きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

米中貿易摩擦① 技術覇権争いが激化

2018-09-10 10:10:43 | 国際政治
米中貿易摩擦① 技術覇権争いが激化
明治大学 宮崎礼二准教授に聞く
激化する米中貿易摩擦の現状と行方について、明海大学の宮崎礼二准教授に聞きました。
(聞き手:杉本恒如)

―トランプ政権の狙いは何でしょうか。
トランプ政権は、知的財産権侵害を理由にして中国製品に追加関税を課しています。すでに発動された第1弾、第2弾の対象は中国製品500億ドル。中国も同規模の報復関税を実施しました。今週中にも、米国は中国製品2千億ドル相当を対象に第3弾を発動する構えです。狙いは二つです。一つは中間選挙対策。もう一つは中国の先端技術の押さえ込みです。
トランプ大統領は11月の中間選挙で共和党の議席を増やすために、ラストベルト(さびついた工業地帯)やアパラチア地方での製造業労働者の支持を強固なものにしようとしています。いずれも、企業の消滅や工場の海外移転で没落と貧困が激しい工業地帯です。トランプ氏は、米国製造業に苦境をもたらしたのが対米黒字国だと、外国を非難して支持を集めてきました。
中でも一番注目を集めているのが、対米黒字額が最も大きい中国です。中国の対米輸出額は、米国の対中輸出額を大きく上回っているので、関税合戦になれば中国が先に弾切れになります。米国の第3弾の追加関税が2千億謎相当の中国製品を対象とするのに、中国の報復措置が600億ドル相当にとどまるのはそのためです。米国は関税では対抗できないところへ中国を追い込もうとしています。



広東省深圳のZTE研究開発ビル(ロイター)

他国へ生産移転
―単なる選挙向けアピールか、本気で米国内に雇用を呼び戻す考えか。どちらでしょう。
中国での生産は、低賃金を武器とする労働集約的な分野が得意で、特に第3弾の対象品目は服飾品や家具など消費財が多い。対中関税でその生産を米国に移すというのは非現実的です。
アパレル産業では、すでに多くの多国籍企業が中国以外のアジア諸国へ生産拠点を移していました。中国の賃金が上がったからです。移転先はカンボジアやバングラデシュなど、中国よりはるかに低賃金の国です。トランプ関税はこの動きに拍車をかけているようです。結局、別の新興国、途上国で生産された製品が米国に輸出されるだけでしょう。
―ラストベルトの心情には働きかけるけれども、その願いは実現しないのですね。
同じように、温室効果ガス削減のパリ協定からトランプ政権が離脱したことで、石炭を産出するアパラチア地方の人たちが大喜びしています。しかし、本当に米国が天然ガスではなく石炭で発電するようになるかといえば、そうではない。
トランプ氏は経済合理性を考えてはおらず、中間選挙向けスローガンという政治的な思惑で動いているとみなさざるをえません。

特許躍進の中国
―もう一つの焦点として米中の技術覇権争いが浮上しています。
トランプ氏の通商政策をめぐっては、米国政財界の評価は割れています。追加関税は好ましくないという評価が多い。
しかし、中国の技術覇権の押さえ込みには一丸となっています。共和党だけでなく、民主党も乗っています。
オバマ政権がつくった国防総省の国防イノベーション実験部隊(DIUx)の活動がトランプ政権下で一気に活発化し、中国脅威論を発信しています。「このままでは米国の技術で開発された中国製兵器が米国に向けられる」というのです。
世界知的所有権機関(WIPO)の報告書(2018年3月)によると、国際特許出願件数で中国は米国を追い上げています。中国企業ファーウェイとZTEは2017年の特許出願件数で1位、2位になっています。個別企業レベルではすでに米国は中国に追い抜かれているのです。
トランプ氏は、世論一般に向けては雇用や製造業の復活を訴えます。しかしその下には、中長期的に米国の技術覇権を脅かす中国を押さえ込むという思惑があります。この点では米国の政財界が一体となって動くでしょう。
(つづく)(2回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年9月7日付掲載


アメリカの対中国関税競争の裏には、技術力の覇権争いがあった。特許出願でも後れを取っている。
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