歌舞伎座新開場柿葺落 二月花形歌舞伎 「心謎解色糸(こころのなぞとけたいろいと」 (2月25日 東京・歌舞伎座)
思ったよりも早く、また東京に行く機会が出来たので、日程に合わせて演目を調べてみたところ、歌舞伎座千秋楽公演の昼の部なら行けそうな事が分かったので、あわててチケットを入手するべく探す。演題は「心謎解色糸(こころのなぞとけたいろいと)」。今回はかろうじて3階席を手に入れる事が出来た。メインで演じるのは前回の国立劇場でも出演していた市川染五郎と中村七之助。その他に尾上松緑、尾上菊之助などが出演。新歌舞伎座の建物自体は以前も入った事があるが、舞台を見るのはもちろん初めて。昨年初めて体験してから、その魅力にはまってしまった。
東京に着いてすぐに、歌舞伎座の向かいに店を構える明治元年(1868)創業の「木挽町辧松(弁松)」で弁当を購入。そのまま入場した。エスカレーターで3階まで上がり、席を案内してもらうと眼下に舞台と定式幕(じょうしきまく・三色の引き幕)が拡がる。勾配はやや急だが、視界は広く、見やすい席だ。3列目位だったが、勾配がある分、前席が気になる事もない。開演しても舞台装置の動きや演者の動きがよく分かり、3階席でも充分楽しめた。ただ席間の前後がちょっと狭いのが辛いところ。
幕が開くと、その美しい舞台に目を奪われる。役者の白塗りも鮮やかで、一気に現実とは違う華やかな世界へ突入。ただうしろのおばちゃんがビニール袋をガサガサやるのが気になってなかなか導入部に集中出来ない。台詞まわしや音楽も3階だとやはり迫力というか臨場感に欠けるので、より注意深く台詞を聞いていないと、初心者で、前回の教訓からイヤホンガイドを使っていない自分には少々辛い。この演目については複雑な人間模様が背景にあるので、ある程度資料を集めて予習しておいた。前回は軍記物、今回は世話物(江戸の人々にとっての現代劇)だったので、登場人物もバラエティに富んでいて楽しい。
11時に開演して、1度目の幕間(まくあい)が約30分。この時間に弁当を食べる。3階では特に休憩スペースがある訳ではないので、自分の席で弁当をつつく。前回の日本橋弁松と内容はよく似ているが、味付けはこちらの木挽町辧松の方が全体に若干薄味か。それでもきんとんがデザート代わりになっている内容も含めてそっくりだ。この2店は何か関係があるのかな?
見ものは二役を演じる染五郎と七之助の早変わり。舞台袖で隠れてやるにしても、どうしてあの衣装であんなにすばやく変われるのか分からないが、そのスピード感がすごい。本もそれを生かすように書かれているので客からもやんやの拍手が上がる。今回は回り舞台を多用しての場面転換があったので、3階から眺めているとその様子がとてもよく分かった。上手い事出来てるなぁ。
弁当を食べた後の客席では船を漕ぐ人も多い。人間関係がめまぐるしく変わる今回の話ではうっかり寝てしまって話についていけなくならないか心配したが全く無用だった。笑わせどころも随所にあり面白いので、睡魔に襲われる事は全然無く、最後まで約4時間たっぷり楽しめた。
通し狂言 心謎解色糸(こころのなぞとけたいろいと)
小糸左七
お房綱五郎
序 幕 深川八幡の場
二軒茶屋松本の場
雪の笹藪の場
二幕目 本町糸屋横手の場
同 奥座敷の場
元の糸屋横手の場
三幕目 大通寺墓所の場
四幕目 深川相川町安野屋の場
同 洲崎弁天橋袂の場
大 詰 小石川本庄綱五郎浪宅の場
同 伝通院門前の場
お祭左七/半時九郎兵衛 染五郎
本庄綱五郎 松緑
芸者小糸 菊之助
糸屋の娘お房/九郎兵衛女房お時 七之助
神原屋左五郎 松江
山住五平太 松也
赤城左京之助 歌昇
廻し男儀助 萬太郎
芸者小せん 米吉
芸者お琴 廣松
丁稚與茂吉 玉太郎
番頭佐五兵衛 松之助
中老竹浦 宗之助
石塚彌三兵衛 錦吾
鳶頭風神喜左衛門 男女蔵
松本女房お蔦 高麗蔵
安野屋十兵衛 歌六
女房おらい 秀太郎
↓ 垂れ幕に本日千秋楽の文字が
木挽町辧松(※閉店)
東京都中央区銀座5-14-1
※令和2年4月20日を以って閉店されました
( こびきちょうべんまつ こびきちょう べんまつ 辧松 弁松 閉店 廃業 )