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村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』で戦時下に増幅される人間のキャラクターに触れた。その続きというわけではないが、同じように人間を掘り下げているのではないかと遠藤周作の『海と毒薬』を読んでいる。そのなかで、登場人物たちが誰それを抱いた抱かれたどうだった、ということが淡々と描かれている。この作品を私が中学高校時代に読んでも、その味わいは全く異なっただろう、いや、それどころか作家の意図することはほとんど分からなかっただろうとふと思った。
芥川賞作品には、『太陽の季節』に代表されるようなセックスを織り交ぜたものが多い。そんな芥川賞の作品を読んでもあまり面白いと思わなかったのは、性的嗜好の問題も多少はあるのかもしれないが、セックスまで含めた女性との交際経験が少なかったからなのだと気が付いた。
小説でのセックスの描写は、生々しいものからしたという事後の事実のみまでさまざまだが、いい作品ではそれらが自然に語られ、登場人物たちはそれを機に変わったりそのままであったりする。
そんなことから、男女の性愛が作品の中で特に印象的だったと私が思い浮かべた作品は以下のようなものだった。
村上春樹 海辺のカフカ
星 新一 テレビ・ショー
筒井康隆 村井長庵
川端康成 雪 国
重松 清 疾 走
紫 式部 源氏物語『末摘花』
読んだ時の年齢による感受性の違いもあるだろうが、今でもありありとその情景を思いだすということは、そこでの男女の情愛を味わうことが曲がりなりにもできたということか。読者として、そこに描かれるセックスを客観的に捉えることができたり、登場人物に重ね合わせてみたり、いろいろな読み方をしたのだと思う。
すべてがわかるわけではないが
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