リーマン10年の爪痕③ 雇用劣化 広がる格差
リーマン・ショックで各国の雇用は歴史的な落ち込みとなりました。米国の非農業部門雇用者数は2008年通年で308万人減少。第2次世界大戦後最悪の減少幅だった1945年の275万人減を63年ぶりに更新しました。2009年10月には失業率が10%になり、長期失業者は550万人超、青年失業率は19%を超えました。
ユーロ圏の失業率は10年に10%を突破しました。日本の失業率も09年に5%を超えました。各国の失業は10年以降、数字の上では改善に向かったものの、リーマン・ショック以降、さまざまな形で雇用が劣化しています。
米国のシンクタンク、経済政策研究所によると、職を持たず、職探しもしていない「労働市場から消えた労働者」が増えました。15年には392万人。17年になっても150万人。リーマン・ショック以前の状態に戻りません。労働条件が劣悪な職が増え、多くの人が労働市場から退出したと同研究所は分析しています。
ユーロ圏では2桁の失業率が16年まで続き、今も8%台に高止まりしています。
職業紹介フェアで順番を待つ求職者=2009年12月、米ニューヨーク(ロイター)
実質賃金伸びず
日本ではリーマン・ショック以降、非正規雇用が増え、役員を除く雇用者全体に占める比率は今年7月時点で37%、女性では55%を超えています。実質賃金は1996年をピークに下がり続けています。国際労働機関(ILO)の「世界賃金報告」2016117年版は、日本では非正規雇用の増加が賃金抑制の要因になっていると指摘しました。
低賃金の職には求職者が集まらず、有効求人倍率を押し上げています。安倍晋三首椙が自慢する有効求人倍率の上昇は雇用の改善ではなく、劣化の証明です。
経済成長率が伸びても実質賃金が増えないのは世界的傾向です。ILOによると、15年の世界の実質賃金の伸びは前年比1・7%。4年ぶりの低さでした。
青年失業者は17年、世界全体で7090万人に上り、失業者全体の35%を占めています。4人のうち3人が課税されず統計にも表れない「非公式経済」で働いているといいます。ILOは「経済成長と雇用の乖離(かいり)が続き、失業者に占める青年の比率はこの10年間ほとんど変わっていない」と報告書で述べています。
増税で消費不況
対極的なのが株価です。米ニューヨーク市場ではリーマン・ショック後、6000ドル台半ばに落ち込んだダウ工業株が今は4倍に値上がりしました。東京証券市場も株価はリーマン後の落ち込みから3倍の上昇です。リーマン・ショック後、米欧日の中央銀行が大規模な金融緩和を実施し、巨額のマネーを金融市場に供給したことが株価をつり上げ、バブル状態を生じさせています。
米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)は14年に量的緩和政策を終了しました。15年12月には政策金利を引き上げてリーマン・ショック後の「ゼロ金利政策」を解除し、段階的に利上げを実施しています。欧州中央銀行(ECB)も量的緩和の18年末打ち切りを決定しています。大規模緩和を続けている主要国は日銀だけです。
実体経済の上でも日本の国内総生産(GDP)の伸びは米国、ユーロ圏を下回っています。14年4月に安倍晋三政権が消費税を増税したことで消費が落ち込みました。政府の政策がつくり出した不況です。株価上昇に躍る大企業や富裕層と国民の格差は広がる一方です。安倍政権がたくらむ19年10月の消費税増税は格差と貧困をさらに広げることになります。(おわり)(山田俊英が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年9月15日付掲載
リーマンショック後、株価は持ち直しているけど、世界的にみても賃金は伸び悩み。日本では非正規雇用が進み、貧困化が広がっている。
リーマン・ショックで各国の雇用は歴史的な落ち込みとなりました。米国の非農業部門雇用者数は2008年通年で308万人減少。第2次世界大戦後最悪の減少幅だった1945年の275万人減を63年ぶりに更新しました。2009年10月には失業率が10%になり、長期失業者は550万人超、青年失業率は19%を超えました。
ユーロ圏の失業率は10年に10%を突破しました。日本の失業率も09年に5%を超えました。各国の失業は10年以降、数字の上では改善に向かったものの、リーマン・ショック以降、さまざまな形で雇用が劣化しています。
米国のシンクタンク、経済政策研究所によると、職を持たず、職探しもしていない「労働市場から消えた労働者」が増えました。15年には392万人。17年になっても150万人。リーマン・ショック以前の状態に戻りません。労働条件が劣悪な職が増え、多くの人が労働市場から退出したと同研究所は分析しています。
ユーロ圏では2桁の失業率が16年まで続き、今も8%台に高止まりしています。
職業紹介フェアで順番を待つ求職者=2009年12月、米ニューヨーク(ロイター)
実質賃金伸びず
日本ではリーマン・ショック以降、非正規雇用が増え、役員を除く雇用者全体に占める比率は今年7月時点で37%、女性では55%を超えています。実質賃金は1996年をピークに下がり続けています。国際労働機関(ILO)の「世界賃金報告」2016117年版は、日本では非正規雇用の増加が賃金抑制の要因になっていると指摘しました。
低賃金の職には求職者が集まらず、有効求人倍率を押し上げています。安倍晋三首椙が自慢する有効求人倍率の上昇は雇用の改善ではなく、劣化の証明です。
経済成長率が伸びても実質賃金が増えないのは世界的傾向です。ILOによると、15年の世界の実質賃金の伸びは前年比1・7%。4年ぶりの低さでした。
青年失業者は17年、世界全体で7090万人に上り、失業者全体の35%を占めています。4人のうち3人が課税されず統計にも表れない「非公式経済」で働いているといいます。ILOは「経済成長と雇用の乖離(かいり)が続き、失業者に占める青年の比率はこの10年間ほとんど変わっていない」と報告書で述べています。
増税で消費不況
対極的なのが株価です。米ニューヨーク市場ではリーマン・ショック後、6000ドル台半ばに落ち込んだダウ工業株が今は4倍に値上がりしました。東京証券市場も株価はリーマン後の落ち込みから3倍の上昇です。リーマン・ショック後、米欧日の中央銀行が大規模な金融緩和を実施し、巨額のマネーを金融市場に供給したことが株価をつり上げ、バブル状態を生じさせています。
米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)は14年に量的緩和政策を終了しました。15年12月には政策金利を引き上げてリーマン・ショック後の「ゼロ金利政策」を解除し、段階的に利上げを実施しています。欧州中央銀行(ECB)も量的緩和の18年末打ち切りを決定しています。大規模緩和を続けている主要国は日銀だけです。
実体経済の上でも日本の国内総生産(GDP)の伸びは米国、ユーロ圏を下回っています。14年4月に安倍晋三政権が消費税を増税したことで消費が落ち込みました。政府の政策がつくり出した不況です。株価上昇に躍る大企業や富裕層と国民の格差は広がる一方です。安倍政権がたくらむ19年10月の消費税増税は格差と貧困をさらに広げることになります。(おわり)(山田俊英が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年9月15日付掲載
リーマンショック後、株価は持ち直しているけど、世界的にみても賃金は伸び悩み。日本では非正規雇用が進み、貧困化が広がっている。