温室効果ガス削減 新ルール作成へ COP19
あすから国際会議
【パリ=浅田信幸】国連の気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)が11日から22日まで、ポーランドのワルシャワで開かれます。地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出を削減するために、2015年に採択が予定されている新たな国際的ルールの作成に向けた問題や、20年までの削減目標のかさ上げなどの問題をめぐって論議が行われます。
国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は9月末、世界の科学者の知見をとりまとめた報告書を発表しました。地球温暖化の原因が人間の活動による温室効果ガスの排出にあることをこれまで以上に明確にするとともに、その累積排出量と気温上昇がほぼ比例していることも指摘。温暖化対策の緊急性を強く訴える内容でした。
締約国である195力国・地域のすべてが参加する世界共通のルールを15年に採択し、20年に発効させること、そのため来年のCOP20(リマ)では交渉案の要素を検討し、15年5月までにその交渉文書を作成することが、これまでのCOPで合意されています。
会議では新しい国際的枠組みの期間や削減目標、具体的実行にかかわる問題、さらに交渉文書作成にまで至る行程表作りが主要な論点となります。
削減目標引き上げ必要
温室効果ガス削減の目標設定では、「共通だが差異ある責任」原則を踏まえ、京都議定書で削減義務を負わなかった中国やインドなど近年の著しい経済成長で温室効果ガスの排出量を増加させている新興国や、新興国への仲間入りを目前にする途上国の扱いをどうするか、論議が紛糾することも予想されます。
気温上昇を産業革命以前と比べて2度以下に抑える「2度目標」ではすでに国際的な合意があります。新たなルールの下での温室効果ガスの排出削減目標はこれに見合うものでなければなりません。
各国の行動計画をいつまでに提出するかが行程表上の焦点の一つ。温暖化対策に熱心な欧州連合(EU)は各国の目標が妥当かどうか評価する期間が必要だとし、14年の提出期限を主張、米国は15年を提案しています。
締約国から提出されている20年(新ルール発効前)までの抑制・削減目標では、「2度目標」達成に必要な削減量に遠く及んでいない現状があります。
国連気候変動枠組み条約のフィゲレス事務局長は今月はじめ「2015年合意で、一夜で2度目標達成への道が開かれるとは思わない」と懸念を表明。COP19で新ルール作りのための論議とともに、20年までの削減目標を引き上げることで合意する必要があると強調しています。
(パリ=浅田信幸)

日本政府は逆行「3%増」目標
日本政府は、COP19に、温室効果ガス削減目標を2020年までに「2005年比3・8%減」とする方針で臨みます。
基準とする年を京都議定書の基準年(1990年)から2005年に動かしました。05年の排出量は90年に比べ7・1%増えています。そのため、今回の目標は「削減」といいつつ、90年比で見れば約3%増になります。日本政府の京都議定書の第1約束期間(08~12年)の目標はマイナス6%でした。その目標から見れば、実に9%も増やすことになります。(グラフ)
日本政府が、前民主党政権が約束した「90年比25%削減」を撤回し、増やす目標を表明することは、国際社会の削減努力に逆行するものです。
温暖化対策「放棄」
気候ネットワーク理事、平田仁子さんの話
日本政府の削減目標は、原発事故で、これまでの計画の前提が崩れたのは事実ですが、では、どのような温暖化対策が取れるのか、という検討もなしに、火力発電所の稼働が増えているから仕方ない、とした数字です。これは温暖化対策の後退というより「放棄」です。
また「原発が再稼働したら(目標を)引き上げる」との政府関係者の声も報道されています。福島の原発事故から何を学んだのでしょうか。日本の温暖化対策はずっと原発頼みで温室効果ガスはちっとも減らなかったのです。同じ過ちを繰り返そうとしています。省エネ強化と再生可能エネルギーの強化で温室効果ガスの大幅削減は可能です。
決め方自体にも大きな問題があります。麻生政権が目標を決めた09年も前民主党政権も、少なくとも根拠となる数字は公開されました。今回の数字は、どのような検討を経たのか、そのプロセスも非公開、不透明です。国民生活全体に影響がある問題にもかかわらず、あまりにも勝手な決め方です
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年11月10日付掲載
日本の温暖化対策は、クリーンなエネルギーだということで原発での発電を推進したり、排出権の売買などで進めてきました。実質的に温暖化ガスの排出量を減らす取り組みに消極的でした。
フクシマの原発事故をうけて原発稼働がゼロになるもとで、政府自ら立てた削減目標を悪い方に見直すって…。勝手なことは許されませんね。
