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こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

人生あっという間、私の時間もあと少し。
よりよく生きるにはどうしたらいい?

少しづつ 戻していこう

2011年03月25日 | 自然災害・事故・感染症
大地震から、今日で2週間。

2週間前の朝、このようなことが起こることを誰が思っていただろう。

もしかしたら、大地震が起きたら?と、頭をよぎった人もいるかも知れないが、数十の町村が壊滅し、数十万におよぶ人が被災することになる、人智を超えた災害になると思えただろうか。

病理医3人でディスカッション顕微鏡を囲んでいたときに起きた地震。
壁材が剥がれ落ちる数十秒、数分におよぶ長い揺れの中、本棚を押さえに自分の顕微鏡のあるデスクに行った。

しばらくして、医局に戻り、テレビに映しだされた津波が、これほどの大災害になっているとは、その時はまだ、知らないでいた。


あれから、2週間。

はじめの1週間、まともな診断ができなかった。
春分の日があったので、比較的ゆとりがあったのが救いだった。
人間ドックにかかって、検査を行ってくれた友人に、そのことを話したら、「そうか、お前もだったのか。俺もそうだったんだよ。」と。
皆、それなりに不安を感じていたのだろう。

余震のたびに、マルチーズのコロが2階から駆け下りてくる。


フラットコーテッドレトリバーのナイトも、家の中に居たがった(人間のそばいにたいのはレトリーバーの習性で、これは地震のせいだけでもないのかもしれないが?)。


さて、そんな今日、外科がずいぶんと大きな手術をするというので、病理も迅速のために待機。
最初の検体が出始めたのは午後ちょっと遅い時間だったのだが、なかなか取りきれない。
結局、8ヶ所目の断端陰性、という返事をインターホンで返し、迅速診断のレポートをサインアウトしたのは20時過ぎ。
ちょっと、しんどかったが、落ち着いて診断できたような気がする。

ちょうど、先週の金曜日にも難しめの迅速があったが、その時は首都圏が大規模停電になるかもしれない、ということで早めの帰宅が言われ、騒然とした中で行った。
病変の広がりが今まで見たこともないようなものだったということもあり、診断にだいぶ苦労した。
それに比べると、今日は冷静に行うことができた。

迅速のレポートを書いている間、再び大きめの余震があった。
地震酔いがなかなか抜けないし、いつまた大きな余震が来るかもしれないという不安はある。

だけど、いつまでも、こうしてはいられない。
検体の向こうの患者さんの笑顔のために、病理医は病理医の仕事をやっていかなくてはいけない。
今、すべきことを高い質で行うことが、それぞれの人に与えられたことなのだろう。
なにをどこまで、と決めるわけにはいかないが、少しずつ、戻していくことが大切だ。