東別院から御器所まで近代建築を目指して歩き、素晴らしい建物を堪能してから向かったのは蕎麦の「春風荘」。中休みが無いことを確認して、ゆっくり出来そうな時間を見計らって店へ向かう。表の佇まいはすっきりとしていて期待が高まる。中に入ると人気の店とあってしっかり客は入っていたが、昼時は過ぎているので落ち着いた雰囲気。奥には麺打ち場も見える。テーブル席に案内され、品書きを眺めた。蕎麦前を楽しもうと思っていたが、酒の値付けが少々高め。迷ったが本醸造(新潟の「越の松露」)を冷や(常温)で注文し、酒肴には玉子焼きを頼んだ。
すぐに酒が運ばれたが、一緒に運ばれた「お通し」で目が点に…。なんと皿には9品もの酒肴がひと口分づつ盛られている。「えっ?頼んでませんよ」と言いそうになったが、これが蕎麦前の酒に付くようだ。すごい。しかも内容は、雲丹、鮪、蛍烏賊、海老の頭、穴子の尻尾、貝のサラダ、数の子、鴨、豆腐と超豪華。天タネの余剰なども上手く利用しているのだろうが、どれもひと手間加えてあり、これで酒が呑める幸せといったらたまらない。これ見よがしに品書きに書いてないのも素晴らしい。いやァ、ウマイウマイ。後から運ばれた玉子焼きは円柱形で、大根おろしが付いている。この「染おろし」だとおろしが付き、「煮おろし」だとおろしつゆの中に玉子焼きが入るようだ。熱々の玉子焼きはやや甘め。これも旨い。煮おろしでも食べてみたいな。もちろんこの時点でお酒はもう1本つけてもらっている(→予定では1本だけのはずだったが…・笑)。
蕎麦前を堪能したあとに「せいろ」をお願いする。これも薬味は、ねぎ、本山葵(鮫皮おろし付)、おろし、唐辛子、大根の皮、と盛り沢山。蕎麦切りは短め。好みはもう少し長い切りだが、艶がありなかなか旨い蕎麦だ。つゆは濃いめ。溜り醤油由来の甘さも感じる。山葵を自分でおろしながら、蕎麦にのせたり、そのままつまんだり。サッと手繰った後の蕎麦湯はとろとろのタイプ。蕎麦前が凄すぎてちょっと蕎麦が霞んでしまうくらいだが、最初から最後まで堪能した。
あれがあればナ、と思うような足りないものが何も無く、充実していた。しかも店に変に気取った感じが無いのも気に入った。他にも和らぎ水として頼んだコップのお冷(ひや)の空きにすぐ気が付いたり、什器に凝っていたり、楊枝は黒文字を使っていたり、お茶が最近よくある蕎麦茶(蕎麦をいただく前のあれの良さが全然分からない…)じゃなくて濃いめの緑茶だったりと、細かい所までとても気が利いていて自分の好みと合致。想像だけれど主人はいろんな店の蕎麦前の経験が豊富で、自分が居心地の良い店とはどういうものかというのを実現しようと苦心したんじゃないかなァ(下戸だったら面白いが)。でもコレ蕎麦だけ手繰っただけじゃ魅力が分からなかったかもしれない。帰りに「酒ラッパ」と名付けられた山椒煮をお土産に買って店を出た。大満足。(勘定は¥3,700程)
↓ 鶴舞南ジャンクションに建つ「伊藤耳鼻咽喉科醫院」(昭和7年・1932・建造)。緑青(ろくしょう)の出た銅板、逆読みの院名とスクラッチタイル壁の組み合わせに風格があり素晴らしい。
↓ 現在は使用されていない様子だし、建物が建っているのは幹線道路沿いで高架下の交差点近く(写真下右)。こんな場所なのでこのまま維持されるのかどうかは怪しいか…。
愛知県名古屋市中区千代田3-31-20
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