水曜午後10時からフジテレビで放映中の、病理医が主人公の医療ドラマ、『フラジャイル』。長瀬智也がベテラン病理医を演じ、ヒロイン武井咲が新人病理医を演じている。一昨日、第三話が放映され視聴率は10%を維持して健闘している。病理医仲間によるFacebookでも、水、木はこの話題で持ち切りとなる。近いうちにスピンオフを書こうと思う。
医療ドラマとしては、異色とか変化球などといわれているが、病理医が主役でなかっただけで病理医が作中に登場する小説、映画はこれまでにもいくつかあったので、驚くべきことではない。医療ドラマの上に、難しすぎると難癖を付ける評論家は引っ込んでほしい。これでも、ずいぶん一般向けに易しい話にしている。それに、現役病理医が技術指導に入っていて、病理診断の業務内容に関してはほぼ100%の正しい(ただ、探偵めいたことはしない)。
主役の長瀬智也が病理医役を一生懸命やってくれているのもいい。彼だって、病理医なんて存在、これまでずっと知らなかったろうにいきなり振られて大変だったに違いない(下参照)。それでも、わけのわからない用語の混じる台詞をしゃべっている。病理医がしゃべる言葉、臨床医だって理解できない人が多いのに、彼は相当頑張っていると私は高く評価している。
あと、スライドガラスを顕微鏡のステージにセットしていたけど、あれもたいしたものだった。ガラスをセットする時、ベテランはたいてい片手で将棋の駒を置くときのような音を立てるが、クレンメルの形によっては両手を使う人もたまにはいる(クレンメルについて知りたい方はこちらを『クレンメルで指を切った』2012年5月25日)。スライドガラスを持ち馴れていない新人病理医は大抵両手で行う。長瀬には片手でパチッと置くのはできなかったのだろう、両手でセットしていた。けれども、ベテランの先生でもあれぐらいのスピードでガラスをセットするので、まあ、ギリギリ合格点だと思う。それに、彼が頑張りすぎてガラスで手を切っても気の毒だ。ちなみに、私は右手でガラスをステージに置く。
武井咲演じる新人病理医、ダブルチェックが無いと嘆いていたが、あれは岸先生の演技で、全例自分で見直してサインアウトするはずだ。でなければ、本当に患者を殺してしまうことになる。その証拠に、岸先生の残業も増えているみたいだし。
視聴率が15%ぐらいまであがってくれたら、長瀬も武井のみならず病理医も嬉しい。
このブログを通じて病理ファンになられた方で、まだドラマをご覧になったことがない方がいらっしゃったら是非一度ご覧下さい。コミックも良いけど、やっぱり長瀬智也と武井咲が頑張っているテレビドラマのほうが良いでしょう。この先も、どんどんスペシャルゲストが出るようですしね。
ますます頑張って!
長瀬智也インタビュー(フジテレビ『フラジャイル』ホームーページより。上、武井咲の写真も)
Q『フラジャイル』の原作、台本を読まれた印象はいかがでしたか?
A「岸の病理医という職業は、あまり知られていません。僕自身も病理ということに関しては無知だったので、“ああ、こういう場所で戦っている医者もいるんだ”と思いました。カルテに患者の病気の診断名を書くという、ものすごい重責を背負っていることも知りました。直接、患者と接する臨床医と病理医の話し合いながら…時には、ぶつかり合いもありますが…その全てが生死に関わってくることを『フラジャイル』という作品に感じました。そのせめぎ合いが、ドラマでも表現できたら良いと思います」
ね、やっぱり知らなかったでしょう。