(第12話からの続き)
新聞かなにかで知ったことだが、国産型プラットフォーマー”ヘヴン”のAIによるディープラーニング能力は、人間の感情、善悪判断に迫るもので、従来型のものとは全く異なるタイプだそうだ。何が異なるかというと、従来型のAIは自己判断ができるといっても、ゲームとか戦争における最善手を自律的に判断するだけで、感情的なこととか、善悪の判断とかの能力は含まれていない。したがって、無差別殺人すら可能となる。
一方、ヘヴンのAIには感情というか、善悪判断能力があるそうで、”人間の不利益になることはしない”という原則を学習させておけば、ある程度の幅を持って不利益になることはしないようになる。
兵器の発達がどこまで進むかはわからないが、極小の弾丸を仕込んだドローンに効率の良い殺人を学習させたAIを積んでおけば永遠に人間の殺戮を続けるが、無差別であるという点で、そこにいる人すべてを殺してしまうから、環境破壊を伴わない爆弾ということになる。
そこで、この国はヘヴン型のAIを登場させたことなる。これなら、敵味方の判断を行いながら殺人を行うことも可能だし、手加減することも可能になる。専守防衛が可能なのだ。
AIを搭載するのがドローンではなく、人間型ロボットだったらどうだろうか。そして、私たちを救ってくれたのがヘヴンの従業員ではなく、ヘヴンの新型AIを搭載したロボットだったという可能性はないだろうか。
ヘヴンはユーザーの顔と名前をすでに知っていて、従業員、というか新型AIを搭載した店員ロボットは誰がキムチを買いに来るかは知っていたのだ。そこへ、通り魔が”大切な顧客”を次々と襲った。そこで、ロボットは顧客を守った。顧客は味方で、味方を攻撃するものは敵ということだ。
でも、その詳細を知られてはいけないから、あの事件の後、関係者同士は連絡が取れなくなり、事件自体もあっという間に消し去られつつある。
なぜ、そんな役に立つロボットの存在を隠す必要があるのだろうか。ヘヴンには別の目的があるのだろうか。そして、ワゴン販売はそのためのちょうど良い隠れみのだったのか。ヘヴンにはどんな秘密が隠されているというのだろう。
通り魔はなぜ
第14話に続く