三重県桑名市、いなべ市辺りの近代建築を観るべく早朝に車を出して長良川の堤防沿いを走り、意外と早く到着。上げ馬神事で有名な「多度大社」にお参りをしてから移動した。昼食は多度大社脇の街道沿いにある「大黒屋」。某有名作家の著述作品にも出てきた鯉料理で有名な老舗だ。本を読んだ時にはなかなか縁がないだろうなと思っていたが、調べてみると充分行動範囲内だと踏んで前日に電話で営業と1人訪問の可否を確かめると、大抵予約無しでも入れるが念の為に朝にでも電話を入れてくれると尚良いと言われていたので、多度大社に着いてから予約を入れておいた。店は多度大社から1kmも離れておらず、風情のある街道沿いにあるが、並んでいる商店は多くないのでポツンと離れた感じ。駐車場に車を停め、立派な門をくぐる。凄い建物だ。玄関口で靴を脱いで案内されると眼下に立派な庭園が広がる(写真下)。
回廊から見下ろす感じになっていて、澄んだ綺麗な水の池には沢山の鯉が泳いでいた。水が流れ込む音と鹿威しの音が涼をさそう。1人なので手前の小さめの部屋に案内された(写真下)。部屋は奥の方にも続いていて50人位入れる大広間もあるのだとか。この日は気温が高くなく風も少しあったので部屋の障子が開け放たれていて、そこから見える景色も素敵。建物は江戸時代中期頃のものらしいのだが、旅籠(のち旅館)であった頃の風情を残していて、一角には皇族ら、やんごとなき方々をお迎えする応接間(洋間)もあるのだとか。部屋の中に明治時代、大正時代の写真も飾られていて当時の姿を偲ぶことも出来る。広い敷地に池庭、年季の入った複雑な建物。つい”維持費”なんて無粋な事を考えてしまうが、御苦労も多いことだろう。
お茶が出されて「ランチコース」を注文。”洗い”又は”煮付け”という事だったので”洗い”でお願いした。お茶請けに出されたのは地元の名物「八壺豆」。大豆を甘くしたきな粉で固めてある菓子。なかなか旨い。給仕は男性1人、女性1人で行っているが、玄関脇の調理場から延々と奥まで歩いて行かなければいけないし、高低差もあるから宴会などがあった時には大変だろうなァ。同じ時間には他に2組程の客が入っていたが、呼ばれる度に部屋の前を歩いて行く足音が途切れない。風情ある風景と涼しい水音を聞きながら食事が運ばれるのを待った。
最初に運ばれたのは「うろこ、すり身だんごのから揚げ」。すり身だんごは串が打たれている。どちらもサクサクとした軽い食感で塩味が付いていた。本当は日本酒でもいきたいところ。グッと我慢…。次は「鯉こく」。京都の西京味噌で味付けしてあるとのこと。とろっとした口当たりで西京味噌の甘味と酸味の中に川魚らしい風味。中にはあらも入っていて、飲んでいるとだんだん体がポカポカとしてくる。寒い季節に飲んだら更に旨いだろうな。次は「季節の小鉢」として海老やキノコ、胡麻豆腐を炊いたものが出てきた。青葉もみじが添えられていて風流。それに「玉子焼」。次は「南蛮漬」。少量だが揚げた鯉の身が大根、人参、ピーマンの千切りと甘酸っぱく漬けてある。さっぱり。そして最後に「洗い」と白御飯、香の物が出てきた。数枚だろうと思っていた洗いは結構な枚数並んでいる。酢味噌などで食べることが多い鯉の洗いだが、こちらでは綺麗な水で1ヵ月以上も飼育することから臭味などは消えてしまうので、醤油と山葵でいただけるのだとか。ひとつ細かく包丁が入れられていた部位があって面白い食感だったのだが、どこの部位だったかの説明を忘れてしまった。これに水菓子(スイカ)と飲物(コーヒー)が付く。
食べ終わって勘定をお願いしようとすると「よろしければ庭にも降りてご覧下さい。」と言われたので、遠慮せず歩かせてもらった。本当は洋間も見せてもらいたかったが、給仕の方々はお運びで忙しそうだったので声を掛けるのを遠慮しておく。これだけの眼福と料理の割に値は安いし、是非またの機会に。(勘定は¥2,080)
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↓ 早朝、まだ神社の方々総出で朝の掃除をしている静謐な空気の「多度大社」に参拝。ちょうど御神馬も朝の散歩。初めて上げ馬神事の坂を見たがとんでもない急斜面。恐ろしや…。
↓ 店の川を挟んで反対側にある「桑名市郷土館(旧・多度村立多度尋常高等小学校)」(昭和8年・1933・建造、一部移設)◇。予約のみの開館らしく中は見ることが出来ず。あまり開けられていないのか中はやや荒れ気味。
鯉料理 大黒屋
三重県桑名市多度町柚井1799
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