●実は医師も悩んでいる(日本老年医学会理事長を中心とした研究班の調査)
人工的水分・栄養補給(AHN:Artificial hydration and nutrition)の導入に際し、
「認知症の終末期で食べられないと診断した患者に、
AHNを差し控えたら倫理的に問題なのではないか」と考える医師が51%。
「この状況の患者さんであれば、AHNを行うほうが倫理的に問題である」
という医師が33%だそうです。
また「経口栄養からAHNに移行する判断基準がわからない」という医師は45%。
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オーストラリアでは、以前は胃ろう造設があったが、
その経過がよくないというデータが集まり、さらに米国や英国の
データも併せて考えて、
<この段階では(胃ろうを)やらないほうがいい>という結論を出した。
しかし、日本の医師の中には、
「アルツハイマー病の末期でAHNを差し控えることは、
餓死させることと同じである」と捉えて、胃ろうか経鼻経管を
選択する人が39%だそうです。
(母数は991名で、4割は学会認定の老年病の専門医)
●「餓死」という医師の認識
医学・生理学の文献では、
終末期の患者で苦痛の少ない最期の実現のためには
「AHNは不要です」「かえって邪魔です」ということが書かれています。
「高齢者の最期の段階では、枯れるように亡くなっていくのが、
本人にとってもっとも苦痛の少ない、ある意味理想的な亡くなり方」である。
AHNを差し控えることで脳内麻薬(βエンドルフィン)やケトン体が
増えますから鎮痛鎮静作用がもたらされます。
米国の老年医学会はAHNに関して最期のケアを次のように提唱しているそうです。
*適切な口腔ケアは最期まで行ってください。
*人工的な栄養投与はほとんどの症例において患者のためにならない。
*死を間近にした患者は空腹や喉の渇きを覚えない。
終末期を点滴で管理するのでなく、本人の好きな味の<小さな氷のかけら>を
家族が含ませてあげる程度で充分なようです。
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以上、「教育医療」5月号より、気になった文章を私なりにかいつまみ、
ご紹介しました。そっくりそのまま写したわけではないので、
読者の皆様も、是非、「新老人の会」に入会されて、
このような役に立つ記事を、ご自分で読んでください。
欧米で提唱され、実績をあげている理論が、何故、日本で無視され続け、
不要な(と思われる)終末期医療に莫大な医療費が費やされ続けるのか?
将来の日本を担う人たちのために、少しでも早く、こういった事態が
改善されることを切に願います。