あすから国際会議
【パリ=浅田信幸】国連の気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)が11日から22日まで、ポーランドのワルシャワで開かれます。地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出を削減するために、2015年に採択が予定されている新たな国際的ルールの作成に向けた問題や、20年までの削減目標のかさ上げなどの問題をめぐって論議が行われます。
国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は9月末、世界の科学者の知見をとりまとめた報告書を発表しました。地球温暖化の原因が人間の活動による温室効果ガスの排出にあることをこれまで以上に明確にするとともに、その累積排出量と気温上昇がほぼ比例していることも指摘。温暖化対策の緊急性を強く訴える内容でした。
締約国である195力国・地域のすべてが参加する世界共通のルールを15年に採択し、20年に発効させること、そのため来年のCOP20(リマ)では交渉案の要素を検討し、15年5月までにその交渉文書を作成することが、これまでのCOPで合意されています。
会議では新しい国際的枠組みの期間や削減目標、具体的実行にかかわる問題、さらに交渉文書作成にまで至る行程表作りが主要な論点となります。
削減目標引き上げ必要
温室効果ガス削減の目標設定では、「共通だが差異ある責任」原則を踏まえ、京都議定書で削減義務を負わなかった中国やインドなど近年の著しい経済成長で温室効果ガスの排出量を増加させている新興国や、新興国への仲間入りを目前にする途上国の扱いをどうするか、論議が紛糾することも予想されます。
気温上昇を産業革命以前と比べて2度以下に抑える「2度目標」ではすでに国際的な合意があります。新たなルールの下での温室効果ガスの排出削減目標はこれに見合うものでなければなりません。
各国の行動計画をいつまでに提出するかが行程表上の焦点の一つ。温暖化対策に熱心な欧州連合(EU)は各国の目標が妥当かどうか評価する期間が必要だとし、14年の提出期限を主張、米国は15年を提案しています。
締約国から提出されている20年(新ルール発効前)までの抑制・削減目標では、「2度目標」達成に必要な削減量に遠く及んでいない現状があります。
国連気候変動枠組み条約のフィゲレス事務局長は今月はじめ「2015年合意で、一夜で2度目標達成への道が開かれるとは思わない」と懸念を表明。COP19で新ルール作りのための論議とともに、20年までの削減目標を引き上げることで合意する必要があると強調しています。
(パリ=浅田信幸)

日本政府は逆行「3%増」目標
日本政府は、COP19に、温室効果ガス削減目標を2020年までに「2005年比3・8%減」とする方針で臨みます。
基準とする年を京都議定書の基準年(1990年)から2005年に動かしました。05年の排出量は90年に比べ7・1%増えています。そのため、今回の目標は「削減」といいつつ、90年比で見れば約3%増になります。日本政府の京都議定書の第1約束期間(08~12年)の目標はマイナス6%でした。その目標から見れば、実に9%も増やすことになります。(グラフ)
日本政府が、前民主党政権が約束した「90年比25%削減」を撤回し、増やす目標を表明することは、国際社会の削減努力に逆行するものです。
温暖化対策「放棄」
気候ネットワーク理事、平田仁子さんの話
日本政府の削減目標は、原発事故で、これまでの計画の前提が崩れたのは事実ですが、では、どのような温暖化対策が取れるのか、という検討もなしに、火力発電所の稼働が増えているから仕方ない、とした数字です。これは温暖化対策の後退というより「放棄」です。
また「原発が再稼働したら(目標を)引き上げる」との政府関係者の声も報道されています。福島の原発事故から何を学んだのでしょうか。日本の温暖化対策はずっと原発頼みで温室効果ガスはちっとも減らなかったのです。同じ過ちを繰り返そうとしています。省エネ強化と再生可能エネルギーの強化で温室効果ガスの大幅削減は可能です。
決め方自体にも大きな問題があります。麻生政権が目標を決めた09年も前民主党政権も、少なくとも根拠となる数字は公開されました。今回の数字は、どのような検討を経たのか、そのプロセスも非公開、不透明です。国民生活全体に影響がある問題にもかかわらず、あまりにも勝手な決め方です
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年11月10日付掲載
日本の温暖化対策は、クリーンなエネルギーだということで原発での発電を推進したり、排出権の売買などで進めてきました。実質的に温暖化ガスの排出量を減らす取り組みに消極的でした。
フクシマの原発事故をうけて原発稼働がゼロになるもとで、政府自ら立てた削減目標を悪い方に見直すって…。勝手なことは許されませんね。