納したもの。ファンにはもちろん、これからそのアーティストを掘り下げていこうという方には1枚づつ集めるよりも手っ取り早いし、何しろ1枚当たりのコストはとても安くあがるので嬉しい。この作品なんて1枚当たり300円ちょっと。ボックスで紙ジャケがまとまっていると壮観だしね。
でもいいところばかりかと言えばそうでもない。こういったセットの場合、時代を共にしてきたアーティストを振り返るためならいざ知らず、これから聴き始めようとする者にとってはどうしてもアルバム単体への思い入れが小さくなるし、いっぺんに揃ってしまうので手にとってもその時の空気感まで記憶されない。ちょっと説明が分かりづらいかもしれないが、買おうかどうしようか悩んでやっと手に入れたアルバムというのは、買った時の自分の年齢、環境、心情、値段に至るまで結構覚えているものなのだ(自分の場合、特にアナログ・レコードは所有する約1000枚のほとんどでそういった内容を思い出す事が出来る)。特にこういったコンプリート・アルバム物は聴き方も雑になり、手に入れただけで聴いた気になってしまう。
このZZトップ(ZZ Top)の場合、自分は80年代前半から時代を共有したし、過去にさかのぼってアルバムもほとんどを集めたので、ちゃんとアルバム順も把握出来ているし、思い入れも強い。初めて聴いたのはテレビ朝日系(こちらでは名古屋テレビ)の洋楽番組、小林克也の「ベスト・ヒットU.S.A.」で紹介されたのを見たのが初めてだったと思う(ステージ上に生きたバッファローがのぼる事もある凄い実力派ブルース・バンド…と紹介されていた記憶が…)。それとも83年のMTVのビデオ・クリップ「Sharp Dressed Man」が先だったか。すぐにレコード屋へ買いに行ったが、自分の街にはもちろんなく、名古屋市中心部のレコード屋までいっても店員は名前さえ知らなかった。その後輸入盤も扱っていた店で見かけたが、その頃はまだ輸入盤の事をよく知らずに買う勇気がなく、結局レコード屋で取り寄せてもらい、当時名古屋市中心部である栄で働いていた姉貴に買ってきてもらったと記憶している。70年代の昔からのファンにはあのMTV時代のZZトップには違和感があるかもしれないが、自分にはPVも含めて痛快だった。アルバム「Eliminator」収録曲のPVでのセンスの良さと、LPジャケットのお世辞にもかっこいいとは言えない垢抜けなさが印象的だった。
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